平気法とは何か?「冬至」を基点とした時間的に均等な節気の配置としての平気法の定義と閏月の設置による暦のずれの修正
前回の記事で書いたように、二十四節気においては、節気と中気と呼ばれる二つの種類の暦の区分点が交互に配置されていくことによって一年における暦の区分がなされていくことになると考えられることになるのですが、
こうした二十四節気における節気の配置のあり方においては、それぞれの時代において、平気法(へいきほう)と定気法(ていきほう)と呼ばれる二つの異なる手法が用いられてきたと考えられることになります。
それでは、
このうちの前者にあたる平気法とは、具体的にどのような特徴をもった節気の配置のあり方であると考えられることになるのでしょうか?
平気法における「冬至」を基点とした時間的に均等な節気の配置
そうすると、まず、
こうした二十四節気における二つの節気の配置の規則のあり方のうちの前者にあたる平気法または、恒気法(こうきほう)と呼ばれる節気の配置のあり方においては、
二十四節気のうちの一つであり、一日における昼の長さが一年で一番短くなる日にあたる「冬至」を基点としたうえで、
そうした冬至から翌年の冬至までの時間が均等に分割されていくことによって、立春から大寒までの二十四の節気が約15日ごとの間隔で配置されていくことになると考えられることになります。
つまり、そういった意味では、
こうした平気法と呼ばれる節気の配置の規則のあり方においては、冬至から翌年の冬至までの太陽の運行に基づく一年の長さが時間的に均等に分割されていくことになり、
そうした時間的に均等に分割された等速度において天球上を移動していくと仮定される平均太陽の運行あり方を基準として節気の配置がなされていくことになるために、こうした平気法と呼ばれる名称が用いられるようになったとも解釈していくことができると考えられることになるのです。
平気法の規則に基づく閏月の設置と旧暦における暦のずれの修正
そして、
こうした平気法に基づく二十四節気の配置のあり方においては、一年の基点となる冬至の日が旧暦の11月に固定されたうえで、
1月から12月までの旧暦の各月には、必ず、雨水・春分・穀雨・小満・夏至・大暑・処暑・秋分・霜降・小雪・冬至・大寒という十二の中気のうちのいずれかの中気が含まれることになると規定されていくことになるのですが、
こうした太陽の運行ではなく月の運行のあり方を基準として一月の長さが定められていた太陰太陽暦に基づく旧暦における月の区分のあり方においては、一月の長さが約29.5日となってしまうことによって、
太陽の運行に基づいて規定されることになる二十四節気における一年の長さとの間に徐々にずれが生じていってしまうことになります。
そして、
こうした太陽の運行に基づく平気法に基づく二十四節気の配置と、月の運行に基づく旧暦における十二の月の区分との間に生じていくことになる一年の長さのずれのあり方から、
一年のなかで配置されていく旧暦における月のなかには、実際には、中気が含まれない月が出てきてしまうことになり、
そうした中気が含まれない月については、季節と日付のずれを合わせるために付け加えられる付加的な月にあたる閏月(うるうづき)が設けられことによってずれの修正が行われていたと考えられることになります。
つまり、そういった意味では、
こうした太陽の運行ではなく月の運行のあり方を基準として一月の長さを定める太陰太陽暦に基づく旧暦が用いられていた中世から近世までの時代の日本においては、
主に、こうした二十四節気における平気法と呼ばれるような節気の配置のあり方に基づいて閏月が導入されていくことによって、太陽の運行のあり方に対する暦のずれの修正が行われていたと考えられることになるのです。
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次回記事:定気法とは何か?「春分」を基点とした空間的に均等な節気の配置としての定義と定気法で節気の間の日数が不均等になる理由
前回記事:節気と中気の違いとは?二十四節気において春分と夏至と秋分と冬至は節気と中気のどちらに分類するのが正しい表現なのか?
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