青竜・白虎・朱雀・玄武が青・白・赤・黒の四色で表される理由とは?陰陽五行説に基づく色と季節と方位との対応関係
「四神と四霊の関係とは?」の記事でも書いたように、中国神話においては、天の四方の方角を司る四神(しじん)として、
東の青竜(せいりゅう)、西の白虎(びゃっこ)、南の朱雀(すざく)、北の玄武(げんぶ)という四つの神獣の名が挙げられることになると考えられることになります。
そして、
こうした青竜・白虎・朱雀・玄武という四つの神獣たちは、色彩で言うと、青・白・赤・黒の四色の色彩に対応づけられることになると考えられることになるのですが、
それでは、こうした四神として挙げられている神獣たちが上記のような四つの色彩によって表されることには、具体的にどのような理由があると考えられることになるのでしょうか?
すべての色彩の根源にある青・赤・黄・白・黒の五色の正色
まず、
こうした四神を表す色として、青・白・赤・黒の四色の色彩が選ばれた理由としては、その背景に、
万物の生成と変化を陰と陽の二つの力の対立と調和と、五種類の元素の相互作用によって説明する古代中国の思想である陰陽五行説の思想があると考えられることになります。
陰陽五行説においては、
万物の生成と変化を司るとされる木・火・土・金・水という五元素が、青・赤・黄・白・黒の五色へと対応づけられていくことになり、
こうした青・赤・黄・白・黒という五色の色彩は、古代中国においては、すべての色の基本となる最も重要な色である正色(せいしょく)として位置づけられていくことになります。
そして、
上記に挙げた五色のうち、青と赤と黄の三色は、現在においても色の三原色として挙げられることあるように、
それぞれの色の配分の割合を調整することによって白と黒を除くすべての色をつくり出すことができるあらゆるの色の基本となる色であると考えられることになるわけですが、
こうした青・赤・黄の三原色に、それらの色の調合によっては厳密な意味では生み出すことができない特権的な色である白と黒の二色を加えたのがこうした陰陽五行説に基づく正色として位置づけられる色であり、
この世界に存在するあらゆる色彩は、こうした青・赤・黄の三原色と、白と黒の濃淡によって生み出されていくことになると捉えることができると考えられることになるのです。
青赤白黒の四色が東西南北の四方位へと対応づけられる理由とは?
そして、
こうしたすべての色彩の根源にあるとされる陰陽五行説における青・赤・黄・白・黒の五色の正色は、方位や季節といった他の様々な自然界における事象とも深く結びつけられていくことになるのですが、
こうした五色と方位および季節との対応関係においては、詳しくは「皇帝を表す色は何色なのか?②」の記事で書いたように、
まず、青・赤・黄・白・黒の五色の正色のうち、皇帝の象徴でもあるともされる特権的な色である黄色が、四つの方位の中心に位置する中央に座する色として位置づけられたうえで、
残りの青・赤・白・黒の四色が、東西南北という四つの方位と、春夏秋冬という四つの季節へとそれぞれ当てはめられていくことになったと考えられることになります。
そして、詳しくは「春夏秋冬と東西南北の対応関係とは?」の記事で考察するように、
方位と季節の具体的な関係性については、春=東、夏=南、秋=西、冬=北という対応関係があると考えられることになり、
さらに、陰陽五行説においては、
こうした方位および季節と前述した青・赤・白・黒の四色との間には、春=東=青、夏=南=赤、秋=西=白、冬=北=黒という対応関係が存在すると説明されていくことになるのです。
しかし、このうち、
最も暑い季節および方角にあたる夏と南が火を表す赤に対応することは直感的にもある程度納得がいくとしても、
残りの春と東が青で、秋と西が白、冬と北が黒であるという対応関係は、いまいち具体的なイメージがわきにくいと考えられることになるわけですが、
まず、季節と色との対応関係に着目した場合、
古代中国における青は、現代の日本においてはどちらかというと緑色に近い色のことを表していたと考えられるので、
草木が芽吹き、木々が青々とした葉を茂られていくことになる春から初夏にかけての季節は、まさに、そうした草木の芽や茎や葉の青々とした色のことを意味する古代中国における青に象徴される季節であるとも捉えることができると考えられることになります。
また、
秋と白との関係については、「白」という漢字の成り立ちは、もともと月が白く光るさまのことを表してできた漢字であるともされていて、
中秋の名月などとも言われるように、秋は最も月が美しいとされる季節でもあるので、そうした月の白い光のイメージから、秋という季節と白という色が互いに結び付けて捉えられるようになっていったとも考えられることになります。
そして、最後に、
冬と黒との関係については、さらに具体的な意味づけが難しくなっていくと考えられることになるのですが、
古来から黒を意味する漢字として用いられてきた「玄」という漢字は、暗いことや、深い静寂といった様子のことを意味する漢字でもあり、それはどちらかと言うと、季節においては、冬のイメージに近い印象があるとも考えられることになります。
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以上のように、
青竜・白虎・朱雀・玄武という天の四方の方角を司る四神のことを表す色として、青・白・赤・黒という四色の色彩が選ばれた理由としては、
まず、古代中国の陰陽五行説の思想において、青・赤・黄・白・黒という五つの色彩がすべての色彩の根源にある五色の正色として位置づけられたうえで、
そうした五色の正色のうちから皇帝の象徴でもある特権的な色である黄色が除外された青・白・赤・黒の四色のうちから、東西南北という四つの方位のそれぞれに対応する色が選ばれていったと考えられることになります。
そして、
色と季節との対応関係に着目すると、草木が芽吹き葉を茂られていく青々とした色のことを表す青は春に、火を表すことから暑さなども連想される赤は夏に、中秋の名月などとの関係から月が白く光るさまを表す白は秋に、暗い静寂のことを表す黒は冬へと対応づけられていくことになり、
さらに、
そうした春夏秋冬という四つの季節のそれぞれが、東西南北という四つの方位との関係においては、春=東、夏=南、秋=西、冬=北という対応関係にあることから、
方位についても、春=東=青、夏=南=赤、秋=西=白、冬=北=黒という対応関係が成立することになっていったと考えられることになります。
そして、こうしたことから、
東西南北の四つの方位をそれぞれ守護する神獣である四神についても、それぞれの神獣が司る方位に対応する色がそのまま当てはめられていく形で、
青竜・白虎・朱雀・玄武という青・白・赤・黒の四色で表されるようになっていったと考えられることになるのです。
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次回記事:春夏秋冬と東西南北の関係とは?陰陽五行説と太陽の運行の循環構造に基づく季節と方位との間の具体的な対応関係
前回記事:武神と水神としての青竜と黄竜の位置づけのあり方とは?関羽と青竜の関係と黄帝と黄竜との関係、青竜と黄竜の違い②
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