黄道と白道の違いとは?②月の軌道が太陽の軌道と比べて不規則的で複雑な軌道を描く理由
前回の記事で考察したように、黄道と白道と呼ばれる天球上における太陽と月の軌道のあり方は、一言でいうと、
黄道とは、太陽の周りを回っていく地球の公転運動のあり方に基づいて、地球上から観測されることになる天球上における太陽の年周軌道のあり方を意味する言葉であるのに対して、
白道とは、地球の周りを回っていく月の公転運動のあり方に基づいて、地球上から観測されることになる天球上における恒星月としての月の月周軌道のあり方を意味する言葉として定義することができると考えられることになります。
それでは、
こうした白道と呼ばれる天球上における月の軌道のあり方は、黄道や天の赤道といった天球上における天体の位置座標の基準線となる大円を基準として見ていった場合、より正確にはどのような軌道を描いていくことになると考えられることになるのでしょうか?
黄道と天の赤道の位置関係と白道と黄道の位置関係
そうすると、まず、上記の図において示したように、
地球における赤道が天球上に投影された大円にあたる天の赤道を基準として見た場合、天球上における太陽の年周軌道にあたる黄道は、
地球の公転軸に対する自転軸の傾き、すなわち、地軸の傾きの角度が約23.4度であることに基づいて、天の赤道から約23.4度傾いた円周軌道を描いていくことになると考えられることになります。
そして、それに対して、
天球上における月の月周軌道にあたる白道は、そうした太陽の年周軌道としての黄道を基準として見た場合、
太陽の年周軌道としての黄道面に対する月の軌道面の傾きの角度が約5.9度であるということに基づいて、黄道から約5.9度傾いた円周軌道を描いていくことになると考えられることになるのです。
月の軌道が太陽の軌道と比べて不規則的で複雑な軌道を描く理由
それでは、
地球における赤道が天球上に投影された大円にあたる天の赤道を基準として見た場合、そうした白道における月の軌道のあり方は、
天の赤道に対する黄道の傾きにあたる23.4度に、黄道に対する白道の傾きにあたる5.9度を足した、天の赤道から29.3度の傾きにある円周軌道をきれいに描いていくことになるのか?というと、決してそういうわけではなく、
こうした天球上における月の軌道にあたる白道においては、天文学的な用語としては摂動とも呼ばれる太陽系内の他の惑星からの引力の影響などによる軌道のずれが引き起こされることによって、
厳密な意味においては、その円周軌道の基準点となっている黄道との交点の位置自体が一周するごとに少しずつずれていってしまうことになると考えられることになります。
そして、具体的には、
こうした白道における月の軌道のあり方においては、地球の周りを反時計回りに西から東へと回っていく月の公転運動のあり方に基づいて、
月は、こうした白道と呼ばれる大円上を恒星月の周期にあたる約27.3日の時間をかけて西から東へと東回りに一周していくことになる一方で、
こうした白道と黄道の交点は、それとは反対に東から西へと逆行していく形で移動していくことによって、約18.6年の時間をかけて黄道上を一周して元の位置に戻ってくることになると考えられることになるのです。
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そして、以上のように、地球上からの観測において、
太陽の年周軌道にあたる黄道は、天の赤道から約23.4度傾いた円周軌道をきれいに描いていくことになるのに対して、
月の月周軌道にあたる白道は、黄道から約5.9度傾いた円周軌道を描いていくことになるものの、そうした月の軌道の基準点となる白道と黄道の交点の位置自体が東から西へと逆行していく形でどんどんずれていってしまうことによって、
実際には、より不規則的で複雑な軌道を描いていくことになると考えられることになるのです。
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次回記事:月の高さが最も高くなるのは一年のどの時期なのか?実際に地球上から観測される月の高度が満月の時期に最も高くなる理由
前回記事:黄道と白道の違いとは?①天球上における月の月周軌道と太陽の年周軌道としての両者の関係
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