捕食寄生とは何か?寄生バチや冬虫夏草における宿主となる生物を確実的に死に至らしめる寄生のあり方
前回の記事で書いたように、生物学において寄生と呼ばれている異なる種類の生物同士が一緒に生活していくなかで、一方の生物だけが利益を受けて、もう一方の生物は損害や悪影響を受けている状態のことを意味する生活形態のあり方は、
寄生者となる生物が寄生していくことになる宿主の体の部位の違いといった観点からは、外部寄生と内部寄生と細胞内寄生と呼ばれるような寄生のあり方へと区分されていくことになると考えられることになります。
そして、それに対して、
こうした寄生と呼ばれる生活形態のあり方は、宿主となる生物に対する悪影響の深刻さといった観点からは、
宿主となる生物から栄養分などを奪うことによって生活を営んでいく通常の寄生のあり方や、寄生した生物が宿主の身体機能に悪影響を及ぼすことに病原体として作用してしまうことになる寄生のあり方などのほかに、
宿主となる生物を確実に死へと至らしめることになる捕食寄生と呼ばれる寄生形態のあり方も挙げられることになると考えられることになります。
捕食寄生の定義と寄生バチや寄生バエにおける捕食寄生の例
冒頭でも述べたように、
捕食寄生とは、寄生者となる生物が宿主となる生物の内部において寄生生活を営んでいくなかで、最終的に宿主となる生物を捕食して食い殺してしまう寄生形態のあり方として定義されることになります。
そして、
こうした捕食寄生を行う生物の代表的な種類としては、ヤドリバチと呼ばれる寄生バチや、ヤドリバエと呼ばれる寄生バエといった寄生性の昆虫の種類が挙げられることになるほか、
冬虫夏草(とうちゅうかそう)と呼ばれる虫に寄生するキノコなどの寄生形態のあり方についても、広い意味ではこうした捕食寄生と呼ばれる寄生形態のあり方に分類することができると考えられることになります。
このうち、はじめに挙げた
寄生バチや寄生バエによって引き起こされる捕食寄生においては、通常の場合、こうした寄生バチや寄生バエに分類されることになる寄生性の昆虫の種族は、
チョウやガなどの鱗翅類や、カブトムシやクワガタムシなどの甲虫類、その他にも、カイコやセミなどといった様々な昆虫のさなぎの内部などに卵を産み付けたうえで、
そうして宿主となる昆虫の体内に内部寄生した寄生バチや寄生バエの卵は、その後、宿主の体内で孵化したのち、宿主となった昆虫の体自体を内側から少しずつ食べていくことで成長していくことになります。
そして、
最終的に、そうした宿主となった昆虫の体全体を食べ尽くしてしまった寄生バチや寄生バエの幼虫たちは、もぬけの殻となってしまった昆虫の体表を突き破って外へ飛び出していったのち、
土の中に潜ってさなぎとなってから、やがて羽化して成虫となり、再び宿主となる新たな昆虫を見つけて卵を産み付けていくことになると考えられることになるのです。
冬虫夏草における捕食寄生の例と寄生において宿主が受ける損害や悪影響の段階の違い
そして、その次に挙げた
冬虫夏草によって引き起こされる捕食寄生においては、通常の場合、こうした冬虫夏草と呼ばれる虫に寄生するキノコすなわち菌類の一種に分類される寄生生物の種族は、
セミやアリ、ハチやカメムシ、あるいは、カブトムシやクワガタムシなどの甲虫類を中心とする昆虫の幼虫や成虫の体の表面に付着した胞子から発芽管と呼ばれる管を虫の体内へと伸ばしていき、
そうして宿主となる昆虫の体内に内部寄生した冬虫夏草の胞子は、その後、虫の体内から養分を吸収して成長していくとともに、宿主となる虫の体の内部全体に菌糸を張り巡らせていくことになります。
そして、
最終的に、そうした宿主となった昆虫の養分を吸いつくした冬虫夏草に分類される菌類は、養分を吸いつくされてミイラ化した宿主となる昆虫の体を突き破って、一般的にはキノコと呼ばれている子実体という胞子を生産する器官を外へと伸ばしていくことになり、
そうした棒状やひも状の形状をした子実体から胞子を射出していくことによって、新たな宿主となる昆虫へと胞子が取り付いていくことになると考えられることになるのです。
・・・
そして、以上のように、
寄生と呼ばれる生物学における生活形態のあり方は、宿主となる生物に対する悪影響の深刻さといった観点からは、
人間の腸内などに寄生することもあるサナダムシなどのように、寄生者が宿主の体内に存在する栄養分の一部を奪うだけといった宿主となる生物への害が比較的少ない寄生形態のあり方から、
マラリア原虫などの病原性の寄生虫やリケッチアなどの細胞内寄生菌などのように、寄生生物が宿主となる生物の内臓や血管などといった重要な器官や組織にまで寄生範囲を広げていくことによって宿主にとって有害な病変を引き起こしてしまうことになる寄生形態のあり方、
そして、
寄生バチや寄生バエあるいは冬虫夏草などの昆虫に寄生する菌類などのように、宿主となる生物の体内に内部寄生したのち、宿主の体内をすべて食い荒らしてからもぬけの殻となった宿主の体表を突き破って外へと飛び出していくような捕食寄生と呼ばれる宿主となる生物を必ず殺してしまうような寄生形態のあり方もあるように、
同じように寄生と呼ばれる生物学における生活形態のあり方においても、そうした宿主となる生物が受ける損害や悪影響のあり方には、その影響の大きさや深刻さに大きな段階の違いが存在すると考えられることになるのです。
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次回記事:社会寄生と労働寄生の生物学における定義とカッコウの托卵やサムライアリにおける寄生生活の具体的な仕組み
前回記事:寄生の定義とは?外部寄生と内部寄生と細胞内寄生の違いとそれぞれに分類される寄生者となる生物の具体例
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