ヘラクレスの第二の功業とレルネーのヒュドラとの九つの頭と一つの不死の頭をめぐる戦い、ヘラクレスの十二の功業②
前回書いたようにデルポイのアポロン神殿で授けられた神託の言葉による神々の導きに従って、ミケーネの王であったエウリュステウスのもとに仕えることになったヘラクレスは、
王の命令に従ってネメアの獅子退治の旅へと赴き、三日三晩にわたる死闘の末に猛獣の首を力いっぱい締め上げて窒息させることによって第一の功業を成し遂げることになります。
第二の功業であるレルネーのヒュドラ退治へと向かう英雄ヘラクレス
そして、その次に、
ミケーネの王であったエウリュステウスは、ヘラクレスに対して与える第二の難行として、レルネーのヒュドラを殺すことを命じることになります。
ヘラクレスが第一の難行を務めることになったネメアの谷から見て南方に位置する湿地帯にはレルネーと呼ばれる泉があり、
レルネーの泉には、ヒュドラと呼ばれる巨大な水蛇のことを意味する怪物が住んでいて、ときおり平原へと出てきては近くの村の田畑や牧草地を荒らしまわっていたので、
王の要請を受けたヘラクレスは、そうした近隣の村の人々をヒュドラによる被害から守るために、彼の甥にあたるイオラオスが御者を務める馬にひかせて走る戦車に乗って、レルネーの泉に住む怪物であるヒュドラ退治へと赴いていくことになるのです。
レルネーのヒュドラの九つの頭と一つの不死の頭をめぐる戦い
レルネーへとたどり着いたヘラクレスは、泉のほとりで戦車を降りると、すぐにその近くに潜んでいたヒュドラを見つけ出し、泉の周りに火矢を射かけていくことにします。
すると、
熱に弱い水蛇は、炎の熱から逃れようとして、火矢が刺さっていない場所から泉の外へと逃れ出そうとすることになり、その場所で待ち構えていたヘラクレスによってすぐに捕らえられてしまうことになります。
しかし、
ヒュドラは、巨大な胴体に九つの頭が生えた姿をしていて、中央にある一つの頭は不死であるうえに、中央の頭が持つ不死の力によって全身が生かされているうちは、残りの八つの頭も切り落とした先から次々に再生して生えてきてしまうことになっていたため、
いったんはヒュドラの動きを封じることに成功したヘラクレスも、こん棒でたたき落した先からすぐに再生してくるヒュドラの頭とのいたちごっこに悪戦苦闘していくことになります。
そして、
ヘラクレスが苦戦を強いられている様子を目にした戦車の御者であったイオラオスは、近くの森の木々に火を放つと、すぐに彼のもとへと駆けつけ、
燃え上がる大木の枝をヘラクレスがたたき落としたヒュドラの頭が生えていた首の付け根に押し当てて焼きはらうことによって新しい頭が再び生えてくるのを妨げていくことになります。
そして、ついに、
中央に位置する一つの不死の頭を残して、その他の八つの頭をたたき落とすことに成功したヘラクレスは、最後に残ったヒュドラの不死の頭を胴体から切り離すと、
それを大きな岩の下に埋めて封印してしまうことによってこの怪物を退治することに成功することになるのです。
しかし、
狡猾で卑劣な王であったエウリュステウスは、ヘラクレスからヒュドラ退治の話の詳細を聞くと、彼が自分の甥であるイオラオスの助けを借りてこの難行を成し遂げたということを聞きとがめて、
この仕事は、ヘラクレスただ一人ではなく、イオラオスと共に二人で行った仕事なのだから、ヘラクレスの名前だけが冠された功績のうちに数え上げるのは不当であると難癖をつけることによって、
この仕事における成果を彼が務めることになっていた十の難行のうちからは外してしまいただ働きとしたうえで、その次に新たに三つ目の仕事を行うようヘラクレスに命じることになるのです。
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次回記事:ヘラクレスの第三の功業とケリュネイアの鹿の生け捕りの際にかわされた女神アルテミスとの問答、ヘラクレスの十二の功業③
前回記事:ヘラクレスの第一の功業とネメアの獅子との三日三晩にわたる死闘、ヘラクレスの十二の功業①
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