ドリコス走とは何か?ギリシア語の語源に基づく具体的な意味とトラック競技よりもマラソンに近い形式としての競技の位置づけ
前々回 と 前回の記事で書いてきたように、古代ギリシアにおけるオリンピアの祭典を中心とする古代オリンピックにおいては、
スタディオン走と呼ばれる古代の短距離走にあたる陸上競技や、ディアウロス走と呼ばれる古代の中距離走にあたる陸上競技が行われていたと考えられることになるのですが、
こうした古代オリンピックにおける徒競走に分類される陸上競技の種目としては、さらに、もう一つ、
紀元前720年に行われた第15回大会からは、ドリコス走と呼ばれる陸上競技が新たに導入されていくことになります。
それでは、こうしたドリコス走と呼ばれる古代ギリシアの陸上競技においては、具体的にはどのような形で競技が行われていたと考えられることになるのでしょうか?
古代ギリシア語の語源に基づくドリコス走の意味と競走路の具体的な距離
そうするとまず、もともと、
こうした古代ギリシア語におけるドリコス(δόλιχος、dolichos)という言葉は、「長い」あるいは「長引く」といった意味を表す言葉であったと考えられ、
こうしたドリコス走と呼ばれる陸上競技は、その名の通り、古代の長距離走にあたる競技として導入されていたと考えられることになります。
そして、
こうしたドリコス走と呼ばれる陸上競技において、選手たちが実際に走ることになっていたとされる具体的な距離については、それぞれの競技大会においてかなり大きなばらつきがあったと考えられることになるのですが、
だいたい、古代ギリシアの短距離走にあたるスタディオン走において用いられていた競走路を10往復から14往復する程度の距離が、ドリコス走において選手たちが走る距離として位置づけられていたと考えられることになります。
そして、
古代オリンピックが行われていたギリシアの古代都市オリンピアでは、競技場の遺跡における検証から、スタディオン走における競走路の長さは約192 mだったということが分かっているので、
そういった意味では、
こうしたドリコス走と呼ばれる古代の長距離走にあたる陸上競技においては、スタディオン走における競走路の長さにあたる192mの20倍から28倍にあたる距離、
すなわち、3840~5376m、だいたい、4km~5kmほどの距離を選手たちは走っていくことになっていたと考えられることになるのです。
ドリコス走の競技の手順とトラック競技よりもマラソンに近い形式としての競技の位置づけ
また、
こうしたドリコス走と呼ばれる陸上競技においては、前述したように、基本的には、スタディオン走における競走路を基準として、
そうした競技場内における競走路を往復していくような形で競技が行われることになっていたと考えられることになるのですが、
実際には、
競走のスタート地点とゴール地点は、そうした競技場内における正式な競走路上に設置されていたものの、
4km~5kmにもおよぶ競走のコースの全体の行程としては、
競技場内のスタート地点から出発した選手たちは、一度、競技場の外へと出て、都市の近郊にあった神殿や聖域などといった様々な目印となる場所を巡ってから、再び競技場内のゴール地点へと戻ってくるという形で競技が行われていくことが多かったと考えられることになります。
つまり、そういった意味では、
こうしたドリコス走と呼ばれる古代の長距離走においては、
競技におけるすべての行程が、スタジアム内の競走路のなかで完結することになるトラック競技としての長距離走というよりは、むしろ、
競技のコースがスタジアムを出発してから、街中を巡っていって、沿道に集う人々の応援を受けながら、再びスタジアムへと戻ってくるという、現代におけるマラソンに近い形式で競技が行われていたとも考えることになるのです。
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次回記事:スタディオン走とディアウロス走とドリコス走の違いとは?古代オリンピックの三つの競走競技における最初の優勝者の名前
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