天球とは何か?太陽や月や星などのすべての天体が見かけ上配置される仮想的な球面としての天球の定義とプラネタリウムの関係
地球から空を眺めて天体観測を行っていると、太陽が東から昇って南の空を通ってから西へと沈んでいくのと同様に、夜空に輝く星々もまた、みな同じように東の空から姿を現して西の空へと沈んでいく様子が観測されていくことになります。
そして、
こうした太陽や月や星々といった様々な天体が地球からの観測において夜空に配置されて回転していくように見える仮想的な球面のことを指して天球(てんきゅう)という言葉が用いられることになるのですが、
それでは、
こうした天球と呼ばれる概念は、天文学におけるより厳密な定義においては、具体的にどのような特徴を持つ球面として定義されることになると考えられることになるのでしょうか?
天球における天頂と地平線の定義と太陽や月や星々などの天体の回転方向
そうすると、まず、上記の図において示したように、
地球から空を眺めて天体観測を行う場合、こうした天球と呼ばれる太陽や月や星々といった様々な天体が見かけ上配置されていくことになる仮想的な球面は、
観測者の真上に位置する空の部分にあたる天頂を頂点として、観測していた天体がやがて沈んでいって見えなくなる地点にあたる地平線の位置まで広がる半球状の領域として観測されることになると考えられることなります。
そして、
こうした天球と呼ばれる地球からの天体観測において見かけ上現れることになる球面の領域は、地球の自転運動に対応して、東から西へと一日で一回転していくように観測されていくことになり、
太陽や月、さらには、夜空に輝く大小さまざまな星々といったすべての天体の運動のあり方は、一日単位という日周運動においては、
そうした天球と呼ばれる巨大な球体の表面に配置された天体たちが天球ごとグルグルと回転していくような形で観測されていくことになると考えられることになるのです。
地球から観測される天体の方向と見かけ上の明るさのみを基準として天体が配置されたプラネタリウムのような仮想的な球面としての天球の定義
もっとも、実際には、
こうした地球上からの観測において、天球と呼ばれる同一の球面上に配置されているように見えている星々は、現実の宇宙空間における地球との距離はバラバラであり、
地球上からの観測においては暗く小さく見えている星も、地球上の観測において明るく見えているその他の星よりも非常に遠くに存在するだけで、実際にはその他の明るく見える星よりもはるかに巨大な星であるといったこともあるわけですが、
その一方で、
地球から見た方向といった観点からは、こうした天球と呼ばれる仮想的な球面において同一の領域に位置づけられている星々は、実際の天体同士の位置関係においてもすべて同じ方向に位置している天体の集団であるということは確かであると考えられることになります。
つまり、
こうした天球と呼ばれる仮想的な球面においては、実際の天体の大きさには関係なく、地球から観測されることになる天体の方向と地球から見たときの天体の明るさのみを基準として、太陽や月や星々といったすべての天体の配置がなされていくことになると考えられ、
そういった意味では、こうした天球と呼ばれ概念は、
三次元の宇宙空間の内に配置された大小さまざま星々が、地球から観測したときの見かけ上の位置と明るさのみを基準として二次元の球面上に投射された、
言わば、プラネタリウムのような仮想的な球面のことを意味する概念として定義することができると考えられることになるのです。
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次回記事:太陽が東から昇り西へと沈むのはなぜか?地球の自転方向と太陽を含むすべての天体の見かけ上の回転方向との関係
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