アシネトバクターとアクネ菌の具体的な特徴と皮膚の表面を弱酸性に保つ共生菌および吹き出物やにきびの原因菌としての働き、桿菌に分類される代表的な細菌の種類とは?⑲
前回までの一連の記事のなかでは、桿菌と呼ばれる細菌のグループに分類されることになる代表的な細菌の種類のなかでも、
乳酸桿菌やビフィズス菌、セラチア菌、エンテロバクター、バクテロイデス、プレボテラ、フゾバクテリウム、プロテウス菌といった人間の腸内に存在する代表的な常在菌の種類について順番に詳しく考察してきましたが、
こうした桿菌に分類されることになる代表的な常在菌の種類のなかには、口腔や腸内などの人体の部位だけではなく、皮膚などといった人間の体表面に生息する細菌の種族も挙げられることになります。
そして、
そうした人間の皮膚などの体表面において生息する桿菌に分類される代表的な常在菌の種類としては、
アシネトバクターやアクネ菌といった細菌の種類の名が挙げられることになると考えられることになります。
アシネトバクターの具体的な特徴と日和見感染症や院内感染の原因菌としての位置づけ
まず、はじめに挙げた
アシネトバクター(Acinetobacter)とは、幅1~1.5マイクロメートル、長さ1.5~2.5マイクロメートルほどの大きさをした紡錘形または短い棒状の形状をしたグラム陰性の好気性桿菌に分類される細菌であり、
土壌や河川、下水などといった自然環境中に広く分布するほか、人間の皮膚の表面などにおいても生息している常在菌の一種として分類されることになります。
そして、
こうしたアシネトバクターと呼ばれる細菌は、免疫力が健全な状態にある人間の皮膚の表面に生息している分には、通常の場合、人体に対して害を及ぼすことはないと考えられることになるのですが、
その一方で、
免疫力の低下した状態にある人が感染すると、様々な症状が引き起こされてしまうことがある日和見感染症や院内感染の原因菌となる細菌の種類としても位置づけられることになります。
そして、
そうしたアシネトバクターを原因とする細菌感染症においては、手や点滴などの医療器具などを介して患者の口腔内や傷口へと侵入した細菌によって、
肺炎や尿路感染症、さらには、髄膜炎や敗血症といった重篤な感染症の症状が引き起こされるケースもあり、
特に、細菌感染症に対する一般的な治療薬として用いられている多くの抗生物質などに対して耐性を持つ
多剤耐性アシネトバクター菌(MDRA、Multi-Drug Resistant Acinetobacter)を原因とする細菌感染症においては多くの死亡例の報告も挙げられている
院内感染においては十分な注意を払うことが必要な細菌の種類として位置づけられることになると考えられることになるのです。
アクネ菌の具体的な特徴と皮膚の表面を弱酸性に保つ共生菌および吹き出物やにきびなどの炎症性の皮膚疾患の原因菌としての働き、
そして、その次に挙げた
アクネ菌(Propionibacterium acnes、プロピオニバクテリウム・アクネス)とは、幅0.4~0.7マイクロメートル、長さ1~5マイクロメートルほどの大きさをした紡錘形または短い棒状の形状をしたグラム陽性の嫌気性桿菌に分類される細菌であり、
人間を含む様々な動物の皮膚、その中でも特に、汗腺や皮脂腺などが存在する毛包の内部において生息している常在菌の一種として分類されることになります。
そして、
こうしたアクネ菌と呼ばれる細菌は、通常の場合は、
毛包の内部において分泌される皮脂などの分泌物を養分として増殖し、そうした皮脂の成分などを代謝していく際に、プロピオン酸や脂肪酸といった物質を合成していくことによって、皮膚の表面を人体にとって健全な弱酸性の状態に保つことなどに貢献するというように、
皮膚細胞との間で共生関係を営んでいる人体にとって無害または有益な細菌の種類として位置づけられることになると考えられることになります。
しかし、その一方で、
毛包の内部においてアクネ菌が大量に増殖していってしまう場合などにおいては、毛包の内部における皮脂の目詰まりを引き起こしてしまうケースがあり、
そうしたケースにおいては、
こうしたアクネ菌と呼ばれる細菌は、特に、顔や背中、胸部などといった皮脂分泌量が多い皮膚の領域において炎症性の皮膚疾患を引き起こしてしまうことになる
にきびや吹き出物などの原因菌となる細菌の種類としても位置づけられることになると考えられることになるのです。
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次回記事:らせん菌に分類される代表的な細菌の種類とは?①カンピロバクターの具体的な特徴と細菌性の急性胃腸炎の原因菌としての位置づけ
前回記事:フゾバクテリウムとプロテウス菌の具体的な特徴と歯周病や潰瘍性大腸炎との関係性、桿菌に分類される代表的な細菌の種類とは?⑱
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