セラチア菌とエンテロバクターの具体的な特徴と日和見感染や院内感染の原因菌としての位置づけ、桿菌に分類される代表的な細菌の種類とは?⑯
前回の記事では、桿菌と呼ばれる細菌のグループに分類されることになる代表的な細菌の種類のなかでも、
乳酸桿菌やビフィズス菌といった人間の体内に生息する腸内細菌の種類として位置づけられている常在菌の一種として分類されることになる代表的な桿菌の種類について取り上げましたが、
そうした人間の腸内に生息する代表的な桿菌の種類としては、その他にも、セラチア菌、エンテロバクター、バクテロイデス、フゾバクテリウム、プレボテラ、プロテウスといった細菌の種類の名が挙げられることになると考えられることになります。
セラチア菌の具体的な特徴と院内感染の原因菌としての位置づけ
まず、こうした人間の腸内に生息する様々な常在菌の種類のうち、はじめに挙げた
セラチア菌(Serratia)とは、細胞の周囲にある多数の周毛性の鞭毛を用いて移動する幅0.5~1マイクロメートル、長さ1~5マイクロメートルほどの大きさをした棒状の形状をしたグラム陰性の嫌気性桿菌に分類される細菌であり、
人間や動物の腸内のほか土壌や水中などにおいても広く生息する一般的な常在菌の一種として位置づけられることになります。
そして、
こうしたセラチア菌と呼ばれる細菌は、前述したように自然界において広く分布する常在菌の一種であり、人体に対する病原性も弱いため、免疫力が健全な状態にある人間に対して細菌感染症を引き起こすことはほとんどないと考えられることになるのですが、
その一方で、
高齢者や病人などといった免疫力が低下している人に対しては細菌感染症を引き起こすことがあり、消毒薬や抗生物質などの薬剤に対しても高い耐性を示す細菌の種類も含まれているほか、
健康な人に対しても、こうしたセラチア菌と呼ばれる細菌が点滴やカテーテルといった医療器具などを介して血管に直接侵入してしまった場合には、肺炎や敗血症、心内膜炎といった感染症を引き起こしてしまうケースがあるため、
こうしたセラチア菌と呼ばれる細菌は、自然界において広く生息する常在菌の一種であると同時に、病院などにおいては注意を払うことが必要な日和見感染や院内感染の原因菌の一種としても位置づけられることになるのです。
エンテロバクターの具体的な特徴と新生児や早産児における日和見感染の危険性
そして、その次に挙げた
エンテロバクター(Enterobacter)とは、細胞の周囲にある4~6本程度の鞭毛を用いて移動する幅0.5~1マイクロメートル、長さ1~5マイクロメートルほどの大きさをした棒状の形状をしたグラム陰性の嫌気性桿菌に分類される細菌であり
前述したセラチア菌と同様に、人間や動物の腸内などのほか、土壌や水中などにおいても広く生息する一般的な常在菌の一種として位置づけられることになります。
そして、
こうしたエンテロバクターと呼ばれる細菌は、前述したセラチア菌と同様に、通常の場合、免疫力が健全な状態にある人に対して害をおよぼすことはないものの、免疫力が低下した状態にある人に対しては細菌感染症を引き起こす危険性のある日和見感染の原因菌の一種として位置づけられることになるのですが、
こうしたエンテロバクター属に分類される細菌のなかには、
エンテロバクター・サカザキ(Enterobacter sakazakii)と呼ばれる新生児や乳幼児に対して肺炎や髄膜炎、敗血症といった命に関わるような重篤な細菌感染症を引き起こす原因菌となる細菌の種類も含まれていて、
こうしたエンテロバクター属に分類される細菌によって引き起こされる細菌感染症は、そのなかでも、特に、
一般的な乳幼児よりもさらに免疫力が低い状態にある早産児などにおいて感染のリスクや、感染してしまった場合の重症化のリスクが高まってしまうことになるため、
そうしたケースにおいては、特に注意することが必要な日和見感染症の原因菌の種類として位置づけられることになると考えられることになるのです。
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次回記事:バクテロイデスとプレボテラの具体的な特徴と動物性タンパク質と食物繊維を分解する腸内細菌の種類の違い、桿菌に分類される代表的な細菌の種類とは?⑰
前回記事:ビフィズス菌と乳酸菌の関係と乳幼児期から大人へと成長するまでの腸内細菌叢を占める細菌の種類の割合の変化、桿菌に分類される代表的な細菌の種類とは?⑮
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