自我リビドーと対象リビドーの違いとは?③内向的性格と外交的性格の分類とリビドーの方向性との関係
前回書いたように、フロイトの心理学理論においては、リビドー(libido)と呼ばれる人間の心の奥底に存在する根源的な心的エネルギーのことを意味する心理学上の概念は、
自我リビドーと対象リビドーと呼ばれる二つの方向性を持った心的エネルギーのあり方へと分類されたうえで、
そうした二つのリビドーの種類の両者がエネルギー保存の法則が適用される物理的エネルギーと同様の性質を持った量的な概念として捉えられることによって、
自我リビドーと対象リビドーのうちの一方の心的エネルギーが増大すればその分もう一方の心的エネルギーが減少するというという相関関係が成立するということが明らかにされていくことになります。
そして、
こうした自我リビドーと対象リビドーとの間に成立する対称的な相関関係のあり方からは、一人一人の人間における人格形成のあり方とも深い関わりのある構造を見いだしていくことができると考えられることになるのです。
内向的性格と外交的性格の分類とリビドーの方向性との関係とは?
冒頭でも述べたように、自我リビドーと対象リビドーの両者は、
一方へと割り当てられるのエネルギー量が大きくなっていくと、その分もう一方へと割り当てられるエネルギー量が不足していってしまうという関係にあると考えられることになるわけですが、
そうすると、
一人の人間において、その人が自らの心の内面へとエネルギーを向ける自我リビドーの割り当てが多くなればなるほど、それに伴って、その人が自らの外に存在する人間関係や社会の方向へとエネルギーを向ける対象リビドーの割り当てが少なくなっていくことになるので、
そうした自我リビドーの量が大きくなる傾向にある人の人格は、必然的に自らの外に存在する他者や社会との関係に対して振り分けられる対象リビドーの量が不足しがちになることによって、
内省的で思慮深い傾向がある反面、社交性や実行力には乏しいところのある内向的な性格のあり方へと変化していくことになると考えられることになります。
そして、それに対して、
対象リビドーの量が大きくなる傾向にある人の人格は、必然的に自らの心の内面へと向けられる自我リビドーの量が不足しがちになると考えられることになるので、それに伴って、
社交的で行動的な傾向がある反面、自己の内面に対する反省や思慮深さには欠けがちなところのある外向的な性格のあり方へと変化していくことになると考えられることになるのです。
自我リビドーと対象リビドーの相関的なバランス関係に基づいて形成される個人における人格と個性の形成
より具体的な例を挙げて説明するとするならば、例えば、
作家や学者、芸術家といった人々が自らの心の内にある思想や理論、イメージといったものを作品として書き表したり表現したりしようとしてその作業に没頭している時には、
一人で自分の部屋や作業場などに閉じこもりがちになって、いつもよりもさらに気難しく、周りの人々を寄せ付けないないような態度をとるケースが多く見られることになりますが、
こうした現象についても、それは、もともと自らの心の内なる世界を表現するという自我リビドーの働きを原動力とする仕事についている人々が、
その仕事に没頭することによって、さらに自我リビドーの量が増大していき、それに伴って、必然的に他者や社会における人間関係へと振り分けられる対象リビドーの量が著しく減少していってしまうことによって生じる現象として説明することができると考えられることになるのです。
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以上のように、
こうした自我リビドーと対象リビドーと呼ばれる二つの心的エネルギーの方向性のあり方は、それらのリビドーと呼ばれる根源的な心的エネルギーの概念が物理的エネルギーにも類する量的な概念として捉えられていくことによって、
内向的性格と外交的性格といった個人における人格形成のあり方を説明する原理へもつながっていくことになると考えられることになるのですが、
いずれにせよ、
フロイトの心理学においては、一人一人の人間における人格や個性といった心のあり方は、リビドーと呼ばれる人間の心の根底に存在する根源的な心的エネルギーのレベルにおいては、
こうした自我リビドーと対象リビドーと呼ばれる二つの心的エネルギーの間の相関的なバランス関係に基づいて形成されていく心のあり方として捉えられていくことになるとことになると考えられることになるのです。
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次回記事:防衛機制とは何か?①無意識の衝動や感情を統制するバックグラウンドシステムとしての自我の無意識的な働きに基づく心理的な防衛機能
前回記事:自我リビドーと対象リビドーの違いとは?②エネルギー保存の法則の心的エネルギーへの適用と両者の間に成立する対称的な相関関係
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