新型コロナウイルスの年代別の致死率の日本国内における推定、WHOとCCDCの報告に基づく統計データからの推計
2019年12月に中国の武漢市において最初の症例が確認されたのち、日本を含む世界各地へと感染を拡大していくことになった
2019-nCoVと呼ばれる新型コロナウイルスの感染を原因とするCOVID-19と呼ばれる発熱や乾いた咳、呼吸困難や肺炎などを主症状とする急性呼吸器疾患は、
一般的に、高齢者になるほど致死率が高くなるとされていますが、
それでは、日本国内での感染を想定した場合こうした新型コロナウイルスの年代別の致死率の具体的な数値はだいたいどれくらいになると推定することができると考えられることになるのでしょうか?
WHOの報告に基づく新型コロナウイルス感染症の平均的な致死率の推定
そうすると、まず、
こうしたCOVID-19と呼ばれる新型コロナウイルス感染症の致死率については、
詳しくは「新型コロナウイルスはインフルエンザと比べてどのくらい致死率が高いのか?」の記事で書いたように、
2月末現在までのWHOの報告に基づくと、新型コロナウイルスの致死率は全体として2%程度と推定されている一方で、武漢以外の地域における致死率は0.7%程度にまで下がるという推計も示されています。
(ちなみには、中国の武漢市における致死率は最大で4%という他の地域と比べて非常に高い致死率が記録されていますが、この理由については、都市封鎖後の武漢市における医療崩壊と社会混乱などが要因として考えられることになります。)
つまり、
日本国内での感染を想定した場合、こうした新型コロナウイルスの年齢的な条件を除外した平均的な致死率は、中国の武漢で起きたような深刻な医療崩壊の事態を想定しない限り、
楽観的に考えれば0.7%以下、悪くても2%程度の範囲におさまると考えられることになり、
現時点においては、そうしたWHOによって示されている二つの数値の間をとって、だいたい1.3%程度の致死率と想定しておくのが妥当な推定となると考えられることになります。
CCDCの報告に基づく新型コロナウイルスの年代別の致死率の統計
そして、それに対して、
こうしたCOVID-19と呼ばれる新型コロナウイルス感染症の年代別の致死率の違いについては、CCDC(中国疾病対策予防センター)においてすでに詳しい分析がなされていて、
そうしたCCDCの2020年2月17日付けの報告によれば、武漢を含む中国の湖北省を中心に抽出された44672人の感染者と1023人の死亡者の症例の分析に基づくと、
10歳未満の患者の致死率は0%(416人の感染者のうちで死亡者なし)
10代の患者の致死率は0.18%(549人の感染者のうち1人死亡)
20代の患者の致死率は0.19%(3619人の感染者のうち7人死亡)
30代の患者の致死率は0.24%(7600人の感染者のうち18人死亡)
40代の患者の致死率は0.44%(8571人の感染者のうち38人死亡)
50代の患者の致死率は1.3%(10008人の感染者のうち130人死亡)
60代の患者の致死率は3.6%(8583人の感染者のうち309人死亡)
70代の患者の致死率は8.0%(3918人の感染者のうち312人死亡)
80代以上の患者の致死率は14.8%(1408人の感染者のうち208人死亡)
という統計データが求められることになります。
(出典: China CDC Weekly:http://weekly.chinacdc.cn/en/article/id/e53946e2-c6c4-41e9-9a9b-fea8db1a8f51)
日本国内における新型コロナウイルスの年代別の致死率の推定
それでは、上記の統計データに基づいて、日本国内においても同様に70代の患者の致死率は8%、80代以上の患者の致死率は14.8%におよぶことになるのか?というと必ずしもそうではなく、
上記の中国のデータはあくまでも深刻な医療崩壊が起きた武漢を含む湖北省を中心とする地域の症例から分析された統計データであるため、全体の致死率も2.3%(44672人の感染者のうち1023人死亡)という比較的高い致死率となっていることを考慮に入れる必要があると考えられことになります。
そして、その一方で、
同一の医療条件のもとにおいては、上記の統計データにおいて示されているように、20代以下から30代、40代、50代と年齢が高くなるにつれて一貫して致死率も上がっていき、特に、70代以上の高齢者において顕著に致死率が高くなるという
年齢と致死率との相関性の割合自体は日本国内における新型コロナウイルスの致死率の推定においても十分に参考になると考えられることになります。
したがって、前述したように、
日本国内での感染を想定した場合、新型コロナウイルスの平均的な致死率はだいたい1.3%程度になるという推定に基づくと、
日本国内における新型コロナウイルスの年代別の致死率の推定は、以下のような形に修正されることになると考えられることになります。
10歳未満の患者の致死率は0%
10代の患者の致死率は0.10%
20代の患者の致死率は0.11%
30代の患者の致死率は0.16%
40代の患者の致死率は0.25%
50代の患者の致死率は0.73%
60代の患者の致死率は2.0%
70代の患者の致死率は4.5%
80代以上の患者の致死率は8.4%
つまり、
日本国内においては、10歳未満から80代以上までのどの年代においても、おそらく新型コロナウイルスの致死率が10%を超えることはないと考えられることになるものの、
高齢者については、70代の患者の致死率は4.5%、80代以上の患者の致死率は8.4%という比較的高い致死率が想定されることになるのは確かなので、
こうした推計値からも、改めて、こうした2019-nCoVと呼ばれる新型コロナウイルスが高齢者の感染予防と治療に特に注意を払うべきウイルスであるということが確認できると考えられることになるのです。
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次回記事:新型コロナウイルスは高齢者にとってどのくらい危険なのか?10代から30代の若年層と比較した高齢層の致死率の高さの推定
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