真菌と細菌の違いとは?カビや酵母やキノコが分類される真菌と細菌の細胞における五つの特徴の違い
以前に「菌類の分類のまとめ」の記事などで書いたように、広義における菌類に分類される代表的な生物の種族は、大きく分けて、
カビや酵母やキノコなどが分類される真菌と呼ばれるとグループと、細菌と呼ばれるグループとに分類されることになると考えられることになります。
そこで今回の記事では、
こうした真菌と細菌と呼ばれる生物のグループは、互いに具体的にどのような点において異なる特徴を持った生物のグループとして位置づけられることになるのか?ということについて詳しく考えていきたいと思います。
①真核生物と原核生物という生物学における基本的な分類の違い
まず、
こうした真菌と細菌と呼ばれる二つの生物のグループを分ける最も大きな特徴の違いとしては、
前者の真菌は、細胞の遺伝情報が書き込まれているDNAが存在する細胞核と、それ以外の細胞質の部分とが核膜によって明確な形で区分けされている真核生物に分類されるのに対して、
後者の細菌は、核膜を持たずに細胞内にむき出しの状態でDNAが存在する原核生物に分類されるという点が挙げられることになります。
②細胞内において特定の機能に特化した構造をもつ細胞小器官の有無
そして、
真菌の細胞構造の内部においては、動物細胞や植物細胞といった通常の真核生物における細胞構造と同様に、
ミトコンドリアやゴルジ体、リソソームや小胞体といった細胞の内部において特定の機能に特化した構造をもった細胞小器官と呼ばれる
言わば、細胞内における工場群のような組織がまとまって形成されていくことになるのですが、
それに対して、
細菌の細胞構造の内部においては、そうした真菌の細胞構造などにみられるようなミトコンドリアやゴルジ体といった一般的な細胞小器官自体が存在せず、
エネルギーの代謝や細胞内におけるタンパク質などの物質の合成といった様々な細胞活動が細胞内の多様な領域に散在する形で営まれていくことになるのです。
③真菌と細菌における細胞の大きさの違い
そして、このように、
真菌の細胞においては、こうした細胞核や細胞小器官といった様々な領域に分化した複雑な細胞構造が形成されていくことになるのですが、
それに対して、
細菌の細胞においては、そうした真菌の細胞にみられるような複雑な細胞構造は形成されずによりコンパクトで単純な構造が形成されていくことになるので、必然的にそうした細菌における細胞の大きさ自体も小さくなる傾向があると考えられることになります。
具体的には、
一般的な真菌の平均的な大きさは、だいたい2~10マイクロメートル(0.002~0.01mm)であるのに対して、
一般的な細菌の平均的な大きさはだいたい0.5~5マイクロメートル(0.0005~0.005mm)であると考えられるように、
通常の場合、
細菌の細胞サイズよりも真菌の細胞のサイズの方が一回り大きめにできていると考えられることになるのです。
④鞭毛や線毛あるいは細胞外膜といった細胞構造の有無
そして、
こうした真菌と細菌における細胞構造の違いのあり方についてさらに詳しく言及していくとするならば、
多くの細菌においては、真菌においては通常みられない鞭毛や線毛と呼ばれる毛状の運動器官が形成されることになり、そうした器官を用いることによって遊泳に必要な推進力が生み出されているといった点も挙げられることになります。
また、
細菌の種類は大きく分けると、グラム染色と呼ばれる色素による染色のされ方の違いに応じて、
黄色ブドウ球菌や乳酸菌、結核菌や破傷風菌、肺炎球菌や放線菌などに代表されるようなグラム陽性菌と、
大腸菌や酢酸菌、サルモネラ菌やレジオネラ菌、スピロヘータやシアノバクテリアなどに代表されるようなグラム陰性菌とに分類されることになるのですが、
このうちの後者にあたるグラム陰性菌と呼ばれる細菌のグループは、細胞を取り囲む内膜の外側にさらに細胞外膜と呼ばれる構造をもっていて、
細胞膜が内膜と外膜という二重構造によって構成されているといった点も、そうした真菌と細菌における細胞構造の違いの具体例として挙げることができると考えられることになるのです。
⑤細胞内のエネルギー代謝における好気性と嫌気性の違い
また、
こうした真菌と細菌と呼ばれる二つの生物のグループの間には、エネルギーの代謝といった面における特徴の違いも見いだされることになり、
真菌の場合には、動物細胞や植物細胞といった通常の真核生物と同様に、一つ一つの細胞の内部には酸素呼吸によるエネルギー生産の役割を担うミトコンドリアが存在しているので、
そうした真菌に分類される生物は、必然的にすべて酸素呼吸を行う好気性生物に分類されることになります。
そして、
細菌の場合においても、大腸菌や枯草菌、酢酸菌や放線菌、結核菌や肺炎球菌に代表されるような多くの細菌は、酸素呼吸を行う好気性細菌に分類されることになるのですが、
なかには細胞内において真核生物におけるミトコンドリアに相当するような機能を備えていない細菌の種類も存在していて、
そうした一部の細菌の種類は、乳酸菌や破傷風菌、硫黄細菌やクロストリジウムなどのように、酸素呼吸を行わない嫌気性細菌に分類されることになるのです。
・・・
以上のように、
こうした真菌と細菌と呼ばれる二つの生物のグループにおける具体的な特徴の違いについてまとめると、
①カビや酵母やキノコなどが分類される真菌は核膜によって細胞核と細胞質が明確に区分される真核生物であるのに対して、細菌は核膜を持たずに細胞内にむき出しの状態でDNAが存在する原核生物に分類される生物である。
②真菌は細胞内において特定の機能に特化した構造をもつ細胞小器官を数多くもつのに対して、細菌の細胞内にはそうした真菌の細胞にみられるようなミトコンドリアやゴルジ体といった一般的な細胞小器官が存在しない。
③真菌の平均的な大きさがだいたい2~10マイクロメートルくらいであるのに対して、細菌の平均的な大きさはだいたい0.5~5マイクロメートルであるというように、一般的に、細菌の細胞サイズよりも真菌の細胞のサイズの方が一回り大きい。
④細菌の細胞構造においては、真菌の細胞構造においては通常の場合みられない鞭毛や線毛あるいは細胞外膜といった細胞構造が存在する。
⑤すべての真菌は酸素呼吸によってエネルギー代謝を行う好気性生物に分類されるのに対して、細菌の種族は酸素呼吸を行う好気性細菌と酸素呼吸を行わない嫌気性細菌とに分かれる。
という全部で五つの主要な特徴の違いを挙げることができると考えられることになるのです。
・・・
次回記事:細菌感染症と真菌症の違いとは?両者に分類される代表的な感染症の種類とそれぞれの病原体の具体的な特徴
前回記事:2016年のアメリカ食品医薬品局による19種類の化学物質の禁止リストに含まれているすべての薬剤の名称と禁止された具体的な理由
「生物学」のカテゴリーへ