グラム陽性菌の具体的な特徴と分類されることになる代表的な細菌の種類
前回の記事で書いたように、細菌学の分野における細菌の分類のあり方においては、一般的に、細菌の種類は、
グラム染色と呼ばれる細胞染色法において、紫色に染色されることになるグラム陽性菌と、脱色されたのちに主に赤色に染色されることになるグラム陰性菌と呼ばれる二つのグループへと大きく分けられることになります。
そこで、今回の記事では、
こうしたグラム陽性菌とグラム陰性菌と呼ばれる二つの細菌のグループのうちの前者にあたるグラム陽性菌と呼ばれる細菌のグループの具体的な特徴について改めて整理して記述していったうえで、
そうしたグラム陽性菌と呼ばれる細菌のグループに分類されることになる代表的な細菌の種類について詳しく考察していきたいと思います。
グラム陽性菌と呼ばれる細菌のグループの具体的な特徴のまとめ
こうしたグラム陽性菌と呼ばれる細菌のグループの具体的な特徴についてまとめると、以下で述べるような三つの具体的な特徴を挙げていくことができると考えられることになります。
①グラム染色の過程において、細胞体がいったん紫色に染色されると、その後のアルコールによる脱色作用を受けずに、細胞が紫色に染色されたままの状態でとどまり続ける。
②細胞の外殻がペプチドグリカンと呼ばれる高分子化合物を主成分とする頑丈で分厚い細胞壁によって覆われている。
③グラム陽性菌に分類される細菌のなかには、頑丈な外殻構造をさらに発達させて芽胞と呼ばれる耐久性の高い構造体を形成することによって、高温や低温、強酸性の薬剤や高線量の放射線などといった過酷な環境においても生存し続ける細菌の種類も存在する。
つまり、一言でまとめると、
こうしたグラム陽性菌と呼ばれる細菌のグループは、
①グラム染色で紫色に染色される、②頑丈で分厚い細胞壁を持つ、③芽胞と呼ばれる耐久性の高い構造体を形成する細菌の種類が含まれる、といった特徴を持つ細菌のグループとして位置づけられることになると考えられることになるのです。
グラム陽性菌に分類される代表的な細菌の種類の区分
そして、次に、
こうしたグラム陽性菌に分類される細菌のなかでも、
人間に対して細菌感染症を引き起こす病原菌や、皮膚や腸内において生息する常在菌として位置づけられることになる代表的な細菌の種類としては、例えば、
上記の図において示したような全部で22種類におよぶ代表的なグラム陽性菌の種類の名を挙げていくことができると考えられることになるのですが、
こうしたグラム陽性菌に分類されることになる様々な細菌の種類は、
それぞれの細菌が酸素が存在する環境と酸素が存在しない環境のどちらを好んで増殖していくことになるのかという好気性菌と嫌気性菌といった区分、
さらには、
以前に「球菌・桿菌・らせん菌に分類される代表的な細菌の種類」の記事などにおいて詳しく考察してきた球菌・桿菌・らせん菌といった細菌の形態的な特徴の違いに基づく区分のあり方に基づいて、
以下で述べるようなグラム陽性嫌気性球菌とグラム陽性嫌気性桿菌、そして、グラム陽性好気性桿菌という全部で三つの細菌のグループへと細分化していくことができると考えられることになるのです。
グラム陽性嫌気性細菌に分類される代表的な細菌の種類
そして、このうち、はじめに挙げた
グラム陽性嫌気性球菌、すなわち、グラム陽性で酸素が存在しない環境を好む球形の形状をした細菌のグループに分類される代表的な細菌の種類としては、
ブドウ球菌に分類されることになる黄色ブドウ球菌、表皮ブドウ球菌、腐性ブドウ球菌、連鎖球菌に分類されることになる肺炎球菌や化膿レンサ球菌、
その他にも、虫歯の原因となるミュータンス菌や、乳酸球菌、腸球菌といった細菌の種類の名が挙げられることになるのに対して、
その次に挙げた
グラム陽性嫌気性桿菌、すなわち、グラム陽性で酸素が存在しない環境を好む棒状の形状をした細菌のグループに分類される代表的な細菌の種類としては、
クロストリジウム属に分類されることになるボツリヌス菌やウェルシュ菌や破傷風菌、その他にも、リステリア菌や、乳酸桿菌やビフィズス菌、ニキビの原因菌となるアクネ菌といった細菌の種類の名が挙げられることになります。
グラム陽性好気性細菌に分類される代表的な細菌の種類
そして、それに対して、最後に挙げた
グラム陽性好気性桿菌、すなわち、グラム陽性で酸素が存在する環境を好む棒状の形状をした細菌のグループに分類される代表的な細菌の種類としては、
マイコバクテリウム属に分類されることになる結核菌やらい菌、食中毒の原因菌となるセレウス菌や、その他にも、ジフテリア菌、炭疽菌、枯草菌、納豆菌といった細菌の種類の名が挙げられることになると考えられることになるのです。
・・・
次回記事:グラム陰性菌という名称の具体的な由来とは?色素が定着せずにアルコールの溶解作用によってすぐ脱色されてしまう理由
前回記事:グラム陽性菌という名称の由来と、細菌の細胞が紫色に染色したまま残る理由とは?
「生物学」のカテゴリーへ