ミミズが脱皮しない理由とは?環形動物としてのミミズの生物学的な位置づけとムカデなどの節足動物や線形動物との違い
ヘビやムカデといった体が細長くニョロニョロとした感じの生物は、より大きな体へと成長していく際に、自らの体表面を覆っている外皮や殻を脱ぎ捨てるという脱皮と呼ばれる現象を通じて成長していくイメージがあると考えられることになりますが、
その一方で、
そうしたヘビやムカデといった生物と同様に、細長い体をニョロニョロとくねらせて移動する生物の代表格にあたるミミズの場合は、脱皮をせずに成長していく生物の側に分類されることになります。
それでは、こうしたミミズと呼ばれる生物が、ヘビやムカデあるいは線虫などといった似通った形状をした生物と異なって脱皮をしない生物として位置づけられている具体的な理由はどのような点に求められることになると考えられることになるのでしょうか?
脱皮動物に分類される八つの生物の部門のいずれにも属さない環形動物としてのミミズの生物学的な位置づけ
まず、
詳しくは前回書いた「脱皮動物に分類される代表的な生物の種類」の記事で詳しく考察したように、
哺乳類や爬虫類といった脊椎動物に分類されるような高等で複雑な体の構造を持った生物以外の比較的原始的な体の構造を持つ生物の種族の中で、脱皮によって成長する主要な生物は、その名の通り、脱皮生物と呼ばれる生物のグループに分類されることになり、
こうした脱皮動物と呼ばれる生物のグループには、大きく分けて、節足動物、有爪動物、緩歩動物、動吻動物、鰓曳動物、胴甲動物、線形動物、類線形動物と呼ばれる八つの生物の部門へと区分されることになります。
そして、それに対して、
ミミズ(蚯蚓)とは、そうした節足動物や有爪動物といった脱皮生物に分類される八つの生物の部門のいずれにも分類されず、それとは全く別の環形動物と呼ばれる生物の部門に分類されている生物であり、
こうした環形動物と呼ばれる生物の種族は、環状すなわち輪のような円い形をした体節が直列に並んでいく体節構造が積み重なっていくような形で体全体の構造が形づくられていく生物の種族として定義されることになるのです。
ヘビなどの爬虫類やムカデなどの節足動物そして回虫やアニサキスなどの線形動物との違い
ちなみに、
そうしたミミズと同じように細長いひも状の形状をした生物の種族としては、上記の脱皮生物に属する八つの生物の部門のうちの一つにも数え上げられている線形動物あるいは線虫と呼ばれる生物の種族も挙げられることになり、
こうした線形動物または線虫に分類される代表的な生物の種類としては、
回虫(かいちゅう)やアニサキス、蟯虫(ぎょうちゅう)や鞭虫(べんちゅう)といった人間の小腸に寄生する寄生虫の種族なども挙げられることになります。
そして、
こうした線形動物に分類される回虫やアニサキスといったミミズと非常によく似た細長いひも状の形状をした生物は、他の脱皮動物に分類される生物たちと同様に、宿主となる生物の体内において脱皮を繰り返すことによって成長していくことになるのですが、
環形動物に分類されるミミズは、外見上は互いに非常によく似通っているものの、こうした線形動物に分類される回虫やアニサキスとはまったく異なる生物学的な系統に属する生物の種族として位置づけられることになるのです。
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つまり、そういった意味では、一言でいうと、
ミミズが脱皮を行わない理由としては、
こうしたミミズと呼ばれる生物は、節足動物、有爪動物、緩歩動物、動吻動物、鰓曳動物、胴甲動物、線形動物、類線形動物という脱皮動物に属する八つの生物の部門のいずれにも分類されない環形動物に分類される生物であるがゆえに、
そうしたヘビなどの爬虫類や脱皮動物などが成長していく際に一般的に見られるような脱皮と呼ばれる現象が見られることはないということが具体的な理由として挙げられることになると考えられることになります。
そして、
そうしたヘビなどの爬虫類はもちろん、ムカデなどの節足動物や、回虫やアニサキスなどの線形動物といった脱皮動物に分類される生物ともまったく異なる生物学的な構造をもった環形動物に分類される生物であるミミズは、
自らの体表面を覆っている外皮や殻を脱ぎ捨てるという脱皮という行為によって成長することができない代わりに、
体を半分に切断されてもそうした切断面から元の体の形を速やかに復元していくことができるような非常に高い再生能力が与えられていて、
ミミズは、そうした自らの体に備わった高い再生能力を活かすことによって成長していくことになると考えられることになるのです。
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次回記事:回虫と蟯虫と鞭虫と鉤虫と糸状虫の大きさの比較、五つの線虫の種族における成虫の体長の長さの違い
前回記事:脱皮動物に分類される代表的な生物の種類とは?節足動物を筆頭とする八つの生物の部門に分類される多様な生物の種類
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