新型コロナウイルスの感染形態はノロウイルスに近いのか?感染爆発の形態の類似点とウイルスの種族自体の性質の類似点

前回までの記事で考察してきたように、2月の後半までの東京を中心とする現時点の日本における新型コロナウイルスの感染者数の推移を見る限り、

このウイルスは大人数が参加する宴会や会合あるいはイベント会場などの閉鎖的な空間、そして、そこにバイキング形式ビュッフェ形式といった不特定多数の人食卓や料理を共有するような飲食の場が加わることが決定的なトリガーとなって、

爆発的な感染すなわちパンデミック(正しい用語の使い方としてはアウトブレイクの方が適切)を発生させることになるという一つの仮説を立てることができる。

そして、こうした不特定多数の人が集う飲食の場といった特定の状況下においての爆発的な感染拡大を引き起こすという感染形態のあり方からは、

このウイルスが通常比較されることになるインフルエンザウイルスとは別のタイプウイルスの種類が連想されることになる。

それは、冬の時期における集団食中毒ウイルス性の胃腸炎の原因となることで有名なノロウイルスである。

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コロナウイルスとノロウイルスの共通点についての思索

ノロウイルスの感染は感染者の糞便や吐瀉物、あるいは、そうした汚染物から分離する塵埃などの微粒子を介して感染が広がっていくことになるが、

ここで重要なのは、そうして新たな感染者の体内に取り込まれることになったウイルスを含む微粒子は、人間の小腸の粘膜上皮細胞を中心とする部位において増殖していくことによって発熱や胃腸炎などの症状を引き起こすということにある。

以前に「ネココロナウイルスとイヌコロナウイルスの具体的な特徴と再感染のリスク」の記事などで詳しく考察したように、

一般的にあまり広くは知られてはいないものの、

こうしたコロナウイルスに分類されるウイルスののなかには、ネココロナウイルスイヌコロナウイルスあるいは豚流行性下痢ウイルスなどに代表されるように、

ノロウイルスの場合と同様に、小腸の粘膜上皮細胞において増殖して消化器系の症状を引き起こすタイプのウイルスの種類が数多く含まれている。

(ちなみに、ウイルス学の分類においては、

ノロウイルスコロナウイルスと同じく一本鎖RNA+鎖ウイルスに分類されるのに対して、インフルエンザウイルスは同じRNAウイルスとは言っても少し構造が異なる一本鎖RNA-鎖ウイルスに分類されることになるので、

そういった意味でも、ノロウイルスコロナウイルスはウイルス学における分子生物学的な構造の面において、互いにある程度近い関係にあるウイルスの種族として位置づけることもできると思う。)

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新型コロナウイルスとノロウイルスの感染爆発の形態の類似性

そして、こうした犬や猫や豚に感染するコロナウイルスは、糞口感染と呼ばれる経口感染や、塵埃感染と呼ばれる空気感染によって感染を広げていくことになるのだが、

同じ空気感染に分類されることになる感染形態であるとは言っても、麻疹や天然痘などのように咳と共に放出された単体のウイルス粒子から広がっていく爆発的な空気感染と、

ノロウイルスなどにおいて見られる患者の排泄物から分離した微粒子に由来する塵埃感染としての空気感染の場合とではその様相が大きく異なってくる。

(前者の場合は、満員電車などでの爆発的な空気感染が容易に広がる危険性があるが、後者の場合は、むしろ、患者と生活を共にする比較的小規模家庭内感染などのリスクが高まることになる)

ちなみに、

新型コロナウイルスSARSコロナウイルスの実際の感染例においては、

マンションや病院などにおけるトイレ排水システムを通じてウイルスを含んだエアロゾルが浮遊して拡散していくことによって感染が拡大していったことが疑われるケースが報告されているが、

そういった意味では、

今回の新型コロナウイルスにおいて疑われている感染形態の一つとして挙げられているいわゆるエアロゾル感染というものも、一義的には、

前述した麻疹や天然痘に見られるような呼吸器に由来するウイルス微粒子による爆発的な空気感染に近い感染形態というよりは、

ノロウイルスに見られるような消化器に由来するウイルス微粒子による塵埃感染に近い感染形態として生じていると解釈することができるかもしれない。

つまり、

今回の新型コロナウイルス感染者数の推移を示す統計データと、コロナウイルスというウイルスの種族自体の性質からは、

このウイルスは、インフルエンザウイルスに見られるような飛沫感染と同時に、ノロウイルスに見られるような食事を介した感染形態に注意を払うことが必要であると考えられるということであり(家庭内などにおいてはトイレの使用を介した糞口感染や塵埃感染なども)、

一言でまとめると、

今回の新型コロナウイルスの感染拡大は、

インフルエンザに対する予防措置と同時に、そこにノロウイルスに対する感染予防措置を組み入れることによってより確実で効率的な感染予防を行えるのではないか?

という一つの提言が、今回までの三回の記事にわたって述べてきた筆者の考察の本質ということになる。

・・・

次回記事:新型コロナウイルスはインフルエンザと比べてどのくらい致死率が高いのか?WHOと厚労省の統計データに基づく致死率の比較

前回記事:新型コロナウイルスは大人数が参加する飲食の場で感染拡大する傾向にあるのではないか?感染爆発のトリガーとなる三つの条件

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