食虫植物は昆虫を食べるのに独立栄養生物に分類される理由とは?昆虫などの小動物の捕食と光合成との関係
前回の記事で書いたように、生物学における有機物の合成やエネルギーの生産といった観点に基づく生物の分類のあり方においては、生物のグループは、
独立栄養生物と従属栄養生物と呼ばれる二つのグループへと区分されていくことになり、
このうち、
前者の独立栄養生物には光合成や化学合成を行うことによって他の生物を食べないでも自前で有機物を合成していくことができる生物の種類が分類されていくことになるのに対して、
後者の従属栄養生物には自らの力では有機物を合成することができないため、他の生物を食べることを通じて有機物を体内に取り入れることによって生命活動を営んでいる生物の種類が分類されていくことになります。
しかし、その一方で、
様々な生物の種類の中には、他の生物を食べることによって生命活動を営んでいながら、従属栄養生物ではなく独立栄養生物に分類されることになる
食虫植物に代表されるような特殊な生物の種類も存在すると考えられることになります。
食虫植物における昆虫などの小動物の捕食と光合成との関係
まず、こうした
食虫植物と呼ばれる植物は、その名の通り、昆虫などの小動物を捕らえて消化して養分とすることによって生活を営んでいる植物の種族として位置づけられることになり、
こうした食虫植物と呼ばれる植物の種族に分類されることになる代表的な植物の種類としては、
葉の表面に密生する触毛から分泌する粘液によって昆虫を捕らえるモウセンゴケや、葉の上端に付いた円筒形の袋の中に落ちた虫を袋の底から分泌される消化液で溶かして養分とするウツボカズラといった植物の種類の名が挙げられることになります。
そして、
こうした食虫植物に分類される植物たちは、確かに昆虫などの動物を捕食することによって養分を得ているとは言えるのですが、
動物の場合とは異なり、食虫植物が他の生物を捕食することによって得ている養分は、獲物の身体を構成している有機物自体ではなく、その体内に含まれている窒素やリンなどといった植物の成長のために必要な無機物の養分であって、
こうした食虫植物と呼ばれる植物も、ほかの一般的な植物の場合と同じように、自らの体を構成している有機物や糖などのエネルギー源自体は、そうした小動物の捕食によってではなく、光エネルギーを利用した光合成によって自前で合成していると考えられることになります。
そして、その証拠に、
こうした食虫植物に分類される植物たちは、罠にかかる昆虫などの動物が少ない場合には、植物体の成長や繁殖において遅れなどが見られるようにはなっていくものの、
たとえ長い間、昆虫などの小動物を捕食することができなくてもすぐに枯れてしまうことはなく、太陽の光と水さえ与えられていれば光合成を行うことによって生存し続けていくことができると考えられることになるのです。
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以上のように、
食虫植物と呼ばれる植物は、昆虫などの小動物を捕食することによって窒素やリンなどといった植物体の成長に必要な無機物の養分は得ているものの、
自らの体を構成する有機物や糖などのエネルギー源自体は、光合成を行うことによって他の生物に依存せずに自前で生産していると考えられることになるため、
自らの力では有機物を合成することができずに他の生物がつくった有機物を体内に取り入れることによって生命活動を営んでいる従属栄養生物ではなく、
光合成を行うことなどによって他の生物の存在に依存せずに自らの体を構成している有機物を無機物から合成することができる生物のことを意味する独立栄養生物に分類される生物として位置づけられることになると考えられることになります。
そして、そういった意味では、
こうした食虫植物と呼ばれるような植物でありながら動物を食べることによって生命活動を営んでいる植物ですら独立栄養生物に分類されることになるように、
動物を捕食する食虫植物を含むほとんどすべての植物は独立栄養生物に分類されることになると考えられることになるのです。
しかし、その一方で、
本当にすべての植物が独立栄養生物に分類されることになるのか?というと、必ずしもそういうわけではなく、
多様な植物の種類のなかには、次回の記事で取り上げることになる寄生植物や腐生植物などのように、
植物の一種として分類されることになる生物でありながら、光合成を行わずに、他の生物がつくった有機物を体内に取り入れることによって生命活動を営んでいる従属栄養生物として分類されることになる特殊な植物の種類も極めて少数ではあるものの存在すると考えられることになります。
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次回記事:寄生植物とは何か?ラフレシアなどの葉緑素がなく光合成をしない全寄生植物とヤドリギなどの半寄生植物の具体的な特徴の違い
前回記事:独立栄養生物と従属栄養生物の違いとは?それぞれに分類される代表的な生物の種類と光合成と化学合成に基づく四つの区分
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