八重桜に雌しべと雄しべはあるのか?挿し木や接ぎ木を用いたクローン植物としての八重桜の繁殖と花弁化の頻度の差異
前回の記事で書いたように、八重桜とは、
桜の花のなかの雄しべや雌しべになるはずの部位が花びらへと変化していくことによって、花びらが幾重にも折り重なっていくように形成されていくという
サトザクラやカスミザクラなどの一部の桜の品種において見られる奇形の花の咲き方を意味する言葉として定義されることになると考えられることになります。
そこで、今回の記事では、
こうした雄しべや雌しべになるはずの部位が花びらへと置き換わっていくことになる八重桜と呼ばれる桜の花の咲き方においては、一般的に、桜の花の中の雌しべと雄しべは具体的にどのような状態となっていると考えられ、
仮に、すべての花の中に雌しべと雄しべも一本も存在しない状態にあるとした場合には、こうした八重桜と呼ばれる花の咲き方をすることになる桜の品種は、いったいどのような方法によって自らの子孫をふやしていくことができると考えられるのか?といったことについて詳しく考察していきたいと思います。
八重桜の雌しべと雄しべにおける花弁化の頻度の差異
そうすると、まず、
こうした八重桜と呼ばれる雄しべや雌しべになるはずの部位が花びらへと置き換わっていくことになる桜の花の特殊な咲き方においても、必ずしもすべての雄しべと雌しべが花びらへと変化していくわけではなく、
通常の場合には、そうした雄しべと雌しべが花びらへと変化していってしまうことになる割合には、雄しべと雌しべの両者の間において一定の差異が見られることになると考えられ、
具体的には、
雌しべよりも雄しべの方が優先的に花びらへと置き換わっていくという傾向が強いと考えられることになります。
したがって、
八重桜に分類される花の咲き方をする桜の品種のなかでも、雄しべはすべて花弁化してしまっていても、雌しべの一部はそのままの状態で残っていることによって、受粉して種子を結実することはできる場合はあると考えられ、
さらに、花弁化してしまった雄しべのなかにも、花びらへと変化した部分の先端に雄しべだった頃の名残として、花粉を生産する器官である葯が形成されて、薄っすらと黄みを帯びているようなケースもあるため、
そうしたケースにおいては、
八重桜を形成する桜の花の中に残されている雌しべに、同種または近縁種の桜の花粉を受粉させることによって、新たな個体を生み出していくもととなる種子を結実することもある程度は可能であると考えられることになるのです。
挿し木や接ぎ木を用いたクローン植物としての八重桜の繁殖
そして、その一方で、
こうした八重桜における雄しべと雌しべの花弁化がさらに進展して、ほとんどすべての雄しべと雌しべが花びらへと置き換わってしまっていて、生殖能力を保持した雌しべが一切存在しないようなケースでは、
そうした八重桜は、植物が種子を結実することができない状態にあることを意味する不稔性(ふねんせい)と呼ばれる状態にあると捉えられることになると考えられることになります。
しかし、そもそも、
日本国内において桜の個体をふやしていく際には、日本の桜を代表する品種にあたるソメイヨシノ(染井吉野)などのように、
植物の枝や葉を切り取りそのまま土中に挿して根づかせることによって新たな植物の個体を生育させていく挿し木(さしき)や、
切り取られた植物の枝や芽を台木となる近縁の植物に接合して癒着させていくことによって新たな植物の個体を生育させていく接ぎ木(つぎき)と呼ばれる方法を用いることによって、
言わば、同じ植物の個体のクローンを量産していくような形で繁殖が行われていくケースが多いと考えられることになります。
つまり、そういった意味では、
そうした不稔性の状態にある八重桜においても、
こうした日本の桜を代表する品種にあたるソメイヨシノの個体をふやしていくためなどに広く用いられてきた挿し木や接ぎ木といった無性的な栄養生殖の手段を用いることによって、
もととなる個体とまったく同じ遺伝子を持ったクローンをつくっていくような形で八重桜を形成する桜の品種の繁殖と栽培を行っていくことができると考えられることになるのです。
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次回記事:しだれ桜の具体的な特徴と分類される代表的な桜の種類とは?糸桜という別名の由来とエドヒガンの変種として位置づけ
前回記事:八重桜と一重桜の違いとは?八重桜に分類される代表的な桜の品種と奇形の花の咲き方としての八重桜の位置づけ
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