季節性インフルエンザの致死率はどのくらいなのか?WHOのデータに基づくインフルエンザの致死率の推計
高熱や関節痛といった全身症状に加えてのどの痛みや咳あるいは胃腸炎の症状などを示すことがあるほか、重症になると肺炎や小児におけるインフルエンザ脳症などを引き起こすこともあるウイルス性の呼吸器感染症であるインフルエンザには、
世界の各地で冬の時期を中心に毎年流行することになる季節性のインフルエンザのほかにも、致死率が50%以上におよぶこともある鳥インフルエンザや、
世界全体における感染症の爆発的な大流行のことを意味するパンデミックの原因となる新型インフルエンザといったタイプも挙げられることになりますが、
このうち、日本を含む世界各地で冬の時期に毎年流行している一般的なインフルエンザにあたる季節性インフルエンザの致死率はだいたいどのくらいであると推計されることになるのでしょうか?
WHOのデータに基づく季節性インフルエンザの死者数と感染者数
そうすると、まず、
WHO(世界保健機関)の2018年の報告によれば、こうした季節性インフルエンザの流行においては、
世界中で毎年、300万人から500万人にもおよぶ重症の患者が発生していると推計されていて、そのうち29万人から65万人の患者が死亡しているという推定が示されています。
(出典:World Health Organization/Home/Newsroom/Fact sheets/Detail/Influenza (Seasonal):https://www.who.int/news-room/fact-sheets/detail/influenza-(seasonal))
そして、その一方で、
WHOヨーロッパ地域事務局が2020年現在も提示している統計の概要によれば、
北半球を中心とする世界各地では、毎年、秋から冬にかけてのシーズンに、人口全体の5~15%の人々がインフルエンザに感染しているという推計も示されています。
(出典:World Health Organization Europe/Health topics/Communicable diseases Influenza/Data and statistics:http://www.euro.who.int/en/health-topics/communicable-diseases/influenza/data-and-statistics)
そして、
こうしたWHOの報告における二つの統計データに基づいて、それぞれのデータに示されている数値の中央値を計算に用いることにすると、少し大雑把な推計にはなりますが、
毎年、世界全体の人口の約10%の人が季節性インフルエンザに感染して、そのうちの約47万人の患者が死亡すると推定することができると考えられることになります。
ちなみに、
世界全体の人口は2019年の時点で77億人に達したとされているので、そうした2019年時点での人口データに基づくと、上記のデータは、
世界全体の人口である77億人の10%、すなわち、7億7000万人の季節性インフルエンザ感染者に対して47万人の死者が毎年発生していると解釈することができると考えられることになるのです。
世界全体における季節性インフルエンザの致死率の推計
それでは、次に、
実際に、以上のようなWHOの報告に基づく統計データに基づいて、世界全体における季節性インフルエンザの致死率を推計していくと、
47万人÷7億7000万人=0.00061038961038961
≒0.06%
となり、
世界全体における季節性インフルエンザの致死率はおよそ0.06%程度であると推計することができると考えられることになります。
そして、
一般的には、こうしたWHOにおいて示されているような大まかな統計データに基づいて、そこに今回取り上げたような様々な推計や想定が加えられていくなかで、
季節性インフルエンザの致死率はだいたい0.1%未満として取り扱われているケースが多いと考えられることになるのです。
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