サナダムシの語源となった真田紐の二つの由来とサナダムシに分類される具体的な寄生虫の種類とは?
有鉤条虫、無鉤条虫、広節裂頭条虫、マンソン裂頭条虫、日本海裂頭条虫、エキノコックス属に分類される単包条虫と多包条虫、さらには、瓜実条虫、小型条虫(ナナ条虫)、縮小条虫、有線条虫、芽殖孤虫といった
人間に対して寄生虫感染症を引き起こす原因となる様々な条虫の種類について順番に取り上げてきましたが、
こうした「条虫」と呼ばれる寄生虫の種族に対する呼び名としては、日本語においては、一般的に、平たく厚く織られた木綿製のひもの一種である真田紐(さなだひも)の形状になぞらえて「サナダムシ」といった表現が用いられることがあります。
それでは、
そもそも、こうしたサナダムシの語源ともなった真田紐という言葉自体の由来は、さらにどのような事柄に求められることができると考えられ、
具体的には、どのような寄生虫の種族のことを指して、こうしたサナダムシという呼び名が用いられるようになっていったと考えられることになるのでしょうか?
真田紐の二つの由来とは?戦国時代の真田父子と万葉集の狭織の帯
冒頭でも述べたように、
サナダムシ(真田虫)という言葉の語源となった真田紐(さなだひも)とは、
着物の帯締めや帯留め、兜の緒などの武具の一部、茶道具などを容れる桐箱の紐や、積み荷をまとめる荷物紐などにも用いられる平たく厚く織られた丈夫な木綿製のひものことを意味する言葉であると考えられることになるのですが、
こうした真田紐と呼ばれる言葉自体の由来については、現代に至るまでに様々な説が伝えられていて、
そのなかでも有力なものとしては、以下で述べるような二つの説が挙げられることになると考えられることになります。
そうした二つの有力な説のうち、最も一般的な説としては、
戦国時代末期に、関ヶ原の戦いに敗れて和歌山県の九度山に蟄居していた真田昌幸と真田信繁(真田幸村)父子の名に由来するという説が挙げられることになり、
こうした真田昌幸と真田信繁と呼ばれる二人の人物が、のちに真田紐と呼ばれる木綿製の丈夫なひもの織り方を考案して、そうした木綿製のひもを地元の人たちのために製作することによって生計を立てていたという逸話から彼らの名が付けられることになったとも、
父である真田昌幸がこうした木綿製の丈夫なひもを自分自身の刀の柄(つか)を巻くのに用いていたために、そうした武具に用いることもできるような丈夫なひもの打ち方のことを指して、真田打ちと呼ばれるようになったことが由来であるといった説も伝えられています。
それに対して、もう一つの説としては、
奈良時代に成立した日本最古の和歌集でもある万葉集にも記載のある
「古への 狭織の帯を 結び垂れ 誰れしの人も 君にはまさじ」
(いにしへの さおりのひもを むすびたれ たれしのひとも きみにはまさじ)
といった古代の和歌の一節にも出てくる 帯に用いるように幅狭く織った織物のことを意味していた狭織(さおり)という言葉が、のちに、狭織(さのはた)といった読み方でも読まれるようになり、
そうした「さのはた」という呼び名が、さらに、「さなだ」という呼び名へと変化していったのが、こうした「さなだひも」(真田紐)という言葉の大本の由来となったといった説も挙げられることになると考えられることになるのです。
サナダムシに分類される具体的な寄生虫の種類とは?
それでは、
こうした真田紐という言葉が直接的な語源となったサナダムシ(真田虫)という呼び名は、具体的にどのような種類の寄生虫に対して、こうした呼び名を用いることが適切であると考えられるのか?ということについてですが、
それについては、まず、
こうしたサナダムシという言葉が、条虫と呼ばれる寄生虫の種族に対する一般的な俗称として用いられる言葉である以上、
言葉自体の定義としては、冒頭で挙げたような条虫に分類されるすべての寄生虫の種族のことを指して、こうしたサナダムシという言葉を用いることも可能ではあるとも考えられることになります。
しかし、その一方で、
こうしたサナダムシという言葉の語源となった真田紐という言葉が、着物の帯締めや荷物紐として用いられるような長く丈夫なひものことを意味する言葉であったという言葉自体の由来に基づいて考えていくと、
条虫に分類される寄生虫の種族のなかでも、多数の体節が連なった特徴的な長いひも状の体を形成することがない単節条虫に分類される条虫や、
エキノコックスに分類される単包条虫と多包条虫、あるいは、小型条虫や縮小条虫といった体長が数センチ程度までにしか成長しないような小型の条虫の種族のことを指して、サナダムシという表現を用いることは、言葉自体のイメージにはあまりそぐわない表現となってしまうと考えられ、
そういった意味では、一義的には、
有鉤条虫や無鉤条虫、広節裂頭条虫やマンソン裂頭条虫や日本海裂頭条虫といった
人間の腸の中で1メートル以上の長さに成長するような比較的大型の条虫の種族のことを指して、こうしたサナダムシ(真田虫)という表現が用いられていると考えられることになるのです。
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次回記事:サナダムシの英語とギリシア語とラテン語における呼び名とは?美の女神ヴィーナスの帯ひもとテープワーム
前回記事:条虫による寄生虫感染症の原因となる代表的な12の条虫の種類とは?④瓜実条虫、芽殖孤虫といったその他の条虫の種族
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