肥満の犯人は炭酸飲料やジャンクにあらずって本当?③科学論文の検証

Wall Street Journalの記事「肥満の犯人、炭酸飲料やジャンクにあらず」の検証の第3回目です。

前回の英語版記事の検証につづいて、
今回はいよいよ、記事の元になった科学論文を読んだうえで、その内容について検証していきたいと思います。

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“Methods”(調査・研究の方法)を検証してみると?

問題の記事の英語版の方に、記事の元になった科学論文へのリンクが貼ってあったので、
さっそくそのリンクへ飛んで、その論文に一通り目を通してみました。

論文としては短めの方とはいえ、
一応れっきとした科学論文ということもあり、

関連する部分を全部引用すると膨大な量になってしまうので、
全体の引用については割愛しますが、

記事の内容の真偽を検証するポイントとなりそうなことが、

論文中の”Methods“(調査・研究の方法)のところに書かれていました。

その部分を以下に引用しておきます。

ただし、丸カッコ内は拙訳です。

“We compare average eating episodes within food and across BMI categories.
(私たちは、各食品についての平均的な食事体験を、BMIの分類ごとに比較しました。)

We focus on eating episode rather than amount eaten because the authors believe it is less subject to recall bias.
(私たちは、食品摂取量よりも食事体験に注目して調査を行いました。なぜならば、この論文の筆者たちは、その方が、想起バイアスによる偏見・先入観の影響を受けにくいと考えたからです。)

We do not analyse total quantity of these foods, one limitation of this study.”
(私たちは、食品の総摂取量を分析するわけではありません。それがこの研究の前提条件です。)”

つまり、この論文の研究調査では、

実は、一日の間食で摂る食品摂取量の総量ではなく、

一日にその種類の食品を食べる回数(eating episodes、食事エピソード)の多寡を比べていた、ということです。

“Discussion”(議論・考察)を検証してみると?

さらに、以下に引用した、”Discussion”(議論・考察)のところを読むと、
この論文の言わんとしているところが、よりはっきりわかってくると思います。

“To lose weight, patients are commonly told to reduce or eliminate the frequency of their intake of indulgent foods, such as fast food, soft drinks and candy.
(体重を減らすために、患者は通常、ファストフードやソフトドリンク、キャンディーなどの甘いものを摂取する頻度を減らすか、全く摂取しないようにするよう指示されています。)

Interestingly, for the majority of patients … there was no relationship between the frequency they eat of these foods and their BMI in this sample.…”
(しかし、興味深いことに、このサンプルケースでは、大多数の患者にとって、そうした甘いお菓子の摂取頻度と患者のBMIの関係との間に関連性が全く見られなかったのです。)

ただし、丸カッコ内は拙訳)

キーワードとなる単語は”frequency(頻度)”です。

この論文では、被験者が、間食でどのくらいののお菓子を食べているかではなく、どのくらいの頻度でお菓子を食べているのかを調べていて、

その研究調査の結果、

痩せている人の方が、太っている人よりも高い頻度でお菓子を食べている」、

ということが新たに分かった、ということが、ことの真相ということです。

つまり、

痩せている人の方が、太っている人よりも大量のお菓子を食べている」、

というわけでは必ずしもなく、

痩せている人の方が、太っている人よりもお菓子などの間食をとる回数が多い」、

というのが、より正確にこの論文の内容に即した記述になると思います。

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お菓子を食べる量ではなく頻度を比べていたってこと?

英文記事についても、それを翻訳した日本語版の記事においても、

この”frequency(頻度)”という表現が、記事の内容から抜け落ちてしまった

ということが問題であり、
誤解を生むもとになったと言えるでしょう。

日本語版の記事の内容をまとめると、

「痩せている人ほどお菓子を多く食べていて、太っている人ほどお菓子を食べる量が少ない」

ということでしたが、これに”frequency(頻度)”という単語を補って、

痩せている人ほどお菓子を食べる頻度は高く、太っている人ほどお菓子を食べる頻度は少ない

という表現なら、

より論文の内容に即した、正しい表現になり、
誤解を生む可能性も少なくなるというわけです。

つまり、この科学論文は、

間食を食べる量と肥満の関係を調べた論文ではなく、

むしろ、

間食を食べる頻度・タイミング肥満の関係を調べた論文だったということです。

<出典>

記事の元になった科学論文:
Fast Food, Soft Drink, and Candy Intake is Unrelated to Body Mass Index for 95% of American Adults“:

次回は?

今回までの検証で、記事に関する疑問については一応、解決しましたが、
それでは、痩せている人は、お菓子を食べる頻度が高いのに、どうして痩せたままでいられるのでしょうか?

次回の「肥満の犯人は?④ダイエットに効果的な間食のタイミングと頻度は?」では、この新たな疑問に答えていく中で、
科学論文の研究調査に基づいたダイエットに効果的な間食のとり方、について考えてみたいと思います。

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