永遠人とは何か?アシモフの『永遠の終り』において語られる無限の時間軸を包む空虚な永遠の世界を手に入れた人々の姿

前回の記事で書いたように、アイザック・アシモフの「銀河帝国興亡史」シリーズの集大成として位置づけられる1982年に発表されたSF小説である『ファウンデーションの彼方へ』(Foundation’s Edge)の後半部分においては、

惑星全体の集合意識であるガイアにおいて語り伝えられてきたとされる一つの寓話のなかで、

無数に存在する可能的な宇宙のうちから、銀河系の内に人類しか知的生命体が存在しない現在の宇宙のあり方を創り上げた人々であるとされる「永遠人」と呼ばれる人々についての話が語られていくことになるのですが、

こうした「永遠人」と呼ばれる人々についてのより詳細な物語が語られている作品としては、

『ファウンデーションの彼方へ』の出版にさかのぼること27年前に、アシモフ自身の手によってすでに書き上げられていた1955年発表のSF小説である『永遠の終り』The End of Eternityという本の題名が挙げられることになります。

それでは、

こうした『永遠の終り』において語られている「永遠人」と呼ばれる人々とは、具体的にどのような役割を持った人々として位置づけられていて、彼らの人生のあり方とは具体的にどのようなものであったと考えられることになるのでしょうか?

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『永遠の終り』において語られる「永遠人」の姿とは?

アイザック・アシモフの「銀河帝国興亡史」シリーズからのスピンオフ的な作品として位置づけられるタイムトラベルを題材とした『永遠の終り』という題名のSF小説においては、

現実世界における時間の流れから隔絶された「時場」と呼ばれる特殊な空間のうちから現実世界における人類の歴史の流れを見守り

その流れが、世界大戦といった破滅的な終局へと向かうことがないように常に注意深く監視ながら、人類にとっての最大多数の最大幸福を満たす世界が実現するように修正を加えていくという役割を担った

「永遠人」(エターナル)と呼ばれる人々の物語が語られていくことになります。

そして、そもそも、

こうした永遠人たちが住んでいる現実世界における時間の流れを統括している機関が、「永遠」(エターニティ)という名前で呼ばれている理由については、

以下のような形でその言葉の由来となる話が語られる場面が出てくることになります。

・・・

「…<永遠(エターニティ)>は何百世紀にもわたってずっと存続している。あらゆる生物が死に絶えるまで、そして死に絶えたのちも、太陽が一個の新星になるまで、そしてそののちも。

<永遠(エターニティ)>にはいかなる終わりもないのだ。<永遠>と呼ばれるゆえんだよ。」

(アイザック・アシモフ著、深町真理子訳『永遠の終り』、ハヤカワ文庫、60ページ。)

・・・

そして、

こうした「永遠人」と呼ばれる人々は、より具体的には、

場発生器(フィールド・ジェネレータ)と呼ばれる時場を生み出して現実世界における時間の流れから対象を隔離するための装置や、

 ケトルと呼ばれる時間軸上を移動するための乗り物などを駆使することによって、現実世界における時間の流れへと干渉し、

「現実矯正」と呼ばれる修正行為を行うことによって、時間の流れのうちにおける現実を、人類にとってより良い現実であると判断される形へと常に修正していくことになるのです。

また、この物語のなかでは、

こうした永遠人たちが営んでいる実際の生活や、彼らの人生のあり方についても詳しく語られていて、

そこでは、例えば、

この物語の主人公であるハーランが自らの半生を思い返していく回想シーンにおいて、以下のような形で永遠人(エターナル)と呼ばれる人々がたどる人生の道筋が語られていくことになります。

・・・

彼は<永遠人(エターナル)>の生涯の四段階を忠実にたどってきた。最初はまず、<永遠人>でもなんでもない、ただの<時間(タイム)>の住人としての十五年間があった。

<時間>の出身者、つまり<時間人(タイマー)>だけが、<永遠人(エターナル)>になる資格を持っている。だれも最初から<永遠人(エターナル)>として生まれつくことはできないのだ。

(中略)

<永遠(エターニティ)>に入った彼は、研修生として十年を学校で過ごし、やがてそこを卒業して、観察士として第三段階に足を踏み入れた

これだけの過程を経て、やっと一人前の<専門員(スペシャリスト)>に、そして、真の<永遠人(エターナル)>になれるのだ。これが<永遠人>の生涯の第四の、そして最後の段階である。

つまり、時間人(タイマー)研修生(カブ)観察士(オブザーバー)専門員(スペシャリスト)となるわけだ。

(アイザック・アシモフ著『永遠の終り』、28~29ページ。)

・・・

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無限の時間軸を包み込む空虚な永遠の世界を手に入れた人々の姿

以上のように、

アイザック・アシモフの「銀河帝国興亡史」シリーズからのスピンオフ的な作品として位置づけられる『永遠の終り』と題されるSF小説のなかでは、

永遠人(エターナル)と呼ばれる人々は、

時場と呼ばれる現実における時間の流れから隔絶された世界から、現実世界における時間の流れへと干渉していくことによって、

現実における歴史の流れを、人類にとっての最大多数の最大幸福を満たすより優れた現実の形へと修正していくという使命を担った存在として位置づけられていると考えられることになります。

そして、そこでは、

現実世界におけるすべての生物、すべての星々までもが滅び去り、空虚な暗黒の空間が残されるだけとなった宇宙の終極の姿のさらに先にまで延々と果てしなく続いていく無限の時間軸のすべてを包み込む空虚な永遠の世界を手に入れた人々の物語として、

こうした永遠人(エターナル)と呼ばれる人々の姿が描かれていると考えられることになるのです。

・・・

次回記事:アシモフの『永遠の終り』における永遠人のジレンマ、最大多数の最大幸福の追求がもたらした種族としての人類の滅亡

前回記事:シモフの銀河帝国興亡史において人類しか知的生命体が登場しない理由とは?③「永遠人」たちの意志の力で選び取られた宇宙

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