みずがめ座のギリシア神話における由来とは?神々の饗宴で天界の給仕人となったトロイア王子ガニメデと魚の姿をした美の女神
黄道十二星座の一つとして位置づけられている水瓶座(みずがめざ)は、黄道十二宮における宝瓶宮(ほうべいきゅう)の領域とも結びつけられることによって、
二十四節気のうちの大寒から雨水の頃までの時期にあたる1月20日から2月18日までの30日間の期間を司る星座としても位置づけられることになるのですが、
こうしたみずがめ座と呼ばれる星座は、ギリシア神話においては具体的にどのような由来を持つ星座であると考えられることになるのでしょうか?
神々の饗宴において酒に満たされた水瓶をかつぐ天界の給仕人となったトロイアの王子ガニメデの姿
そうすると、まず、
こうしたみずがめ座と呼ばれる星座において夜空に描かれることになる口が下向きになった水瓶を捧げ持つ美青年の姿は、
ギリシア神話の物語においては、トロイアの王子ガニメデと、彼のことを天空からさらおうとする鷲の姿へと変身したゼウス、そして、魚の姿へと変身した美の女神アフロディテという三人の登場人物の物語のうちにその具体的な由来を求めていくことができると考えられることになります。
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古代ギリシア語においてはガニュメーデース(Γανυμήδης)、ラテン語においてはガニメデ(Ganymede)という名前で呼ばれることになるこのトロイアの王子は、
現在のトルコの北西部に位置していたと考えられる古代の都市国家であるトロイア王国の始祖であったトロス王と、オケアニスと呼ばれる泉の女神のうちの一人であったカリロエとの間に生まれた三人の王子のうちの一人であり、
ガニメデは、自らの母であった美しい泉の女神の姿によく似て、彼自身もまた姿かたちの美しい美青年へと成長していくことになります。
そして、ある時、
天空から地上の世界の様子を眺めていた神々の王であるゼウスが、ガニメデの美貌に目をとめて、彼を自分の手元にとめ置きたいと強く願ったため、
ゼウスは大空を飛ぶ鷲の姿へと自らの姿を変身させたうえで、トロイアの地に広がるイダの山にいたガニメデを捕まえて、自分が住む天上の世界へと連れ去って行ってしまうことになります。
そして、
自らの意に反してゼウスが住む天界のオリュンポスの地へと連れてこられたトロイアの王子ガニメデは、その代償として、自らの美貌を永久に失うことのないように永遠の若さと神々が持つ不死の力とを特別に与えられたうえで、
天界において時折開かれることになる神々の饗宴において、神や女神たちの杯を酒で満たす給仕人としての役割を与えられることになり、
そうした神々の饗宴において酒に満たされた水瓶をかついで回る天界の給仕人となったトロイアの王子ガニメデの姿が夜空に輝く星座の形としてとどめられることになったのが、
こうしたギリシア神話におけるみずがめ座と呼ばれる星座の名前の具体的な由来であると考えられることになるのです。
「わし座」と「みずがめ座」と「みなみのうお座」と呼ばれる三つの星座に象徴されるゼウスとガニメデとアフロディテの三者の関係
また、
こうした神々の饗宴において水瓶をかつぐ天界の給仕人としての役割を担うことなったギリシア神話におけるトロイアの王子ガニメデの話については、その後日譚として、以下のような美の女神アフロディテとも関わりのある物語が語られていくこともあります。
その話のなかでは、
ある時、ゼウスが趣向を変えて、天上の世界から地上へと降りてきて、エジプトのナイル川のほとりにおいて神々の饗宴を開いていたところ、
その饗宴の招かれざる客として、大地の女神ガイアから生まれた深淵の怪物であるテュポーンが宴会に興じる神々の前に突然現れたので、
その巨大な怪物の姿に驚いた美の女神アフロディテは、驚きのあまり自らの姿を魚の姿へと変えてナイル川へと飛び込んでしまったとも語り伝えられていくことになります。
そして、その際、
神々の饗宴における給仕の役目をしていた美青年のガニメデも、宴会に参加していた神々と同様に、恐ろしい怪物の姿を目にして非常に驚いて、思わず自分が手に持っていた水瓶を逆さまにひっくり返してしまうことになったため、
ガニメデが逆さまにした水瓶から流れ出た水は、そのまま魚の姿になったアフロディテの口元へと注がれていくことになったとも考えらることになります。
そして、以上のように、
こうしたギリシア神話に出てくる鷲の姿をしたゼウスと、トロイアの王子であり天界の給仕人となった美青年のガニメデ、そして、魚の姿をした美の女神アフロディテという三人の登場人物をめぐる物語の構図に基づいて、
季節が夏から秋へと移り変わっていく時期の夜空においては、
ガニメデの姿が星座となったみずがめ座の右上には、美青年であったガニメデを彼の生まれ故郷であるトロイアの地から連れ去ろうとして天空から迫る鷲の姿をしたゼウスの姿が星座となったわし座が配置され、
そうしたみずがめ座の真下には、魚の姿になったアフロディテの姿が星座となったみなみのうお座と呼ばれる星座の形が配置されていくという形で、
こうしたわし座とみずがめ座とみなみのうお座と呼ばれる三つの星座同士の関係が互いに結びつけられていくことになっていったと考えられることになるのです。
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次回記事:うお座のギリシア神話における由来とは?魚の姿へと変身して逃げる愛の神エロースと美の女神アフロディテの母と子の物語
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