エンベロープウイルスの代表的な種類とは?球形や卵型、糸状や多形性といった様々な形をしたエンベロープウイルスの種類
前回の記事で書いたように、ウイルスはその本体となるウイルス粒子の構造や形態という観点からは、大きく分けて、
エンベロープと呼ばれる膜構造を持つエンベロープウイルスとそうした膜構造を持たないノンエンベロープウイルスと呼ばれる二つのグループへと分けられることになります。
それでは、このうち前者のエンベロープウイルスには、具体的にどのような形態をしたウイルスの種類が分類されることになるのでしょうか?
インフルエンザウイルスやコロナウイルスなどの球形の形状をエンベロープウイルスと天然痘ウイルスなどの大型のウイルス
そうすると、まず、
エンベロープウイルスに分類されるウイルスの種類のなかで、最も有名なものとしては、冬場に流行するインフルエンザの原因となるインフルエンザウイルスや、咳かぜの原因となるコロナウイルスといったウイルスの種類が挙げられることになります。
こうしたインフルエンザウイルスやコロナウイルスといったウイルスは、だいたい直径100ナノメートル※くらいの球形の形状をしたエンベロープウイルスであり、
そうした球形の形状をしたエンベロープウイルスの種類としては、その他にも、エイズの原因となるHIVウイルスや、ヘルペスウイルスあるいはB型肝炎ウイルスなどといった多くのウイルスの種類が挙げられることになります。
※1ナノメートル=10億分の1メートル
そして、それに対して、
こうしたエンベロープウイルスと呼ばれるウイルスのなかには、ポックスウイルスと呼ばれる全長200~300nmにもおよぶレンガ型あるいは卵形の形状をしたウイルスの種族も含まれていて、
ポックスウイルス科に属する大型のエンベロープウイルスの代表的な種類としては、天然痘ウイルスや牛痘ウイルスなどが挙げられることになるのです。
糸状の形状をしたフィロウイルスと多様な形態をとるパラミクソウイルス
そして、それに対して、
より複雑な形状をしたエンベロープウイルスの種類としては、パラミクソウイルスなどのように通常の球形であることが多いものの周りの状況に応じて多様な形状へと姿を変えていく多形性の形態をとるウイルスの種族もあり、
そうしたパラミクソウイルス科に属する多形性のエンベロープウイルスの代表的な種類としては、麻疹(はしか)の原因となる麻疹ウイルスや、おたふく風邪の原因となるムンプスウイルスなどが挙げられることになります。
そして、その他にも、
フィロウイルスと呼ばれるエンベロープウイルスは、そのウイルスの名前に含まれているフィロ(filo)という言葉自体がラテン語において「糸」や「弦」のことを意味するfilum(フィールム)という名詞に由来する言葉であることからもわかる通り、
非常に細長い糸状またはひも状の形状をしたウイルスの種族として位置づけられることになり、
そうしたフィロウイルス科に属するウイルス糸状の形状をしたエンベロープウイルスの代表的な種類としては、エボラ出血熱の原因となるエボラウイルスや、マールブルグ熱の原因となるマールブルグウイルスなどが挙げられることになるのです。
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そして、以上のように、
こうしたエンベロープウイルスと呼ばれるウイルスのグループに含まれる代表的なウイルスの種類について、ウイルスの形の違いといった観点からまとめて書いていくと、
球形の形状をしたエンベロープウイルスの種類としては、インフルエンザウイルスやコロナウイルス、HIVウイルス、ヘルペスウイルス、B型肝炎ウイルスといったウイルスの種類が挙げられることになり、
レンガ型や卵形の形状をした大型のエンベロープウイルスの種類としては、天然痘ウイルスや牛痘ウイルスといったポックスウイルス科に属するウイルス、
多形性の形態をとるエンベロープウイルスの種類としては、麻疹ウイルスやムンプスウイルスといったパラミクソウイルス科に属するウイルス、
細長い糸状やひも状の形状をしたエンベロープウイルスの種類としては、エボラウイルスやマールブルグウイルスといったフィロウイルス科に属するウイルスの種類などが挙げられることになると考えられることになるのです。
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次回記事:ノンエンベロープウイルスの具体的な特徴と代表的な種類とは?小さな球形のウイルスと細長い棒状のタバコモザイクウイルス
前回記事:エンベロープウイルスの具体的な特徴とウイルス感染の仕組みとは?エンベロープの語源と宿主細胞の生体膜に由来する膜構造
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