インフルエンザの日本国内での致死率はどのくらいなのか?超過死亡数と厚生労働省の人口動態調査に基づく二つの推計
前回書いたように、季節性インフルエンザの世界全体における致死率は、WHOの統計データに基づくと0.1%未満、より詳しく計算していくと、だいたい0.06%程度であると推計することができると考えられることになります。
それでは、それに対して、
そうした日本を含む世界各地で冬の時期に毎年流行することになる一般的なインフルエンザのことを意味する季節性のインフルエンザの日本国内における致死率はどのくらいであると推計されることになるのでしょうか?
厚生労働省の人口動態調査に基づく日本のインフルエンザ死者数の実数
そうすると、まず、
日本国内における季節性インフルエンザの感染者数と死亡者数の実数について調べてみると、例えば、厚生労働省の報告によれば、
例年のインフルエンザの感染者数は、国内で約1000万人にのぼるという推計が示されています。
(出典:厚生労働省:新型インフルエンザに関するQ&A:https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou04/02.html)
そして、それに対して、
近年の季節性のインフルエンザによる日本国内における死亡者数の実数値について調べていくと、2012年から2017年までの厚生労働省の人口動態調査によれば、
鳥インフルエンザや新型インフルエンザなどを除く通常のインフルエンザ、すなわち、季節性インフルエンザによる日本国内における死亡者数の実数については、
2012年は1275人
2013年は1514人
2014年は1130人
2015年は2262人
2016年は1463人
2017年は2569人
という統計データが示されています。
(出典:厚生労働省:新型インフルエンザに関するQ&A:
https://www.e-stat.go.jp/stat-search/database?page=1&query=感染症分類別にみた年次別死亡数及び率&layout=dataset&metadata=1&data=1)
そして、
こうした厚生労働省の統計データに基づくと、
日本国内における2012年から2017年までの季節性インフルエンザによる死亡者数の実数値は、一年で平均1702人となり、
実際に報告がなされている感染者数と死亡者の統計の範囲内においては、
日本国内における季節性インフルエンザの致死率は、
1702人÷1000万人=0.0001702
≒0.02%
と推定することができると考えられることになるのです。
超過死亡数に基づく日本国内での季節性インフルエンザの致死率の推計
そして、その一方で、
インフルエンザの致死率の推定のあり方には、こうしたインフルエンザを直接の死因とする死者の実数値に基づく推定のあり方のほかに、
インフルエンザの流行によって生じたと考えられる余分な死者数すなわち超過的な死者数のことを意味する超過死亡と呼ばれる概念に基づいて推定が行われることもあります。
そして、
こうした超過死亡と呼ばれる広義の意味における死亡者数の推計においては、
例えば、
実際にはインフルエンザの診断を受けないまま見過ごされていると考えられる死亡例や、インフルエンザ感染後における細菌性の肺炎などの二次感染による死亡例、さらには、インフルエンザ感染後の持病の悪化による死亡例などといった
その年にもしもインフルエンザの流行がまったく無かったとするならば死ななかったかもしれないと考えられる何らかの形でインフルエンザとの関連があったともみなすことができるすべての死者数を想定して推計が行われることになります。
そして、
こうしたインフルエンザの死者数を言わば合理的に妥当な範囲内で最大限に拡大解釈したより広義の意味における死亡者数にあたる超過死亡に基づく推計については、様々な仮定や解釈のあり方に基づいて多様な推計が示されているのですが、
例えば、
高齢者への予防接種法によるインフルエンザのワクチン接種が開始されることになった2002年以降の超過死亡率については、1000人あたり0.06人とする推計などが示されています。
(出典:日経メディカル:
https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/special/pandemic/topics/201012/517828.html)
そして、
2020年現在の日本の総人口にあたる1億2600万人を基準とすると、1000人あたり0.06人という超過死亡率からは、
一年における日本国内における季節性インフルエンザによる超過死亡数は、1億2600万人×0.06 / 1000=7560人という推計が導き出されることになり、
こうした超過死亡と呼ばれる広義の意味における死亡者数の推計の考え方に基づくと、近年の日本国内における季節性インフルエンザの超過死亡数に基づく致死率は、
7560人÷1000万人=0.000756
≒0.08%
と推定することができると考えられることになります。
・・・
そして、以上のように、
こうした日本国内における季節性インフルエンザによる死亡者数の実数値と超過死亡数に基づく二通りの推計のあり方を考え合わせると、
大雑把に言えば、
そうした二通りの推計のあり方において示された0.02%と0.08%という二つの値の中間をとって、
日本国内における季節性インフルエンザの致死率は0.05%くらいと把握しておくのが実践的な意味においては妥当な推計となると考えられることになるのです。
・・・
次回記事:
前回記事:季節性インフルエンザの致死率はどのくらいなのか?WHOのデータに基づくインフルエンザの致死率の推計
「時事考察」のカテゴリーへ
「医学」のカテゴリーへ
「インフルエンザウイルス」のカテゴリーへ