やぎ座のギリシア神話における由来とは?森と牧人の守護神としてのパンの神と魚の尾を持つ山羊の姿への変身
黄道十二星座の一つとして位置づけられている山羊座(やぎざ)は、黄道十二宮における磨羯宮(まかつきゅう)の領域とも結びつけられることによって、
二十四節気のうちの冬至から大寒の頃までの時期にあたる 12月22日から1月19日までの29日間の期間を司る星座としても位置づけられることになるのですが、
こうしたやぎ座と呼ばれる星座は、ギリシア神話においては具体的にどのような由来を持つ星座であると考えられることになるのでしょうか?
変身する能力に長けた山羊の角を持つ森と牧人の神としてのパンの神
そうすると、まず、
こうしたやぎ座と呼ばれる星座において夜空に描かれることになる二本の角を持ち下半身が魚の尾のような姿になった山羊の姿は、
ギリシア神話の物語においては、パンまたはアイギパンと呼ばれる獣の脚と山羊の角を持った森の動物たちや牧人たちを守護する半獣神の物語のうちにその具体的な由来が求められていくことになると考えられることになります。
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そもそも、
こうした牧人と家畜を守護する半獣神としてのパン(Pan)という神の名は、古代ギリシア語において、「牧人」や「羊飼い」のことを意味していたπαων(パオン)という言葉を語源とする名前であると考えられていて、
こうしたパンの神のもう一つの呼び名にあたるアイギパン(Αἰγίπαν)という言葉は、そのまま「山羊のパン」といった意味を表す呼び名であったと考えられることになります。
そして、
ギリシア神話においては、こうしたパンあるいはアイギパンと呼ばれる森と牧人の神は、神々の王であるゼウスと森の精との間に生まれた神であるとも、
ゼウスの使いとしてその言葉を告げ知らせる伝令神にして旅人の守り神でもあるヘルメスと、現在の中央ギリシアに位置していたオエタの王であったドリオプスの娘であり、のちにポプラの木へと変身してやはり森の精となった王女ドリオペとの間に生まれた神であるとされることもあるのですが、
こうしたパンと呼ばれる森と牧人の神は、自分の母親であるともされている森の精であるドリオペと同じように変身する能力に長けた神であるとされていて、
パンは、自分の身に危険が迫ると下半身を魚の姿へと変えて海の底へと潜ったり、山羊の姿になって高い山々の頂上まで登ったりと、自らの姿を自在に変えて世界のあらゆる場所へと行くことができるとされていたため、
民俗神話においては、古代ギリシア語において「すべて」や「あらゆる」といった意味を表すpan(パン、汎)という言葉の語源となった神としても位置づけられていくことになるのです。
神々の戦いにおいて魚の尾を持つ山羊の姿へと変身したパンの神
そして、
こうしたパンと呼ばれる獣の脚と山羊の角を持つ少し奇妙な姿をした変身する技を得意とする神は、
ゼウスを盟主とするオリュンポスの神々と、クロノスを盟主とするティターンと呼ばれる巨神族の間で行われたティタノマキアと呼ばれる天界の支配をめぐる神々の戦いにおいて、
自分の姿かたちを魚の姿に変えて海へと潜り、海の底から大きな貝殻を拾ってきて、その貝殻をホラガイのように吹き鳴らして大きな音を立てることによってティターンたちの不意を突いて驚かし、
敵の戦列を大きく乱れされることによってオリュンポスの神々の側を戦いの勝利へと導いたとも語り伝えられていくことになります。
そして、そののち、
こうしたティターンと呼ばれる古代の神々との戦いを制して神々の王となったゼウスが、この戦いにおけるパンの神の自らの軍の勝利への大きな貢献を記念して、
貝殻を探しに海へと潜っていくために、魚の尾を持つ山羊の姿へと自らの姿かたちを変えていたパンの神の姿をそのまま星座の形としてとどめて夜空のうちに輝かせていくことになったというのが、
こうしたギリシア神話におけるやぎ座と呼ばれる星座の具体的な由来であると考えられることになるのです。
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次回記事:みずがめ座のギリシア神話における由来とは?神々の饗宴で天界の給仕人となったトロイア王子ガニメデと魚の姿をした美の女神
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