寄生植物とは何か?ラフレシアなどの葉緑素がなく光合成をしない全寄生植物とヤドリギなどの半寄生植物の具体的な特徴の違い
独立栄養生物と従属栄養生物と呼ばれる生物学における有機物の合成やエネルギーの生産といった観点に基づく生物の分類のあり方においては、ほとんどすべての植物は前者の独立栄養生物に分類されることになるのですが、
その一方で、
植物に分類されているにも関わらず、光合成を行うことによって自前で有機物を合成していくことができる独立栄養生物には分類されずに、
動物や菌類などと同じ従属栄養生物に分類される植物の種類が含まれることになる特殊な植物の種族としては、
他の植物に寄生して栄養分を吸収することによって生命活動を営んでいる寄生植物と呼ばれる植物の種族の存在が挙げられることになります。
半寄生植物に分類される代表的な植物の種類と具体的な特徴
まず、
こうした寄生植物と呼ばれる植物の種族は、寄生対象すなわち宿主となる植物への栄養の依存度の違いに応じて、半寄生植物と全寄生植物と呼ばれる二つのグループへと区分されていくことになると考えられることになります。
そして、このうち、
前者の半寄生植物に分類される代表的な植物の種類としては、
ケヤキやエノキやサクラなどの落葉樹の枝の表面に寄生して枝分かれしていくことによって球形の塊状の株を形成していくヤドリギ(宿り木)や、
はじめは独立して生育していくものの、成長していくにしたがって稲やアオイさらには竹やヤシの木などといった様々な植物に寄生していくことになる香木としても利用されることで有名なビャクダン(白檀)といった植物の種類の名が挙げられることになります。
そして、
こうしたヤドリギに代表されるような半寄生植物に分類される生物は、宿主となる植物体の内部へと根を下ろしたうえで、養分を吸い上げていくことによって成長していくと同時に、自らの体内に光合成を行うために必要な葉緑素も備えていて、
そうした寄生生活の際に、自分自身の生存のために必要な最低限の有機物とエネルギーについては、自らの植物体の葉の表面にある葉緑素を利用して光合成を行うことによって自前で合成していくことができると考えられることになるのです。
全寄生植物に分類される代表的な植物の種類と具体的な特徴
そして、それに対して、
後者の全寄生植物に分類される代表的な植物の種類としては、
直径90cmを超えるような世界最大の花を咲かせることで有名であるものの、花粉は蝶ではなくハエによって媒介され、腐肉のような悪臭を放つ主に熱帯雨林などにおいて生息する植物であるラフレシアや、
海岸や河原の砂地などにおいて、主にカワラヨモギと呼ばれるキク科の多年草の植物に寄生して、太い茎に黄褐色のうろこ状の葉をつけることを特徴とするハマウツボといった植物の種類の名が挙げられることになります。
そして、
こうしたラフレシアに代表されるような全寄生植物に分類される生物は、自らの体内に光合成を行うために必要な色素である葉緑素が一切存在せず、
植物体の成長と自らの生命の維持のために必要な栄養素のすべてを宿主となる植物に依存して生活していくことになるため、
自らの生存に必要な栄養素の全てを寄生対象となる植物から吸収していく生活形態を営んでいるという意味で、こうした全寄生植物という呼び名が与えられていると考えられることになります。
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以上のように、
こうした半寄生植物と全寄生植物と呼ばれる二つの植物のグループにおける具体的な特徴の違いについて一言でまとめると、
半寄生植物とは、宿主となる他の植物から自らの成長に必要な養分を吸収すると同時に、自らの体内に存在する葉緑素を利用して光合成も行うことによって生存に必要な最低限の有機物を自前で合成することができる植物のことを意味するのに対して、
全寄生植物とは、そうした光合成を行うために必要な葉緑素を一切持たずに、自らの生存に必要な栄養素と有機物のすべてを宿主となる植物に依存している植物のことを意味する言葉として定義することができると考えられることになります。
したがって、より正確には、
こうした寄生植物と呼ばれる他の植物に寄生する形で生命活動を営んでいる植物の種族のなかでも、自分自身で光合成を行うこともできるヤドリギに代表されるような半寄生植物ではなく、
ラフレシアに代表されるような全寄生植物のみが植物であるにも関わらず動物や菌類などと同じ従属栄養生物に分類されることになる特殊な植物の種族として位置づけられることになると考えられることになるのです。
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次回記事:ラフレシアが世界最大の巨大な花を咲かせる理由とは?ラフレシアの花が悪臭を放つ原因と世界一残念な花が誕生するまでの経緯
前回記事:食虫植物は昆虫を食べるのに独立栄養生物に分類される理由とは?昆虫などの小動物の捕食と光合成との関係
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