ロタウイルスによる胃腸炎の特徴とウイルスの構造、食中毒の原因となる代表的な五つのウイルスの種類と具体的な特徴とは?②
前回の記事で書いたように、日本国内において発生する食中毒の原因となる代表的なウイルスの種類としては、
ノロウイルス、ロタウイルス、サポウイルス、A型肝炎ウイルス、E型肝炎ウイルスという全部で五つのウイルスの種類を挙げることになり、
その中でも、そうしたウイルス性の食中毒の95%以上はノロウイルスが原因となって引き起こされていると考えられることになるのですが、
今回の記事では、
前回取り上げたノロウイルスによる食中毒の特徴とウイルス自体の大きさや構造などについての説明に続いて、
その次のロタウイルスと呼ばれるウイルスの種類におけるウイルス自体の特徴や、感染時期や潜伏期間、発症する食中毒における具体的な症状の違いなどについて詳しく考察していきたいと思います。
ロタウイルスの大きさとウイルス粒子の構造上の特徴
まず、
ロタウイルス(Rotavirus)とは、前回取り上げたノロウイルスと同様に、ウイルス性の胃腸炎の原因となる代表的なウイルスの種類として位置づけられるウイルスであり、
ウイルス自体の構造としては、
大きさはだいたい直径100ナノメートル(0.0001ミリメートル)ほどの球形をした粒子であり、前回取り上げた直径30ナノメートルほどの粒子であるノロウイルスと比べるとかなり大きいものの、
一般的なウイルスの大きさはだいたい20~1000ナノメートルくらいであると考えられるので、そういった意味では、極めて平均的な大きさをしたウイルスであるとも考えられることになります。
また、
こうしたロタウイルスと呼ばれるウイルスの種族も、前回取り上げたノロウイルスと同様に、
インフルエンザウイルスなどにみられるようなエンベロープと呼ばれる脂質によって構成されている膜構造を持たないため、石けんやアルコールといった人間が日常的に用いる薬品による消毒が困難であり、
感染拡大の予防のために汚染された食器や衣類などの消毒を行う際には、ノロウイルスの場合と同様に、次亜塩素酸ナトリウムといった特殊な薬剤による消毒が必要となると考えられることになります。
ロタウイルスによって引き起こされる胃腸炎の症状と感染のピーク
そして、
ロタウイルスによる食中毒やウイルス性胃腸炎の発生は、12月から1月といった冬場にピークを迎えるノロウイルスの感染から少し遅れて、3月から4月にかけての春先に感染のピークを迎えることになるのですが、
人間の体内へと侵入したロタウイルスは、ノロウイルスの場合と同様に小腸の粘膜において増殖していくことになり、
通常2日程度の潜伏期間の後に、小腸粘膜を構成している上皮細胞を破壊して、小腸からの水分の吸収を阻害していくことによって、
水様性の急激な下痢や嘔吐、腹痛や発熱といった症状を引き起こしたのち、通常の場合はだいたい1~2週間程度で自然に治癒していくことになります。
また、
前述したように、ロタウイルスは、日常的な方法によって消毒することが難しく、人間の生活空間のいたるところに安定的に存在しているウイルスであるため、衛生的な環境が整っている先進国などにおいても感染を予防することは難しく、
離島などの隔離された地域を除いた世界中のほとんどの乳幼児が、通常の場合には、生後6か月から2歳くらいまでの間に、遅くても5歳から6歳ごろまでにはこうしたノロウイルスによる感染を受けることになり、
大人になるまでの間には、ほとんどの人がロタウイルスに対する免疫を獲得することになるため、
実際には、
抵抗力が著しく衰えている高齢者や免疫不全症の患者などの場合を除いて、通常の成人に対しては、上記のような胃腸炎の症状を引き起こすことはほとんどないと考えられることになります。
しかし、その反面、
こうしたロタウイルスにはじめて感染することになる乳幼児の胃腸炎においては、しばしば下痢などの主症状が重症化することによって、深刻な脱水症状といった命に関わる症状が引き起こされるケースもあるため、
そういった意味では、
そうしたロタウイルスと呼ばれるウイルスの種族は、小児における胃腸炎の原因となるウイルスとしては、注意を払うが必要があるウイルスとして位置づけられることになると考えられることになるのです。
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次回記事:サポウイルスによる食中毒の症状とウイルス名の由来、食中毒の原因となる代表的な五つのウイルスの種類とは?③
前回記事:食中毒の原因となる代表的な五つのウイルスの種類と具体的な特徴とは?①ノロウイルスによる食中毒の特徴とウイルスの構造
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