肥満の犯人は?④ダイエットに効果的な間食のタイミングと頻度は?
Wall Street Journalの記事「肥満の犯人、炭酸飲料やジャンクにあらず」の検証の最終回です。
前回までの①日本語版記事の検証、②英語版記事の検証、そして、③科学論文の検証で、
痩せている人ほどお菓子を多く食べているというのは本当か?
という疑問については、一応解決がついたので、
今回はその先の、新たな疑問へと進み、
この論文の調査結果に基づいた、ダイエットのために適した間食のとり方について、考えていきたいと思います。
お菓子を食べる頻度と回数が多いのになぜ痩せているの?
前回までの記事と科学論文の検証で、
この科学論文は、
「痩せている人の方が、太っている人よりも大量のお菓子を食べている」、
ということを言っているわけではなく、
「痩せている人の方が、太っている人よりも、お菓子などの間食をとる頻度・回数が多い」、
ということを言っている、ということが分かりました。
しかし、そうすると、今度は、新たな疑問として、
一回の間食で食べるお菓子の量が同じだとすると、
間食を食べる頻度が高ければ、食べるお菓子の量もどんどん増えていく、
ということになりますが、
だとすれば、結局、
痩せている人の方が、頻度だけでなく、量としても、多くのお菓子を食べている、
ということになり、
元の記事の主張に戻ってしまうようにも思えるが、どうなのだろう?
という疑問がでてきます。
当然、この論文の著者も、そうした問題には気づいていて、
先ほどの”Discussion“(議論・考察)の部分のさらに先の、終わりの部分で、
以下のように書いています。
“One alternative explanation is that while frequency does not differ, amount consumed per episode may be higher among those with greater BMI—an explanation that deserves examination in future research. “
(一つの説明として、(痩せている人と太っている人とで)甘いお菓子の摂取頻度は変わらない一方で、一回の間食ごとの甘いお菓子の消費量は、より大きなBMIグループの方が多くなるかもしれないということが考えられます。こうした説明は、将来の研究において検討されることになるでしょう。)
(※ただし、丸カッコ内は拙訳)
つまり、
確かに、痩せている人の方がお菓子などの間食の回数は多いが、
その分、分散して少量ずつとるようになっていて、
トータルとしてのお菓子を食べる量は、同じくらいか、むしろ太っている人よりも少ない量になっているかもしれない、
ということです。
これまでの日本語版の記事と英文記事、さらにその元となった科学論文の検証結果をまとまると、
以下のような理解がこの科学論文についての正しい理解になると思います。
①世間一般のイメージでは、太っている人はいつも甘いお菓子やスナック菓子を食べていて、頻度や回数としても、間食を多くとっていると思われている。
②しかし、今回の調査研究の結果、
実際は、痩せている人の方が、頻度や回数としては、太っている人よりも多く間食をとっているということが新たに分かった。
③この結果から、甘いお菓子やスナック菓子などの間食の習慣と肥満との関係は、世間一般のイメージほど関連性が強くないこと、
そして、痩せている人は、
間食の頻度や回数が多くても、その分、分散して少量ずつとるようになっていて、
間食を食べている量はトータルとしてはむしろ少なくなっているかもしれないこと、などが推測される、
ということです。
間食は分散食とまとめ食のどちらがダイエットに効果的なの?
そして、この結論と推測からは、
次の2つの可能性が示唆されることになります。
① 一つは、栄養学的な面から考えて、
間食を分散して数回に分けてとることによって、まとめて一気に食べた場合と比べて、
膵臓からのインシュリンの過度な分泌が抑えられ、脂肪としての蓄積もゆるやかになることによって、
トータルとして同じ量か、それよりわずかに多めの摂食量になったとしても、
分散して食べた方が、肥満につながるリスクを抑えられる、という可能性。
② そして、もう一つは、心理的な面から考えて、
間食をまとめてとる場合には、
それまでの空腹感と欲求の過度な抑制から一気に解き放たれることによって、
歯止めが効かずに、一気に多く食べ過ぎてしまいがちなのに対して、
分散して食べた場合は、そこまで飢餓感や抑圧された欲求も強くないので、
必要以上に間食を多くとるリスクが減り、結果として、
トータルとしての間食の量を比較的少なく抑えることができる傾向がある、という可能性です。
最近では、肥満を防ぐための食事の頻度・タイミングについて、
一日トータルで同じ量を食べる場合、
3食に分けて食べた方が、1食にまとめてドカ食いするよりも、
食べた分が脂肪になりにくく、
膵臓にも一気に負担がかかりにくくなり、健康的、
とする説が多いようですが、
この科学論文に基づくと、間食についても、
食べたいのを我慢して、後でまとめて一気に食べてしまうより、
日々の生活のなかで、小腹がすいたときに、少量ずつ数回に分けて食べた方が、
ダイエットに効果的、
ということになります。
通常の食事だけでなく、間食についても、
数回に分けて食べる分散食の方が、
ダイエットにも健康にも効果的、ということです。
間食をとる具体的なタイミングと頻度は?
分散させて間食をとる具体的なタイミングについては、
「間食」という言葉の通り、
朝食と昼食の間、または、昼食と夕食の間に、
お腹がすいていると感じたら、とるようにすればいいでしょう。
より具体的には、
午前中なら午前10時前後、午後なら3時から4時くらい、といったところになるでしょうか。
また、夕食後の間食については、
夜食は、ダイエットにも健康面でもマイナスが大きいので、やはり、間食をとるタイミングとしては、なるべく避けた方がいいでしょう。
理想は、間食の内容も、
ナッツ類や果物など、肥満につながるリスクが低く、健康にもよい食品にした方がいい、
ということになりますが、
そこまでできなくても、
お腹がすいた時にとる少量の間食の内容を、前もって決めておいて、
1回の間食で食べる分のお菓子を、あらかじめビニール袋などに小分けにして入れておくようにすると、
1回に食べる間食の量を確実にコントロールできて、より効果的かもしれません。
せっかく、ダイエットのために頑張って、
平日はずっとストイックに間食を我慢し続けても、
その分のストレスの反動で、休日、家にいるときに、
ポテトチップスの大袋やドーナツのパックを1人であけてしまい、一気食いしてしまう、
というようなことになると、
元の木阿弥どころか、大幅なマイナスとなってしまい、
無理なダイエットとリバウンドを繰り返し、肥満へ一直線、
という最悪のパターンに陥ってしまいます。
そうならないためには、
間食についても、
間食自体は無理に我慢せずに、毎日の生活の中に分散して組み入れ、
間食の回数を制限するのではなく、一回の間食の量の方をコントロールする方が、
肥満防止により効果的ですし、
栄養学的な面からも心理的な面からも、
より健康的でリスクが低いということになります。
最後に
いずれにせよ、この研究論文に基づいたうえで、はっきり言えることは、
ダイエットのために間食の回数を制限するのは、
おそらく効果がないか、むしろ逆効果になる可能性すらある、ということです。
なぜならば、
この論文の研究データが正しいとするならば、
痩せている人の方が、間食の頻度・回数は多く、
太っている人の方が、間食の回数自体は少ないからです。
ちなみに、
そもそも、この研究データ自体にどれほどの信憑性があるのか、ということについでですが、
この科学論文が基づくデータとなっている調査研究は、
18歳以上の成人男女5000人に対して行われた調査研究なので、
調査研究の規模の大きさとしても、
この手の栄養学・ダイエット効果の研究データとしては、ある程度信頼性が高いと考えられます。
以上が、記事のおおもとの科学論文までさかのぼって検証して考えた、
今回の、間食に関するダイエット考の結論です。
<出典>
The Wall Street Journal.の日本語版の記事
:「肥満の犯人、炭酸飲料やジャンクにあらず」
The Wall Street Journal.の英語版の記事
:”Soda and junk foods are not making you fat, study says“:
記事の元になった科学論文
:” Fast Food, Soft Drink, and Candy Intake is Unrelated to Body Mass Index for 95% of American Adults“