細菌感染症と真菌症の違いとは?両者に分類される代表的な感染症の種類とそれぞれの病原体の具体的な特徴
前回の記事で書いたように、菌類と呼ばれる生物の種族は、大きく分けて、細菌と真菌と呼ばれる二つの生物のグループに分類されることになると考えられるのですが、
医学の分野における感染症の分類においても、こうした細菌によって引き起こされる感染症と、真菌によって引き起こされる感染症とは、通常の場合、互いに区別されて取り扱われることになり、
前者の細菌によって引き起こされる感染症は細菌感染症と呼ばれるのに対して、後者の真菌によって引き起こされる感染症は真菌症という言葉によって呼び表されることになります。
それでは、
こうした細菌感染症と真菌症と呼ばれる二つの感染症の区分のあり方には具体的な特徴の違いがあり、両者に分類される代表的な感染症の種類としては具体的にどのような感染症の種類が挙げられることになると考えられることになるのでしょうか?
細菌感染症と真菌症における具体的な特徴の違い
こうした細菌感染症と真菌症と呼ばれる二つの感染症のグループにおける具体的な特徴の違いとしては、
まず、第一に、
前者の細菌感染症は、核膜を持たずに細胞内にむき出しの状態でDNAが存在する原核生物に分類される生物である細菌によって引き起こされる感染症であるのに対して、
後者の真菌症は、核膜によって細胞核と細胞質が明確に区分される真核生物に分類される生物であるカビや酵母やキノコといった真菌によって引き起こされる感染症であるといった点が挙げられることになります。
そして、
前者の細菌感染症の治療においては、通常の場合、抗生物質や抗菌薬と呼ばれる薬の種類が用いられるのに対して、
後者にあたる真菌症の治療において用いられる薬の種類は、通常の場合、抗真菌薬といった言葉によって呼び表されることになります。
また、
こうした細菌と真菌と呼ばれる生物の種族の両者を人間に対して感染症を引き起こす病原体として捉えた場合、
人間を含む動物や植物といった生物の種族と同様に真核生物に分類される生物の種族にあたる真菌によって引き起こされる感染症の場合には、
そうした人体とも似通った細胞構造をもつ生物の種族である真菌を死滅させるために比較的強い薬理作用を持った抗真菌薬を使用しようとすると、
通常の細菌感染症における抗生物質や抗菌薬の使用の場合よりも、人体の細胞にも大きな悪影響を与えてしまう危険性が高まってしまうことになると考えられるため、
一般的に、細菌感染症の場合よりも真菌症の治療の場合の方が、明確な治療法の確立が難しく、治療が長期化しやすい傾向にあるといった特徴なども挙げることができると考えられることになるのです。
細菌感染症と真菌症に分類される代表的な感染症の種類
それでは、
こうした細菌感染症と真菌症に分類される代表的な感染症の種類としては、具体的にどのような感染症の種類が挙げられることになるのか?ということについてですが、
まず、
前者の細菌感染症に分類される感染症の原因となる細菌の代表的な種類としては、
一般的な肺炎の原因となる肺炎球菌や、食中毒の原因となるO111やO157といった病原性大腸菌やサルモネラ菌、同じく食中毒の原因となる細菌として位置づけられるカンピロバクターや腸炎ビブリオ、
食中毒や肺炎あるいは敗血症などの原因ともなる黄色ブドウ球菌や、病原性は低いものの日和見感染症として同じく肺炎や敗血症などの原因となる緑膿菌、急性咽頭炎や急性扁桃炎などの原因となる溶連菌(ようれんきん)や、
感染性の髄膜炎の原因となる髄膜炎菌、破傷風の病原体となる破傷風菌などのほかにも、結核菌、ペスト菌、コレラ菌、チフス菌、赤痢菌、炭疽菌といった様々な細菌の種類が挙げられることになるほか、
一見すると細菌感染症なのかどうか分かりにくい感染症の種類としては、
以前には、およそ四年に一度の間隔で夏期オリンピックが行われる年に流行が発生していたことからオリンピック熱とも呼ばれていたマイコプラズマ肺炎などの原因となるマイコプラズマや、
性感染症などの原因となるクラミジア、梅毒の病原体として知られる梅毒トレポネーマ、淋病の原因となる淋菌(りんきん)といった病原体によって引き起こされる感染症も、細菌が原因となる細菌感染症に分類される感染症の種類として位置づけられることになります。
そして、それに対して、
後者の真菌症に分類される感染症の原因となる真菌の種類としては、
水虫(みずむし)や田虫(たむし)、白癬(しらくも)や爪白癬(つめはくせん)といった感染症の原因となる白癬菌(はくせんきん)や、
カビ性肺炎など呼ばれる呼吸器系の症状を引き起こすアスペルギルス症の原因となるアスペルギルス、咳やインフルエンザに似たような症状を引き起こすヒストプラスマ症の原因となるヒストプラスマが挙げられるほか、
呼吸器系の疾患や髄膜炎や脳炎なども引き起こすクリプトコッカス症の原因となるクリプトコッカスや、皮膚や粘膜に炎症性の疾患を引き起こすカンジダ症の原因となるカンジダといった病原体によって引き起こされる感染症なども、細菌ではなく真菌に分類される感染症の種類として位置づけられることになるのです。
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次回記事:抗菌薬と抗真菌薬の違いとは?「細菌に対抗する薬」と「キノコに対抗する薬」の違い
前回記事:真菌と細菌の違いとは?カビや酵母やキノコなどが分類される真菌と細菌の細胞における五つの特徴の違い
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