クラミジアという細菌の名称の由来と一般的な細菌やウイルスとの大きさの比較、古代ローマの兵士と細胞の「青色のマント」
前回までの一連の記事のなかでは、球菌や桿菌やらせん菌といった一般的な細菌のグループに分類されることがない特殊な構造をした細菌の種族のなかでも、リケッチアやマイコプラズマと呼ばれる微小な細菌の種族について順番に詳しく考察してきましたが、
そうした一般的な細菌のグループに分類されることがない特殊な細菌の種族としては、こうしたリケッチアとマイコプラズマという細菌の種族のほかにも、さらにもう一つクラミジアと呼ばれる細菌の種族の名が挙げられることになると考えられることになります。
そこで、今回の記事では、
そうしたクラミジアと呼ばれると呼ばれる特殊な細菌の種族の具体的な特徴について、一般的な細菌やウイルスとの大きさの比較や、細菌の名称の由来といった観点から詳しく考察していきたいと思います。
クラミジアと一般的な細菌やウイルスとの大きさの比較と細菌とウイルスの中間に位置する病原体の種族としての位置づけ
そうすると、まず、
クラミジア(Chlamydia)と呼ばれる細菌の種族は、生物学的な分類においては、偏性細胞内寄生菌と呼ばれる細菌のグループに分類されることになり、
寄生した細胞の内部に封入体と呼ばれる異質な変性領域を形成していくことを特徴とする球形または楕円形の形状をしたグラム陰性の微小な細菌の一種として位置づけられることになるのですが、
こうしたクラミジアと呼ばれる細菌の種族の大きさを球菌や桿菌といった一般的な細菌のグループに分類されることになる細菌の種類と比較していくと、
球菌や桿菌といった一般的な細菌の大きさは、小さいものでもだいたい直径1マイクロメートルくらいの大きさはあるのに対して、
こうしたクラミジアと呼ばれる細菌の種族の大きさは、だいたい直径0.3マイクロメートルすなわち直径300ナノメートルくらいの大きさであると考えられることになります。
ちなみに、
こうした直径300ナノメートルという大きさは、細菌よりもさらに微小な病原体の種族として位置づけられることになるウイルスのなかでもかなり大きめの部類にあたる天然痘ウイルスの大きさがちょうど直径300ナノメートルくらいであると考えられることになるので、
そういった意味では、
前回までの記事で取り上げてきたリケッチアとマイコプラズマ、そして、今回の記事で取り上げたクラミジアと呼ばれる三つの微小な細菌の種族は、
そうした病原体としての大きさといった観点から見ても、細菌とウイルスの中間に位置づけられることになるような病原体の種族としても捉えることができると考えられることになるのです。
クラミジアという細菌の名称の由来と古代ローマの兵士のマント
それでは、次に、
そうしたクラミジアという細菌の名称自体の由来は、具体的にどのような点に求められることになるのか?ということについてですが、
こうしたクラミジア(Chlamydia)という細菌の種族の名称の語源的な由来は、
ラテン語において「マント」や「外套」のことを意味するchlamys(クラミス)という名詞、さらには、そうしたラテン語のさらに大本の語源となった古代ギリシア語におけるχλαμύς(xlamysクラミース)という名詞に求められることになり、
ラテン語において、こうしたchlamys(クラミス)という言葉は、特に、ローマ軍の兵士が自らの身にまとう右肩の部分がブローチでとめられた短いマントのことを意味する言葉であったと考えられることになります。
そして、その一方で
こうしたクラミジアと呼ばれる病原体は、
1907年に、ドイツ系ユダヤ人の放射線科医であったハルバーステダー(Ludwig Halberstädter)とチェコの寄生虫学者であったプロワツェク(Stanislaus von Prowazek)によってはじめて発見されることになるのですが、
その際、
病原体に感染した細胞の内部に、血液標本の細胞染色によって青色に染色された病原体の封入体の構造が観察され、そうした病原体の封入体の姿が、ちょうど細胞が自らの細胞体の周りに青色のマントをまとっているような姿に見えたため、
上述した「マント」や「外套」のことを意味するラテン語におけるchlamys(クラミス)という言葉に基づいて、こうしたChlamydia(クラミジア)と呼ばれる病原体の名称が付けられることになったと考えられることになります。
しかし、
実際の病原体としてのクラミジアは、宿主となる生物の体内へと侵入して細胞の内部に寄生し、そうした「青色のマント」に見えるような封入体と呼ばれる異質な変性領域を細胞の内部に形成していったのち、
さらに増殖を進めて細胞の内部を侵食していくことによって、最終的には宿主となる細胞を破壊してしまうことになるので、
そういった意味では、
ローマ軍の兵士が自らの身にまとう短いマントのことを語源とするこうしたクラミジアと呼ばれる病原体は、
実際には、そうした兵士が自らの身を守るために装着しているマントや外套などとは似ても似つかない、身にまとっている細胞自体を食い尽くしてしまうことになる、いわば、人食いマントのような病原体として捉えることができると考えられることになるのです。
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次回記事:クラミジアの具体的な三つの特徴と分類される代表的な三つの細菌の種類、クラミジア肺炎とオウム病と性感染症との関係
前回記事:マイコプラズマの具体的な三つの特徴と分類される代表的な四つの細菌の種類
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