サポウイルスによる食中毒の症状とウイルス名の由来、食中毒の原因となる代表的な五つのウイルスの種類とは?③
前回と前々回の記事では、食中毒やウイルス性の胃腸炎の原因となる代表的なウイルスの種類として挙げられることになる
ノロウイルス、ロタウイルス、サポウイルス、A型肝炎ウイルス、E型肝炎ウイルスという全部で五つのウイルスの種類のうちの
はじめに挙げたノロウイルスとロタウイルスと呼ばれる二つのウイルスの種族におけるウイルス自体の構造の特徴や感染のピーク、それぞれのウイルスによって引き起こされることになる胃腸炎の具体的な症状の特徴といったことについて詳しく考察してきましたが、
そうした食中毒や感染性胃腸炎の原因となる代表的なウイルスの種類としては、そのほかにも、サポウイルスと呼ばれる比較的マイナーなウイルスの種類ではあるものの日本という国との関わりが非常に深い少し印象的なウイルスの種族の名も挙げることができると考えられることになります。
サポウイルスの名前の由来とウイルス粒子の構造上の特徴
そもそも、
サポウイルス(Sapovirus)というこのウイルスの種族の名前自体は、このウイルスの存在が、
1977年に、北海道の札幌市の児童福祉施設において集団発生した胃腸炎において初めてこの種のウイルスの検出が報告されたことに由来していて、
それ以降、
このウイルスは、便宜的にサッポロウイルス(Sapporo virus)という呼び名で呼び慣わされていくことになります。
そして、その後、
1992年における関東地方でのサッポロウイルスの集団感染などを経たのち、
2002年に、パリで開かれた国際ウイルス学会において、それまでこうしたサッポロウイルスのことを意味するウイルスの種族名として暫定的に用いられた
「サッポロ様ウイルス属」という呼び名が、「サポウイルス属」という呼び名に改められる形でウイルスの種族名の名称が統一されることが承認されることによって、
現在におけるサポウイルスというウイルスの種族名が正式に定まることになったと考えられることになります。
そして、
こうしたサポウイルスと呼ばれるウイルスの種族は、前々回の記事で取り上げたノロウイルスとも同じカリシウイルス科(Caliciviridae)に分類されるウイルスであり、
ウイルスの大きさと形状についても、
ノロウイルスが、直径 30~38ナノメートル程度の正二十面体の形をしているのに対して、
サポウイルスは、直径27~40ナノメートルの正二十面体をしているというように、
こうした二つのウイルスの種族は互いに非常によく似た構造と特徴を持つウイルスの種族として位置づけられることになると考えられることになるのです。
サポウイルスの名前の由来とウイルス粒子の構造上の特徴
そして、
こうしたサポウイルスによって引き起こされる食中毒は、前述した1992年に起こった関東地方でのサッポロウイルスの集団感染が3月から5月の時期に集中していたように、
基本的には冬から春先にかけて感染の危険性のピークを迎えることになると考えられることになります。
そして、
人間の体内へと侵入したサポウイルスは、ノロウイルスと同様に小腸の粘膜において増殖していくことになり、
12~48時間程度の潜伏期間の後に、小腸粘膜を構成している上皮細胞を破壊していくことによって、これもノロウイルスなどの場合と同様に、
吐き気や嘔吐、下痢、腹痛といった消化器系を中心とする症状を引き起こし、通常の場合は2日ほどで、遅くても1週間程度で自然に治癒していくことになります。
このように、
サポウイルスによって引き起こされる食中毒や胃腸炎と、それと同系統のウイルスの種族に属するノロウイルスによって引き起こされる食中毒や胃腸炎を症状のみから区別することは非常に難しいと考えられることになるのですが、
それでも、強いて両者のウイルスによって引き起こされる食中毒における具体的な症状の違いのあり方を挙げるとするならば、
一般的に、
ノロウイルスの感染においては、激しい消化器系の症状に並行して38度程度の発熱が見られることが比較的多いと考えられることになるのに対して、
サポウイルスの感染においては、そうした下痢や嘔吐といった消化器系の症状に伴って37度程度の微熱以上の発熱が見られることは比較的まれであるといった点が挙げられることになると考えられることになるのです。
・・・
次回記事:A型肝炎ウイルスによる食中毒の症状と感染経路、食中毒の原因となる代表的な五つのウイルスの種類と具体的な特徴とは?④
前回記事:ロタウイルスによる胃腸炎の特徴とウイルスの構造、食中毒の原因となる代表的な五つのウイルスの種類と具体的な特徴とは?②
「医学」のカテゴリーへ