メキシコは中米か?北米か?アメリカ大陸の境界線はどこにあるのか?
アメリカ大陸に位置する国々が
北米と中米と南米のどの区分に位置づけられるのか?という問いについては、
カナダとアメリカが北米で、
ブラジルから南は南米というのは何となく分かるとしても、
メキシコあたりからその区分があやしくなってくるように思います。
そこで、今回は、
メキシコは中米と北米のどちらに区分されるのか?という問題について、
地理上の区分としては、どの地点を境界として北米と中米と南米が分けられるのか?
という観点から考えていくと共に、
中央アメリカ(中米)という政治的枠組みが生まれた歴史的経緯についても考えてみたいと思います。
地理上の区分としての北米と中米の境界線
北アメリカ大陸と南アメリカ大陸は、両側を太平洋と大西洋という広大な海域によって挟まれた細長い形状をした陸地である地峡部によってつながっていますが、
この二つの大陸をつないでいる地峡部が
地理上の区分としては中央アメリカ(中米)に位置づけられることになります。
上図で示したように、
南北アメリカをつなぐ地峡部分は、
メキシコ南部に位置するテワンテペック地峡と
パナマ中部に位置するパナマ地峡で陸地の幅が特に狭くなっています。
したがって、
上記の二つの地峡部分を境界線として、
地理上の区分としては、
テワンテペック地峡より北が北アメリカ、
パナマ地峡より南が南アメリカ、
その中間に位置する二つの地峡に挟まれた地域が
中央アメリカ(中米)として位置づけられることになります。
そして、国別の区分としては、
グアテマラ、ベリーズ、エルサルバドル、ホンジュラス、ニカラグア、コスタリカ、パナマの7か国が中央アメリカ(Central America、中米)に位置づけられ、
それより北の国々は、北アメリカ(North America、北米)に、
それより南の国々は、南アメリカ(South America、南米)に区分されることになるのです。
したがって、
この記事の冒頭で挙げたメキシコは中米と北米のどちらに区分されるのか?という問いについては、
メキシコの主要な国土は、北アメリカ大陸と南アメリカ大陸をつなぐ地峡部の北端であるテワンテペック地峡よりも北に位置することになるので、
メキシコは、北米と中米と南米という三つの地理上の区分の内では
北米(北アメリカ、North America)に区分されるというのがその問いへの答えとなります。
歴史的経緯から見た中央アメリカ(中米)の定義
また、以上のような地理上の区分に対して、
政治上の区分としての中央アメリカの歴史は、
1823年に結成された中央アメリカ連邦にまでさかのぼることができます。
中央アメリカ連邦(正式には中央アメリカ連邦共和国、Federal Republic of Central America)とは、
1823年にグアテマラ、エルサルバドル、ホンジュラス、ニカラグア、コスタリカの5か国によって結成され、その後1839年まで中央アメリカに存在した連邦国家です。
19世紀に入ると、ナポレオン戦争後の国際秩序の変動から、アメリカ大陸の各地でも自治の拡大を求める動きや独立運動の気運が高まっていきますが、
そのような中、
すでに、1776年に独立宣言を発表し、1783年にパリ条約によってイギリス本国からの独立を果たしていたアメリカ合衆国をモデルとする形で
中央アメリカ諸国によって建国された連邦国家が中央アメリカ連邦ということになります。
その後、
中央アメリカ諸国をまとめ上げ、アメリカ合衆国に匹敵するような大きな力と結束力を持った連合体を作り上げようとした中央アメリカ連邦の試み自体は、
連邦を構成する各国同士が自由主義派と保守派に分かれて対立していく中で紛争が激化し、各国が連邦から相次いで離脱していくことによって瓦解してしまうことになるのですが、
かつて一つの連邦国家を構成していた中央アメリカという政治的な枠組み自体はその後も継承されていくことになります。
そして、
1903年に、コスタリカに隣接するパナマが独立し、さらに、
1981年に、イギリス領ホンジュラスがベリーズとして独立すると、
これらの2か国も、かつて中央アメリカ連邦を構成していた5か国と合わせて
中央アメリカ諸国と呼ばれるようになり、
前述した、グアテマラ、ベリーズ、エルサルバドル、ホンジュラス、ニカラグア、コスタリカ、パナマという中央アメリカ(中米)を構成する7か国のメンバーがすべて揃うことになるのです。
・・・
厳密に言うと、
広義における中央アメリカ(中米)の区分としては、上記の7か国に加えて、
西インド諸島の国々も含まれることになり、
国連における区分では、アメリカやカナダを北アメリカ(North America、北米)ではなく、北方アメリカ(Northern America)と呼んだうえで、
メキシコは中央アメリカ(Central America)に入れられることもあるのですが、
以上のように、
地理上の区分と歴史的経緯に基づいた一般的な解釈としては、
中央アメリカ(中米)には、南北アメリカをつなぐ地峡部であり、
テワンテペック地峡とパナマ地峡の間に挟まれた地域に位置する
グアテマラ、ベリーズ、エルサルバドル、ホンジュラス、ニカラグア、コスタリカ、パナマの7か国が区分されることになり、
メキシコは、北米と中米と南米という地理上の区分においては、
中米ではなく、北米(北アメリカ、North America)に区分されることになるのです。
・・・
関連記事①:国連による中央アメリカの定義と、狭義と広義における中米の違いとは?
関連記事②:ラテンアメリカと中南米の違いとは?地理的区分と言語圏に基づく文化的区分と慣用表現
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