怪力を持つ英雄に成長したテーセウスが選ぶ海と陸の二つの道とアテナイへの一人旅、ギリシア神話の英雄テーセウスの物語③
前回書いたように、テーセウスの父親であったアテナイの王アイゲウスは、クレタ島を治めるミノス王との間で争いとなったのち、
和平を結ぶための講和条件として、クレタの迷宮に閉じ込められている牛頭人身の怪物であったミノタウロスへの生贄として、毎年、七人の少年と七人の少女を船に乗せてクレタ島へと送ることを強要されることになります。
怪力を持つ英雄へと成長していく若き日のテーセウス
そして、このようにして、
アテナイの本国においてクレタのミノス王との間の争いと不和が続いていくなか、
テーセウスは、アテナイからは離れたペロポネソス半島の北東部に位置する海辺の町であったトロイゼーンにおいて、彼の母親であったアイトラーと二人で幼少時代を過ごしていくことになるのですが、
その後、
海の神ポセイドンの血を引く英雄であったテーセウスは、ゼウスの血を引く英雄であったヘラクレスをも彷彿とさせるような怪力を持つ英雄へと成長していくことになります。
そして、
こうしてたくましい青年へと成長したテーセウスは、かつて、彼の父であったアイゲウスが自らの息子のために、大岩の下に自分の持ち物を埋めていた土地へと赴いていき、
この地で、自らが持つ怪力によってこの大岩を押しのけて封印を解くと、その大岩の下に埋めてあったアイゲウス王の剣とサンダルを手にすることになるのです。
英雄テーセウスに示される海と陸の二つの道とアテナイへの一人旅
そして、その後、
テーセウスには、彼の父であったアイゲウス王が治めるアテナイの地へと向かうための道筋として、
商人たちの交易路としてある程度の身の保証されている安全な海路を通っていく道と、旅人を襲おうと待ち構える盗賊や怪物たちがひしめく危険な陸路を通っていく道という二つの道が示されることになるのですが、
人並外れた怪力と勇敢な心を持つ彼は、道中で自分に襲いかかって来ることになる悪人たちを倒して腕試しをするためにも、後者の危険な陸路の道を自ら進んで選び取ることになり、
こうしてテーセウスは、自らが持つ力だけを頼りに、彼の父がいる遠いアテナイの地へと向けて歩いていく徒歩の一人旅へと赴いていくことになります。
そして、
こうしたギリシア神話最大の英雄であるヘラクレスをも彷彿とさせる神のごとき怪力を持つと同時に、あらゆる物事に対して正しい判断と公正な裁きを下していくことができる賢明さをも兼ね備えた高潔の士でもあったテーセウスは、
アテナイの地へと赴いていく徒歩の旅の途中で、街道において出会っていくことになる悪人たちが働く不正や悪事を見過ごすことはできずに、
彼らが行っていた悪事とちょうど同じ方法を使って仕返しをして、これまでにこの悪人たちの手によって殺されてきた善良なる旅人たちの復讐を果たすことによって、こうした悪人たちを次々に成敗していくことになります。
そして、
こうした若き日のテーセウスが、彼の父がいるアテナイの地へと赴いていく徒歩の一人旅のなかで成し遂げていくことになった偉業の数々は、
詳しくは、また次回改めて書いていくように、彼が旅の途上において成敗していくことになった悪事の数に基づいて、テーセウスの六つの功業とも呼ばれていくことになるのです。
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次回記事:テーセウスの六つの功業とは何か?プロクルーステースの寝台とアテナイへの旅の軌跡、ギリシア神話の英雄テーセウスの物語④
前回記事:クレタの迷宮のミノタウロスに捧げられたアテナイからの生贄とテーセウスの幼年時代、ギリシア神話の英雄テーセウスの物語②
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