ノンエンベロープウイルスの具体的な特徴と代表的な種類とは?小さな球形のウイルスと細長い棒状のタバコモザイクウイルス
前回の記事でも書いたように、ウイルスはその本体となるウイルス粒子の構造や形態という観点からは、
エンベロープと呼ばれる膜構造を持つエンベロープウイルスとそうした膜構造を持たないノンエンベロープウイルスと呼ばれる二つのグループへと分けられることになり、
インフルエンザウイルスやコロナウイルス、HIVウイルスやエボラウイルスなどのように人間に対して病原性を示すウイルスは、どちらかというとは前者のエンベロープウイルスに分類されるウイルスの方が多いと考えられることになります。
それでは、それに対して、
後者のノンエンベロープウイルスは具体的にどのような特徴を持つウイルスのグループであると考えられ、そうしたノンエンベロープウイルスに分類される代表的なウイルスの種類としてはどのようなウイルスが挙げられることになるのでしょうか?
ノンエンベロープウイルスの具体的な特徴と一般的な消毒薬への耐性
そうすると、まず、
ノンエンベロープウイルスと呼ばれるウイルスは、エンベロープと呼ばれる細胞の生体膜に由来するリン脂質とタンパク質によって構成される膜構造を持たず、
カプシドと呼ばれるウイルスの表面にあるタンパク質の殻がむき出しの状態になった比較的単純な粒子構造をしていると考えられることになります。
しかし、
こうしたノンエンベロープウイルスと呼ばれるウイルスは、構造が単純である分、外界にいる時にはかえって消毒や不活化させることが難しいと考えられ、
エンベロープウイルスの場合と異なり、そうしたエンベロープと呼ばれる脂質膜の弱点にあたる界面活性剤やエタノールなどといった一般的な消毒薬に対する耐性が強いウイルスが多く、
具体的な薬品としては、キッチンハイターなどの塩素系漂白剤などに使われている次亜塩素酸ナトリウムといった比較的特殊な薬剤などを用いなければ容易に破壊することができないと考えられることになるのです。
アデノウイルスやノロウイルスなどの小型の球形の形状をしたノンエンベロープウイルスと細長い棒状のタバコモザイクウイルス
それでは、
こうしたノンエンベロープウイルスと呼ばれるウイルスのグループには、具体的にどのような種類のウイルスが分類されることになるのかといういと、
人間に対して病原性を示すノンエンベロープウイルスの代表的な種類としては、
風邪や咽頭炎の原因となるアデノウイルスや、胃腸炎や食中毒の原因となるノロウイルスやロタウイルス、子宮頸がんの原因となるヒトパピローマウイルスやA型肝炎ウイルスなどのウイルスの種類が挙げられることになります。
そして、
こうしたノンエンベロープウイルスと呼ばれるウイルスは、前述したようにエンベロープと呼ばれる複雑な形状をとることもある膜構造を持たないため、
大部分のノンエンベロープウイルスは、正20面体の構造をしたタンパク質の殻にあたるカプシドがむき出しになった全体としては単純な球形の形状をしていることが多いと考えられることになります。
また、
ウイルスの大きさ自体も、直径100ナノメートルほどの球形のエンベロープウイルスにあたるインフルエンザウイルスやコロナウイルス、
さらには、天然痘ウイルスなどのように全長200~300nmにもおよぶ大型のウイルスも存在するエンベロープウイルスと比べて、比較的小型のウイルスが多いと考えられ、
具体的には、前述したウイルスの例でいうと、
アデノウイルスの場合は直径80ナノメートル、ロタウイルスの場合は直径70ナノメートル、ノロウイルスにいたってはさらに小さく直径30ナノメートルほどの球形の形状をしていると考えられることになります。
しかし、その一方で、
こうしたノンエンベロープウイルスと呼ばれるウイルスのなかにも、球形の形状をとらないウイルスの種類もわずかながら存在していて、
例えば、
タバコなどの葉にモザイク状の斑点をつくり葉の成長を悪くする植物の感染症であるタバコモザイク病の原因となるタバコモザイクウイルスなどは、
長さは300 ナノメートルほどで直径は18 nmほどの細長い棒状の形状をしたエンベロープを持たないウイルスとして位置づけられることになるのです。
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そして、以上のように、
こうしたノンエンベロープウイルスと呼ばれるウイルスの具体的な特徴と、ノンエンベロープウイルスに含まれる代表的なウイルスの種類について、
一言でまとめると、
ノンエンベロープウイルスは、エンベロープと呼ばれる膜構造を持たずに、タンパク質の殻にあたるカプシドがむき出しになった単純な構造をしたウイルスのグループにあたり、
アデノウイルスやノロウイルス、ロタウイルスやヒトパピローマウイルス、A型肝炎ウイルスなどのように、大部分のノンエンベロープウイルスは比較的小さな球形の形状をしているものの、
タバコモザイクウイルスなどのように、一部のノンエンベロープウイルスのなかには、細長い棒状の形状をしたウイルスの種類も存在すると考えられることになるのです。
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次回記事:エンベロープウイルスとノンエンベロープウイルスはどちらの方がより危険で強力なのか?外界での生存力と病原性の高さの違い
前回記事:エンベロープウイルスの代表的な種類とは?球形や卵型、糸状や多形性といった様々な形をしたエンベロープウイルスの種類
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