社会寄生と労働寄生の生物学における定義とカッコウの托卵やサムライアリにおける寄生生活の具体的な仕組み
前回までの一連の記事で書いてきたように、生物学的な意味における寄生と呼ばれる生活形態のあり方は、
寄生が行われる宿主の体の部位の違いに基づく外部寄生と内部寄生と細胞内寄生と呼ばれる寄生のあり方や、宿主となる生物を確実に死へと至らしめることになる捕食寄生と呼ばれる寄生形態のあり方などへと分類されていくことになりますが、
こうした生物学的な意味における寄生のあり方としては、その他にも、社会寄生や労働寄生といった寄生形態のあり方が挙げていくことができると考えられることになります。
社会寄生の定義とサムライアリとクロヤマアリの関係における社会寄生の具体例
そして、このうち、はじめに挙げた
社会寄生とは、寄生者となる生物が宿主となる生物の体内から直接栄養を奪うのではなく、宿主となる生物の社会性や集団性を利用して食料や労働力を利益として得る寄生形態のあり方として定義されることになります。
そして、
こうした社会寄生を営む寄生生物の代表的な例としては、サムライアリと呼ばれる鎌状に発達した大きなあごを特徴とする黒褐色で体長が5ミリメートルくらいのアリ科の昆虫の種族の名が挙げられることになると考えられることになります。
こうしたサムライアリと呼ばれるアリの種族は、クロヤマアリと呼ばれる別のアリの種族をターゲットとして、そうしたクロヤマアリの巣の内部へと侵入したうえで、
巣の中に置かれていたクロヤマアリのさなぎを略奪して、自分たちの巣の中へと連れ込んでいくことになります。
そして、
そうしたサムライアリの巣の中でさなぎからかえったクロヤマアリの成虫は、自分がさなぎからかえったサムライアリの巣のことを自分の巣だと勘違いして、
そのままサムライアリたちのために、せっせとエサを集めたり、幼虫の世話をしたりするというように、その一生をサムライアリの奴隷となるような形で過ごしていくことになると考えられることになるのです。
労働寄生の定義とカッコウの托卵やグンカンドリによるエサの横取りにおける労働寄生の具体例
そして、それに対して、その次に挙げた
労働寄生とは、寄生者となる生物が宿主となる生物の体内から直接栄養を奪うのではなく、宿主となる生物が取ってきたエサを横取りするといったことを通じて宿主の労働を搾取して利益を得る寄生形態のあり方として定義されることになります。
そして、
こうした労働寄生と呼ばれる寄生形態の代表的な例としては、グンカンドリなどの海鳥におけるエサの横取りの習性や、カッコウなどの鳥類における托卵(たくらん)の習性などが挙げられることになると考えられることになります。
まず、前者のグンカンドリと呼ばれる海鳥は、カツオドリやミズナギドリといった他の海鳥がエサとなる魚を海から取ってきた際に、
そうした他の海鳥たちを襲うことによって、びっくりした海鳥たちにくちばしにくわえていたエサを吐き出させて空中で横取りすることによって、
言わば、そうした他の海鳥たちが自らの労働力を割いて確保したエサを盗むという形で、自分のエサを確保していく習性があると考えられることになります。
そして、その一方で、
後者のカッコウなどの鳥類における托卵の習性においては、そうしたカッコウやホトトギスなどといった托卵を行う親鳥たちはウグイスなどの仮親となる他の鳥類の巣の中に自分が産んだ卵を紛れ込ませていくことになります。
そして、その際、
托卵を行う親鳥は、自分が産んだ卵を一個紛れ込ませる代わりに、仮親の卵を一個捨てて排除してしまうことになり、その後、卵から孵化したカッコウのひな鳥たちも、仮親の本来の子供となる卵やひな鳥たちを巣から蹴落として追い出してしまうことによって、仮親の巣を乗っ取って独占していってしまうことになると考えられることになるのです。
そして、このように、
カッコウやホトトギスなどの鳥たちが行う托卵の習性においては、ウグイスなどの仮親となる鳥たちが本来は自分の子供のために運んできたエサを托卵によって産まれた自分の子供ではないひな鳥たちに奪われてしまうことによって、
そうした本来は自分の子供となるひな鳥のために割くはずであった労働力を搾取されてしまうことになると考えられることになるのです。
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以上のように、
こうした社会寄生と労働寄生と呼ばれる二つの生物学的な寄生形態のあり方においては、
社会寄生の場合には、サムライアリとクロヤマアリの関係性のように、アリなどの社会性を持つ昆虫の社会性や集団性を利用することによって、宿主となる生物の種族そのものが寄生者となる生物の種族の奴隷のような存在として使役されていくことになるのに対して、
労働寄生の場合には、グンカンドリにおけるエサの横取りの習性や、カッコウやホトトギスにおける托卵の習性などに見られるように、宿主となる生物がエサなどを確保するために費やしてきた労働力の成果を搾取することによって寄生生活が営まれていくことになるといった点に、
こうした社会寄生と労働寄生という二つの寄生形態のあり方の具体的な特徴の違いを見いだしていくことができると考えられることになるのです。
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次回記事:寄生と共生の違いとは?両者に区分される全部で八つの生活形態の種類と不利益や損害といった観点に基づく具体的な特徴の違い
前回記事:捕食寄生とは何か?寄生バチや冬虫夏草における宿主となる生物を確実的に死に至らしめる寄生のあり方
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