エンベロープウイルスの具体的な特徴とウイルス感染の仕組みとは?エンベロープの語源と宿主細胞の生体膜に由来する膜構造
ウイルスは大きく分けて、遺伝子の構造という観点からは、DNAウイルスとRNAウイルスと呼ばれる二つのグループへと分けられることになるのに対して、
ウイルス粒子の構造や形態という観点からは、エンベロープウイルスとノンエンベロープウイルスと呼ばれる二つのグループへと分けられることになります。
それでは、このうち前者のエンベロープウイルスは具体的にどのような特徴を持ったウイルスのグループであり、そうしたエンベロープと呼ばれる構造を用いたウイルス感染の仕組みはどのようなものになっていると考えられるのでしょうか?
エンベロープの語源と宿主細胞の生体膜に由来する膜構造
そうすると、まず、
こうしたエンベロープウイルスあるいはノンエンベロープウイルスという言葉にもちられているエンベロープ(envelope)という言葉は、英語において「封筒」や「覆い」のことを意味する言葉にあたり、
エンベロープウイルスとは、その名の通り、ウイルス粒子の表面が膜状の構造によって包まれている状態にあるウイルスの種類のことを意味することになります。
そして、
こうしたエンベロープウイルスにおいてウイルス粒子の表面を覆っているエンベロープと呼ばれる膜構造は、
もともと、
ウイルスが人間などの細胞の内部で増殖したのち、そうした宿主となる細胞の細胞膜や核膜をかぶったまま外へと飛び出していくことによって獲得される、もともとは、宿主細胞の生体膜に由来する膜構造であると考えられることになるのです。
エンベロープウイルスの弱点と生物の体内におけるウイルス感染を有利に進める仕組み
そして、
こうしたエンベロープと呼ばれる細胞の生体膜に由来するウイルスの膜構造は、熱や乾燥あるいは石けんや合成洗剤などの界面活性剤やエタノールといった薬剤によって容易に破壊されてしまうことになるので、
そうした観点からは、
エンベロープウイルスは、エンベロープと呼ばれる膜構造を持たないノロウイルスなどのノンエンベロープウイルスと比べて、
石けんやエタノールなどの一般的な薬剤による消毒が容易なウイルスの種類として位置づけられることになると考えられることになります。
しかし、その一方で、
こうしたエンベロープウイルスにおけるエンベロープと呼ばれる膜構造は、ウイルスが生物の体内へと侵入していく際に、
宿主となる細胞の細胞膜に融合するとによってウイルスの遺伝子を細胞内に送り込むことを助ける、あるいは、宿主となる生物の側の免疫システムを回避するといった、
生物の体内におけるウイルスの感染と増殖を有利にする様々な働きをすることになると考えられることになるのです。
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次回記事:エンベロープウイルスの代表的な種類とは?球形や卵型、糸状や多形性といった様々な形をしたエンベロープウイルスの種類
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