宇宙の果ては存在するのか?①情報伝達における現実的なの宇宙の果てとしての宇宙の地平面および事象の地平面の定義
前回までの一連の記事で考察してきたように、
現代の宇宙論においては、観測可能な現在の宇宙の内部においては、宇宙の中心となるような特別な位置や場所はどこにも存在しないと結論づけられている以上、
そうした宇宙の中心に対応する宇宙の端すなわち宇宙の果てと呼ばれる部分についても、それを宇宙の内部の特定の地点を占める実在的な場所として位置づけることはできないと考えられることになります。
しかし、その一方で、
そうした宇宙についての観測上の限界地点となる境界領域のことを観測上の宇宙の果て、すなわち、見かけ上の宇宙の果てと呼ぶことができるとするならば、
そうした見かけ上の宇宙の果てとしての宇宙の端となる領域は、現在の宇宙観測においても、確かに観測されることになると考えられることになります。
宇宙における情報伝達の限界地点としての「事象の地平面」の定義
現代における一般的な宇宙論においては、
現在の宇宙の構造は、宇宙誕生の大爆発であるビッグバン以降、天体の間に存在する宇宙空間自体が加速度的に膨張し続けていく膨張宇宙論によって説明されることになりますが、
そうした常に空間が膨張し続けていく宇宙においては、
互いに極めて遠方に位置する二つの天体同士の間において、一方の天体から発せられた光がもう一方への天体へと到達するまでの間に、光の速度を超える割合でそうした両者の天体の間の空間が膨張していってしまう場合、
そうした極めて遠方にある天体から発せられた光は、いつまでたってももう一方の天体にいる観測者へと届くことがないという事態が生じてしまうことになると考えられることになります。
そして、
現代の宇宙物理学においては、こうした宇宙の内部における二つの観測地点の間で、光の伝達などを介したあらゆる伝達手段が断絶してしまうことによって生じる情報伝達の限界地点となる境界面のことを指して、
それが情報伝達すなわち出来事や事象の伝達の限界地点を指し示す境界面であるといった意味で事象の地平面(event horizon、イベント・ホライゾン)という用語が用いられるか、
または、
それが単に宇宙の観測における主観的な限界地点となる境界面を指し示しているという意味において、宇宙の地平面(cosmic horizon、コズミック・ホライゾン)といった言葉が用いられることになるのです。
情報伝達における現実的な宇宙の果てとしての「宇宙の地平面」の位置づけ
それでは、
こうした事象の地平面または宇宙の地平面と呼ばれる境界面の領域は、現代の宇宙物理学に基づく実際の宇宙観測においては、具体的にどのような地点に見いだされることになるのか?ということについてですが、
それについては、膨張宇宙論に基づく宇宙空間自体の膨張のあり方のほかにも、銀河系同士の相対的な運動のあり方なども加味されることになるため、観測される個別の宇宙の領域の違いによってある程度のばらつきはあるものの、
だいたい地球からの距離にして100~200億光年程度の地点に位置している銀河群がこうした宇宙の地平線と呼ばれる境界面に位置しているということが具体的な観測結果によってすでに明らかになっていると考えられることになります。
そして、
こうしたビックバン理論やインフレーション理論に基づく現代の主流派の膨張宇宙論が示唆しているように、
この宇宙が現在のペースで、あるいは今よりもさらに急速なペースでそのまま加速度的に膨張をし続けていくとするならば、
そうした宇宙の地平面と呼ばれる境界領域をひとたび越えて、それよりもさらに遠くへと去って行ってしまった天体については、
それ以降、宇宙の終焉へと至るまで、両者の間ではいかなる因果関係も成立しないと考えられることになります。
そして、このように、
宇宙の地平線を越えて離れ離れになってしまった二つの観測地点の間には、それ以降、いかなる意味での交流も観測も成立しえないという完全なる断絶状態へと至ってしまうという点において、
こうした宇宙の地平線または事象の地平面と呼ばれる地球上から観測される宇宙の境界面の領域は、
観測可能な現在の宇宙における情報伝達の面における現実的な宇宙の果てとして位置づけられることになると考えられることになるのです。
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次回記事:宇宙の果ては存在するのか?②見かけ上の宇宙の果てとしての「宇宙光の地平面」に囲まれた観測可能な宇宙の全領域
前回記事:宇宙に中心が存在しない理由とは?③すべての地点は宇宙の端であると同時に宇宙の中心でもある
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