クラミジア肺炎の三つの分類とは?病原菌の種類の違いに基づくオウム病や性感染症としてのクラミジアとの関係
前回の記事で書いたように、市中すなわち街の中で日常的な社会生活を営んでいる人々が感染することになる一般的な肺炎のことを意味する市中肺炎の原因となる代表的な病原体としては、
肺炎球菌、インフルエンザ菌、マイコプラズマ、クラミジア(クラミドフィラ)という四つの細菌の種類が挙げられることになるのですが、
こうした市中肺炎の四大病原菌のうちの最後に挙げたクラミジア(クラミドフィラ)と呼ばれる細菌によって引き起こされるクラミジア肺炎については、
その原因となる細菌の種族のより細かい区分にあり方に基づいて、さらに、三種類の病態のあり方へと分類されていくことになると考えられることになります。
クラミジア肺炎の主要な病原菌となるクラミドフィラ・ニューモニエ
冒頭でも述べたように、
クラミジア肺炎とは、クラミジア(Chlamydia)あるいはクラミドフィラ(Chlamydophila)と呼ばれる細菌によって引き起こされる肺炎のことを意味する言葉として定義されることになるのですが、
より正確には、
こうしたクラミジア肺炎あるいはクラミドフィラ肺炎と呼ばれる感染症の原因となる病原菌の種類は、肺炎の原因となる頻度が高い順に、
クラミドフィラ・ニューモニエ(Chlamydophila pneumoniae)と、
クラミドフィラ・シタッシ(Chlamydophila psittaci)、
クラミジア・トラコマチス(Chlamydia trachomatis)
と呼ばれる三つの病原菌の種類へと区分されることになります。
そして、このうち、
はじめに挙げたクラミドフィラ・ニューモニエ(Chlamydophila pneumoniae)と呼ばれる細菌は、
ニューモニエ(pneumoniae※)という言葉がラテン語において「肺炎の」という意味を表す言葉であることからも明らかなように、
こうしたクラミジア肺炎あるいはクラミドフィラ肺炎と呼ばれる感染症の主要な原因菌として位置づけられる細菌であると考えられて、
こうしたクラミドフィラ・ニューモニエを病原菌とする肺炎においては、痰を伴わない乾いた咳や発熱といった症状が見られることになるほか、急性喉頭炎に伴う咽頭痛や声のかすれや声枯れといった症状なども見られることになり、
特に、高齢者施設などにおける飛沫感染を介した集団感染などへの注意が必要とされることになります。
※pneumoniaeという単語のラテン語本来の発音はニューモニアエ。
人獣共通感染症のオウム病の主要な病原菌となるクラミドフィラ・シタッシ
そして、それに対して、
次に挙げたクラミドフィラ・シタッシ(Chlamydophila psittaci)と呼ばれる細菌によって引き起こされる肺炎は、別名ではオウム病とも呼ばれていて、
オウム病とは、その名の通り、オウムやインコといった鳥類を自然宿主とする人獣共通感染症にあたる感染症として位置づけられることになります。
そして、
こうしたオウム病と呼ばれる感染症においては、主に、飼育している鳥の排泄物などの内に含まれている病原菌を吸引してしまうことによって、
高熱や咳といった症状から、肺炎や髄膜炎といった症状まで多様な病態が引き起こされることになるのです。
性感染症や母子感染を引き起こす病原菌となるクラミドフィラ・トラコマチス
そして、
最後に挙げたクラミジア・トラコマチス(Chlamydia trachomatis)とは、性感染症の原因となる代表的な病原菌の種類としても位置づけられる細菌であり、
こうしたクラミジア・トラコマチスによって引き起こされるクラミジア肺炎は、特に、クラミジア・トラコマチス肺炎と呼ばれて区別されることがあります。
また、
こうしたクラミジア・トラコマチスは、感染母体からの母子感染による新生児や乳児などにおける肺炎の発症や結膜炎などを引き起こす細菌としても注意が必要とされることになります。
・・・
以上のように、
市中肺炎の四大病原菌の一つに数えられるクラミジアあるいはクラミドフィラと呼ばれる細菌は、より正確には、
クラミジア肺炎の主要な病原菌となるクラミドフィラ・ニューモニエと、
人獣共通感染症であるオウム病の病原菌となるクラミドフィラ・シタッシ、
性感染症や母子感染を引き起こす病原菌となるクラミドフィラ・トラコマチス
という三つの細菌の種族へと分類されることになります。
そして、
こうした三つの細菌の種族はすべて同じクラミジア科に分類される細菌の種族であるという点においては互いに共通しているものの、
はじめに挙げたクラミドフィラ・ニューモニエと、その次に挙げたるクラミドフィラ・シタッシと呼ばれる二つの細菌の種族は、両方とも、クラミジア科クラミドフィラ属に分類される細菌の種族であるのに対して、
最後に挙げたクラミジア・トラコマチスはクラミジア科クラミジア属に分類される細菌の種族であるという点において、
こうしたクラミジア肺炎の主な原因となる病原菌であるクラミドフィラ・ニューモニエと、その次に挙げたオウム病の原因となるクラミドフィラ・シタッシと呼ばれる二つの細菌の種族と、
最後に挙げた性感染症の原因となる代表的な病原菌の種類であるクラミジア・トラコマチスと呼ばれる細菌とは、厳密な意味においては異なる系統に属する細菌の種族として区別されることになると考えられることになるのです。
・・・
次回記事:食中毒原因菌として指定されている16種類の細菌の種類とは?厚生労働省の資料に基づく食中毒統計の歴史
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