枯草菌と納豆菌の具体的な特徴と芽胞を形成する耐久性と生命力に優れた細菌の種族としての位置づけ、桿菌に分類される代表的な細菌の種類とは?⑭
このシリーズの初回から前回までの一連の記事では、桿菌と呼ばれる細菌のグループに分類されることになる代表的な細菌の種類のなかでも、
結核菌や破傷風菌やペスト菌、赤痢菌やチフス菌やパラチフス菌、炭疽菌やビブリオ・バルニフィカスなどといった人間に対する細菌感染症を引き起こす原因となる代表的な桿菌の種類について順番に取り上げてきましたが、
こうした桿菌と呼ばれる細菌のグループには、その他にも、人体に対して大きな害を与えることはほとんどない一般的な常在菌の一種として分類されることになる細菌の種類として、さらに、
枯草菌、納豆菌、乳酸桿菌、ビフィズス菌、セラチア菌、バクテロイデス、フゾバクテリウム、プレボテラ、エンテロバクター、プロテウス、アシネトバクター、アクネ菌といった様々な桿菌の種類名が挙げられることになると考えられることになります。
枯草菌の具体的な特徴と芽胞を形成する耐久性と生命力に優れた細菌の種族としての位置づけ
そして、このうち、はじめに挙げた
枯草菌(Bacillus subtilis、バチルス・サブティリス)とは、幅0.5~2.5マイクロメートル、長さ2~10マイクロメートルくらいの大きさをした細胞の周囲にある鞭毛を用いて移動する棒状の形状をしたグラム陽性の好気性桿菌に分類される細菌の一種であり、
英語圏においては、grass bacillus(グラス・バチルス)、すなわち、牧草菌といった呼び名でも有名な細菌の種族として位置づけられることになります。
そして、
こうした枯草菌や牧草菌と呼ばれる細菌は、その名の通り、牧草や稲わらといった様々な植物の枯草や、土壌中や空気中、さらには、人間や動物の胃腸の内部などにおいても生息している自然界において広く分布する一般的な常在菌の一種であり、
炭水化物やタンパク質を分解する酵素を生産することによって、自然界においては、そうした枯葉や枯草などの植物の遺体を再び土へと還していく働きを担っている細菌の種族であると考えられることになります。
そして、その一方で、
こうした枯草菌と呼ばれる細菌の種族は、増殖していく際に、芽胞(がほう)と呼ばれる特殊な構造体をした一種の休眠胞子を形成することによって、
高温や低温、乾燥や高濃度の塩分、さらには、強酸性の薬剤や高線量の放射線などといった過酷な環境においても生存し続けることができるというように、
多様な細菌の種族のなかでも、とりわけ耐久性と生命力に優れた細菌の種族としても位置づけられることになると考えられることになるのです。
納豆菌の具体的な特徴と納豆における独特の風味と粘りが醸し出されていく仕組み
そして、
こうした枯草菌と呼ばれる細菌の種族に分類される代表的な細菌の種類としては、納豆菌と呼ばれる細菌の種類の名が挙げられることになるのですが、
納豆菌(Bacillus subtilis var. natto、バチルス・サブティリス・ヴァル・ナットー)とは、その名の通り、納豆を製造する際に用いられる桿菌の一種として位置づけられることになります。
そして、
こうした納豆菌と呼ばれる細菌は、自然界においては、主に、稲わらの中などにおいて生息していて、ナットウキナーゼ(nattokinase)と呼ばれるタンパク質分解酵素を生産して、大豆を構成しているタンパク質を分解していくことによって、
納豆と呼ばれる発酵食品に独特の粘りと風味といったものを醸し出していくことになると考えられることになるのです。
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次回記事:ビフィズス菌と乳酸菌の関係と乳幼児期から大人へと成長するまでの腸内細菌叢を占める細菌の種類の割合の変化、桿菌に分類される代表的な細菌の種類とは?⑮
前回記事:ビブリオ・バルニフィカスの具体的な特徴と人食いバクテリアと呼ばれる理由とラテン語における名称の由来、桿菌に分類される代表的な細菌の種類とは?⑬
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