新型コロナウイルスとSARSとMERSの危険性の比較、致死率と感染力という二つの観点に基づくウイルスの危険性の評価
人間に感染して呼吸器系を中心とする症状を引き起こすことが知られている全部で七種類のコロナウイルスのなかで、
肺炎や呼吸困難などのより重度の症状を引き起こす危険性のあるウイルスとしては、
SARSコロナウイルスとMERSコロナウイルス、そして、今回新たに発見されることになった2019-nCoVと呼ばれる新型コロナウイルスという三種類のベータコロナウイルスの種類が挙げられることになるのですが、
それでは、こうした三種類のベータコロナウイルスは、
致死率や感染力といった観点から互いに比較していった場合、それぞれ具体的にどれくらい危険性が高いウイルスとして位置づけられることになると考えられるのでしょうか?
致死率と感染力に基づく三つのベータコロナウイルスの特徴の違い
そうすると、まず、詳しくは前回の記事で考察したように、
こうしたベータコロナウイルスに分類される三種類のコロナウイルスによって引き起こされることになる三つのウイルス性の呼吸器疾患について致死率という観点から互いに比較した場合、
実際に感染が確認された症例の範囲内においては、
SARS(重症急性呼吸器症候群)の致死率は9.6%、MERS(中東呼吸器症候群)の致死率は35.4%と推計されているのに対して、
新型コロナウイルスによって引き起こされるCOVID-19と呼ばれる急性呼吸器疾患の致死率は現時点においては2~2.9%程度と推計されることになります。
そして、その一方で、
今度は、こうした三つのウイルス性の呼吸器疾患について感染力という観点から互いに比較していった場合、
SARSウイルスの感染については、発症者からの飛沫感染や接触感染によって感染が広がっていくとされる一方で、
MERSウイルスの感染については、発症者との濃厚接触によって感染することがあるとされているものの、その感染力自体は持続的なヒトヒト感染が確認されていないほどに弱いものであると考えられています。
そして、それに対して、
2019-nCoVと呼ばれる新型コロナウイルスの感染については、SARSと同様に、一般的には、飛沫感染や接触感染によって感染が広がっていくと考えられているものの、
こうした新型コロナウイルスの感染については、発病前の無症状ウイルス保有者との濃厚接触による感染や、飛沫感染と空気感染の間の中間的な感染形態としても位置づけられることがあるエアロゾル感染の可能性なども強く疑われているように、
その感染力は、SARSの場合と比べても、さらに強いものになっているとも考えられることになるのです。
新型コロナウイルスとSARSとMERSの危険性の比較
そして、以上のように、致死率と感染力という二つの観点から、
こうしたSARSコロナウイルス、MERSコロナウイルス、新型コロナウイルスという三つのベータコロナウイルスの危険性の高さについて評価していくとすると、
致死率については、より致死率の高い順に、
MERSコロナウイルス>SARSコロナウイルス>新型コロナウイルス
感染力については、より感染力の高い順に、
新型コロナウイルス>SARSコロナウイルス>MERSコロナウイルス
という順番で危険性の高いと評価することができると考えられることになるのです。
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