いて座のギリシア神話における由来とは?ケンタウロスの賢者ケイロンと英雄ヘラクレスの出会いと彼が最後に願った死の安息

黄道十二星座の一つとして位置づけられている射手座(いてざ)は、黄道十二宮における人馬宮(じんばきゅう)の領域とも結びつけられることによって、

二十四節気のうちの小雪から冬至の頃までの時期にあたる 1123日から1221までの29日間の期間を司る星座としても位置づけられることになるのですが、

こうしたいて座と呼ばれる星座は、ギリシア神話においては具体的にどのような由来を持つ星座であると考えられることになるのでしょうか?

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不死の力を持つケンタウロスの賢者ケイロンと英雄ヘラクレスの出会い

そうすると、まず、

こうしたいて座と呼ばれる星座において夜空に描かれることになる矢をつがえた弓を引く射手の姿は、

ギリシア神話の物語においては、半人半馬の姿をしたケンタウロス族の賢者であったケイロン英雄ヘラクレスの物語のうちにその具体的な由来が求められていくことになると考えられることになります。

・・・

ギリシア神話において、ケンタウロスと呼ばれる種族は、頭から腰までの部分は人間の姿をしていて、その他の部分は馬の身体をしているという上半身が人間で下半身が馬の姿をした半人半馬の種族として描かれていくことになるのですが、

こうしたケンタウロスと呼ばれる種族のなかでも、

ケイロンという名のケンタウロスは、月と狩猟の女神であるアルテミスと、その兄である光明と芸術の神であるアポロンの教えを受けた狩りや音楽、さらには、医術や予言においても優れた能力を示す多彩な才能を持つ賢者として知られていて、

ケイロンは、賢く正しい心を持つケンタウロスの賢者として、同族の者たちからだけではなく人間や神々からも広く尊敬を集めていくことによって、神々から不死の力まで与えられることになります。

そして、

こうした多彩な才能を持つケンタウロスの賢者であったケイロンのもとには、ギリシア神話を代表する英雄である若き日のヘラクレスも彼の教えを請うためにやってきたと言われていて、

英雄ヘラクレスは、弓矢などの狩猟の技にも優れていたケイロンを武術の師とすることによって、天下無双の豪傑へと成長していくことになっていったと考えられることになるのです。

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ヘラクレスとケンタウロスの争いと猛毒に苦しむケイロンが最後に願った死の安息

そして、その後、

師であるケイロンのもとを離れて、ヘラクレスの十二の功業として知られる怪物退治の旅へと赴いていくことになったヘラクレスは、

以前にも書いたしし座の由来ともなったネメアの獅子との戦いにおいては、あらゆる武器を弾き返する獅子の毛皮でできた強靭な鎧を手にし、

以前にも書いたかに座の由来ともなった怪物ヒュドラとの戦いにおいては、不死の頭を持つ巨大な水蛇であったヒュドラを倒してその体からしぼりとったすべての生き物を確実に死へと至らしめることになる猛毒の毒液を手にすることによって、さらなる強大な力を手に入れていくことになるのですが、

ヘラクレスは、そうした怪物退治の偉業の中の四番目の戦いにおいて、ギリシアのペロポネソス半島の中央部に位置するアルカディアの地にあったエリュマントス山に住む凶暴な大イノシシを生け捕りにするように命じられることになります。

そして、ヘラクレスは、

こうしたエリュマントスのイノシシ退治へと向かっていく際、エリュマントスの山に近いポロエーの地において、この地の洞窟の中に暮らしていたポロスという名のケンタウロスから歓待を受けることになるのですが、

その夜の宴において、酒を飲みたくなったヘラクレスは、主人であるポロスが止めるのも聞かずに、ケンタウロス族の酒甕から勝手に酒を取り出して飲んでしまったため、

こうしたヘラクレスの無礼な行いに対して怒ったケンタウロスたちとの間でまるで戦争のような激しい争いが起きてしまうことになります。

そして、その後、

大岩や木々を投げつけてヘラクレスを押し潰そうとするケンタウロスたちに対して、ヘラクレスは弓で矢を射て応戦していくことになり、

ケンタウロスたちが彼らの尊敬する賢者にして偉大な指導者として慕っていたケイロンが住んでいたマレアーの地まで逃げていくこと、

それを追いかけてきたヘラクレスは、怒りに我を忘れてヒュドラの猛毒を塗った矢を放って彼らのことを射殺そうとすることになるのですが、

ヘラクレスが放った猛毒の一矢は、彼と戦っていたエラトスという名のケンタウロスの腕を貫いてさらに進んでいき、ヘラクレスの弓矢と武術の師でもあったケイロンの膝をも突き刺してしまうことになるのです。

そして、

自らの師であるケイロンを命を奪う猛毒の矢によって射抜いてしまったことを深く後悔したヘラクレスは、何とかして師の命を救おうと矢を引き抜いて薬草を用いて治療を施そうとすることになるのですが、

すべての生き物を確実に死へと至らしめることになるヒュドラの毒を解毒することができる薬は世界のどこにも存在しなかったため、

神々から不死の力を与えられていたケイロンはその力によって命を失うことはなかったものの、永遠に癒えることない死の苦しみによってその身体を苛まれ続けていってしまうことになります。

そして、

こうした猛毒がもたらす苦痛に耐えかねたケイロンは、ついに、神々の王であるゼウスに対して自らが持つ不死の力を放棄することを願い出て、

その不死の力は、すでに神々によって別に定められていた罰によって永遠に続く責め苦を負わされていたプロメテウスによって引き受けられることによって、

ケイロンは同族である他のケンタウロスたちと同じように定命を持つ者となり、それによって死の安息を得ることを許されることになります。

そして、その後、

こうした一連の出来事を見ていたゼウスによって、いまや永遠の安らぎを得ることになったケイロンの魂天上の世界へと引き上げられていき、

その正しく賢明なる心が讃えられて、夜空に輝く星座として天上の世界のうちにとめ置かれることになったというのが、

こうしたギリシア神話におけるいて座と呼ばれる星座の具体的な由来であると考えられることになるのです。

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次回記事:やぎ座のギリシア神話における由来とは?森と牧人の守護神としてのパンの神と魚の尾を持つ山羊の姿への変身

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