メタとは何か?古代ギリシア語におけるmetaの多様な意味とそれぞれの意味で「メタ」という語が使われている英単語の例
「メタ」(meta)という言葉は、その大本の語源は、古代ギリシア語の単語の内に起源が求められる概念であり、
それは、メタ言語やメタ批判、あるいは、メタフィジックス(形而上学)やメタモルフォーゼ(変形)といった言葉、
さらには、内臓脂肪型の肥満に高血糖や高血圧、脂質異常といった症状が組み合わさった状態のことを意味するメタボリック・シンドロームといった概念の内にも含まれている極めて多義的な意味を持つ言葉であると考えられることになります。
こうした「メタ」(meta)という言葉は、もともとの語源である古代ギリシア語においては、具体的にどのような意味をもった言葉であったと考えられることになり、
そうしたギリシア語の単語から派生した、英語の接頭辞としてのmeta-が使われている英単語においては、具体的にどのような形で意味の構成がなされていると考えられることになるのでしょうか?
「後」「超越」「変化」といった古代ギリシア語のmetaの多様な意味
「メタ」という言葉は、もともと古代ギリシア語において、前置詞または接頭辞として用いられていたmeta(メタ)という単語に由来する言葉であり、
古代ギリシア語の原義において、meta(メタ)という単語は、
「~の後に」「~の横に」「~と共に」「~の間に」「~を超える」「~と隣接する」「~自身の」といった多様な意味を持つ言葉であった考えられることになります。
そして、そこからのちに、
meta(メタ)という言葉が表す意味としては、「変化」といった意味も派生してくることになるのですが、
結局、「変化」とは物事が以前の状態から、後の状態へと移行していくことを示す概念であると考えられることになるので、
meta(メタ)という言葉のもともとの原義における「~の後」といった意味から、物事の変化のことを表すこうした派生的な意味も生じていくことになったと考えられることになるのです。
「後に」「変化して」という意味で「メタ」が使われている英単語の例
そして、
こうした「メタ」という言葉は、古代ギリシア語における前置詞・接頭辞としてのmeta(メタ)から派生していく形で、
英語やフランス語、ドイツ語といったヨーロッパ各国の言語においても、同じmetaというつづりで用いられていくことになるのですが、
英語においては、多くの場合、「~の後に」「変化して」といった意味でmeta-(メタ)という接頭辞が用いられていくことになります。
例えば、英語で、
metamorphose(メタモルフォーゼ)といえば、それは、morph=「形・形態」がmeta=「変化」していくあり様、すなわち、変形や変身のことを意味する言葉ということになりますし、
metaphrase(メタフレーズ)といえば、それは文字通り、phrase=「文・言葉遣い」がmeta=「変化」していくあり様、すなわち、「翻訳」や、言い回しの変化を意味する言葉ということになります。
他にも、例えば、医学用語などを例に挙げるとするならば、
冒頭でも例に挙げたメタボリック・シンドローム(metabolic syndrome)という言葉の場合、
この言葉は、もともと、「(新陳)代謝の」を意味する単語であるmetabolic と、「症候群・病理現象」を意味する単語であるsyndromeが結びつけられる形でつくられた造語であり、
人体における代謝とは、生体内で物質が次々と化学的に変化したり、エネルギーへと変換されたりしていく現象のことを意味するので、
こうしたメタボリック(metabolic)という言葉も、「変化」を意味する英語の接頭辞であるmeta(メタ)から派生してできた言葉であると考えられることになります。
ちなみに、
他にも医学用語の中でmeta(メタ)という語が用いられている例としては、例えば、metastasis(メタスタシス)という単語が挙げられることになりますが、
この単語は、正常な細胞における均衡状態(stasis、スタシス)が崩壊し、異常細胞へと変化していってしまう過程のことを意味することになるので、
それは、すなわち、ガンなどの疾患における腫瘍細胞の「転移」のことを意味する医学用語ということになります。
「超越した」「高次の」という意味で「メタ」が使われている英単語の例
一方、英語において「メタ」という語が用いられているケースには、上述した「~の後に」「変化して」といった意味の他に、
「~を超えた」「~より高次の」といった意味でmeta(メタ)という接頭辞が用いられているケースもあり、こうした意味における英単語の例としては、
例えば、
metalanguage(メタランゲージ)、すなわち、メタ言語といえば、それは、英語や日本語といった特定の言語を分析・説明するために用いられる文法用語などのより高次な言語や記号のことを意味することになりますし、
metacritique(メタクリティーク)、すなわち、メタ批判といえば、それは個々の主題を吟味・検討する作業である批判という作業自体のあり方やその方法論を吟味・検討する作業のことを意味することになり、
それはすなわち、批判の批判としての高次の批判ことを意味することになります。
他にも、「メタ」という語が用いられている主要な単語の例としては、
メタフィジックス(metaphysics、形而上学)という単語も挙げられることになり、この言葉の由来とその詳しい意味と解釈のあり方については少し入り組んだ議論があるので、それについては、また次回以降の記事で改めて考察していくことにしますが、
この言葉は、一言でいうと、「自然学の後に位置づけられる学問」あるいは、自然学においては取り扱うことのできない「自然を超越する対象を探求する学問」といった意味を表す概念として捉えられることになります。
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以上のように、
「メタ」(meta)という言葉は、もともと、古代ギリシア語の原義においては「~の後に」「超越した」「変化して」といった三つの意味に代表されるような多様な意味を持つ言葉であり、
こうしたギリシア語の単語から派生した英語の接頭辞であるmeta-(メタ)という単語が用いられている具体的な英単語の例としては、
変形や変身のことを意味するmetamorphose(メタモルフォーゼ)、
翻訳や言い回しの変化を意味するmetaphrase(メタフレーズ)、
「(新陳)代謝の」を意味するmetabolic(メタボリック)
ガンなどの疾患における「転移」のことを意味するmetastasis(メタスタシス)
他にも、
言語分析に用いられるより高次な言語のことを意味するmetalanguage(メタランゲージ、メタ言語)や、批判の批判としての高次の批判ことをを意味するmetacritique(メタクリティーク、メタ批判)、
さらには、形而上学のことを意味するmetaphysics(メタフィジックス)
といった様々な単語が挙げられることになります。
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次回記事:形而上学とは何か?①『易経』「繋辞上伝」における形而上と形而下の定義とその具体的な意味の解釈
関連記事:形而上学とは何か?②古代ギリシア語におけるメタピュシカの意味と文法的解釈
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