条虫による寄生虫感染症の原因となる代表的な12の条虫の種類とは?②広節裂頭条虫、マンソン裂頭条虫、日本海裂頭条虫
前回の記事では、有鉤条虫と無鉤条虫、別名ではカギサナダとカギナシサナダとも呼ばれることにもなる条虫の種族に分類される代表的な寄生虫の種類について取り上げてきましたが、
今回の記事では、それに引き続き、
裂頭条虫(れっとうじょうちゅう)と呼ばれる寄生虫のグループに分類されることになる広節裂頭条虫、マンソン裂頭条虫、日本海裂頭条虫といった
三つの種類の人間における寄生虫感染症の原因となる代表的な条虫の種類について順番に考察していきたいと思います。
広節裂頭条虫
まず、はじめに挙げた広節裂頭条虫(こうせつれっとうじょうちゅう)とは、別名ではミゾサナダとも呼ばれることのある成虫になると体長2~10メートルほどの大きさにまで成長する条虫の種族であり、
頭節の部分に存在する二本の溝(みぞ)のような構造を用いて宿主となる動物の腸粘膜に吸着しているため、こうしたミゾサナダと呼ばれる名称が付けられることになったと考えられることになります。
そして、
こうした広節裂頭条虫と呼ばれる寄生虫は、マス(鱒)やサケ(鮭)やタラ(鱈)といった魚類の一部を中間宿主としていて、
これらの魚を加熱調理や冷凍保存といった処理を一切せずに生の状態で食べた場合などに、人体に対して感染するケースがあると考えられることになります。
ちなみに、
こうした広節裂頭条虫の感染は、日本では主に、鱒寿司(ますずし)などを原因とする食中毒の事例などが比較的多く報告されていて、
広節裂頭条虫は、寄生虫感染症の原因となる寄生虫の種類としては、線虫の一種であるアニサキスと、吸虫の一種である横川吸虫に次いで日本国内において三番目に感染者数が多い最も一般的な条虫の種類として位置づけられることになると考えられることになります。
そして、
人間の体内へと侵入した広節裂頭条虫は、小腸に寄生したうえで、通常の場合は、片利的な共生関係を営むことによってほとんど無症状のまま成長していく場合も多いと考えられることになるのですが、
そうした条虫の腸内へ寄生や成長の過程において、腹痛や下痢といった消化器系を中心とする症状や、条虫の体を構成している片節が腸壁を傷つけることによって貧血などの症状が引き起こされるケースもあると考えられることになるのです。
マンソン裂頭条虫
そして、その次に挙げたマンソン裂頭条虫とは、成虫が体長1~2メートルほどの大きさに成長する条虫の種族であり、
中間宿主であるカエルやヘビ、カメやドジョウといった動物を生で食べた場合や、終宿主にあたるネコなどの動物が野良猫や放し飼いの状態にある場合などに、そうしたネコやキツネなどの排泄物を介して人間に感染するケースもあると考えられることになります。
そして、
人間の体内へと侵入したマンソン裂頭条虫は、小腸に寄生することによって、腹痛や消化不良、慢性的な下痢や栄養障害といった消化器系を中心とする症状を引き起こすケースがあるほか、
幼虫の状態にあるある条虫が皮下や筋肉へと移動していくことによって、無痛性の腫瘤(こぶ)を形成していくケースもあり、
そうしたケースにおいては、幼虫の移動に伴って、皮膚の下で腫瘤自体も移動していくという奇妙な現象が見られていくことになり、
そうした腫瘤がそのまま脳や眼球、あるいは、心臓や肝臓といった人体にとって重要な器官へと移動していってしまうケースでは、
それらの器官や臓器が寄生虫性の腫瘤によって圧迫されて、さらには壊死していってしまうことによって、それらの器官に重大な障害が引き起こされてしまうケースもあると考えられることになるのです。
日本海裂頭条虫
そして、もう一つの日本海裂頭条虫とは、成虫の大きさが前述した広節裂頭条虫と同様に体長2~10メートルほどの大きさにもおよぶ条虫の種族であり、
中間宿主であるサクラマスやカラフトマスなどの魚類を生食した場合などに人間に対して感染するケースがあると考えられることになります。
そして、
こうした人間の体内へと侵入した日本海裂頭条虫は、小腸に寄生することによって、下痢や腹痛といった消化器系を中心とする症状を引き起こすケースがあるほか、
前述したマンソン裂頭条虫の場合と同様に、体内で孵化した幼虫が人体内では成虫へと成長することができないまま人間の体内を移動していくことによって、
皮下や筋肉において移動性の腫瘤を形成していくケースもあると考えられることになるのです。
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次回記事:条虫による寄生虫感染症の原因となる代表的な12の条虫の種類とは?③エキノコックスに分類される単包条虫と多包条虫の特徴
前回記事:条虫による寄生虫感染症の原因となる代表的な12の条虫の種類とは?①有鉤条虫と無鉤条虫の具体的な特徴と主要な症状
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