鉤虫(カギムシ)と鉤虫(コウチュウ)の違いとは?肉食性の有爪動物と寄生性の線形動物の具体的な特徴と両者の名前の由来
線虫に分類される寄生虫の種族についてのシリーズの第三回で取り上げた「鉤虫の名前の由来とズビニ鉤虫とアメリカ鉤虫の具体的な特徴」の記事のなかでは、
鉤虫(こうちゅう)あるいは英語でフックワーム(Hookworm)と呼ばれる寄生性の線虫の種族について取り上げましたが、
こうした日本語における漢字表記においては同じ「鉤虫」という表記が用いられている生物の種族としては、そのほかにも、鉤虫(かぎむし)と呼ばれる生物の種族の名も挙げられることになります。
そして、こうした鉤虫(カギムシ)と鉤虫(コウチュウ)と呼ばれる二つの生物の種族は、同じ漢字表記が用いられているとはいっても、生物学的には互いにまったく別々の系統に分類される生物の種族であると考えられることになるのですが、
それでは、こうした二つの生物の種族は、具体的にどのような点において、互いに異なった特徴をもった生物の種族であると考えられることになるのでしょうか?
有爪動物に分類される肉食動物である鉤虫(カギムシ)の具体的な特徴とカギムシという名前の由来
まず、
こうした同じ「鉤虫」という表記が用いられている二つの生物の種族のうちの前者である鉤虫(カギムシ)とは、
生物学的には、昆虫やクモなどの生物が分類される節足動物の類縁にあたる有爪動物(ゆうそうどうぶつ)に分類される生物の一種であり、
胴体部分の側面に並んでいる多数の歩脚の先端に鉤爪(かぎづめ)のような構造をもっているため、こうした鉤虫(カギムシ)と呼び名が付けられたと考えられることになります。
そして、
こうした有爪動物に分類される生物である鉤虫(カギムシ)は、成虫の大きさが体長5~15センチメートルくらいの円筒状の形状をした肉食性の生物として位置づけられていて、
上述した鉤虫(カギムシ)の歩脚の先端に存在する鋭い鉤爪のような構造は、そうした肉食動物であり、小型の昆虫などを捕食することによって生活している鉤虫(カギムシ)が、
獲物の捕獲や外敵からの防御の際に用いるために存在していると考えられることになります。
また、
こうした鉤虫(カギムシ)の外見上の構造は、体全体が一つにつながった一体的な構造をしているように見えるものの、
その内部構造においては、ムカデなどの節足動物と同様に、一つの頭節に対して多数の体節が連なっていくという体節構造が存在していて、
そうした体節構造を貫いていく形で、昆虫などの節足動物などを含むほかの一般的な動物などと同様に、心臓や血管や気管といった循環器系や呼吸器系の複雑な構造が張り巡らされていると考えられることになるのです。
線形動物に分類される寄生虫の一種である鉤虫(コウチュウ)の具体的な特徴とコウチュウという名前の由来
そして、それに対して、
後者の鉤虫(コウチュウ)と呼ばれる生物の種族は、
生物学的には、回虫や蟯虫や鞭虫といった寄生虫の種族が多く分類されている線形動物(せんけいどうぶつ)の一種として分類される生物であり、
頭の部分がそれより下の体の部分に対してわずかに曲がっていて、そうした頭部における屈曲部位が、鉤(かぎ)すなわちフックのような形状をしているように見えるため、こうした鉤虫(コウチュウ)と呼び名が付けられたと考えられることになります。
そして、
こうした線形動物に分類される生物である鉤虫(コウチュウ)は、成虫の大きさが体長1~3センチメートルくらいの細長いひも状の形状をした寄生性の生物として位置づけられていて、
こうした鉤虫(コウチュウ)と呼ばれる寄生虫の種族は、自らの頭部に存在する鋭い歯牙を用いて、宿主となる生物の腸内の粘膜に咬着して吸血を行うことによって寄生生活を営んでいると考えられることになります。
また、
こうした鉤虫(コウチュウ)の体の構造においては、前述したカギムシに見られるような体節と呼ばれるような区画構造は存在せず、全体が一つ続きとなった一体的な構造をしていて、
心臓や血管や気管といった循環器系や呼吸器系の構造も一切存在しないという非常に単純な構造をしているといった点においても、
前述した有爪動物に分類される生物である鉤虫(カギムシ)との間の明確な特徴の違いが存在すると考えられることになるのです。
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以上のように、
こうした鉤虫(カギムシ)と鉤虫(コウチュウ)と呼ばれる二つの生物の種族を互いに区別する具体的な特徴の違いとしては、
前者の鉤虫(カギムシ)は、昆虫やクモなどの生物が分類される節足動物の類縁にあたる有爪動物に分類される小型の昆虫などを捕食することによって生活する体長5~15センチメートルくらいの肉食動物であるのに対して、
後者の鉤虫(コウチュウ)は、回虫や蟯虫や鞭虫といった寄生虫の種族が多く分類されている線形動物に分類される人間などの動物の腸内に寄生することによって生活を営む体長1~3センチメートルくらいの寄生虫の一種であり、
そもそも、
前者の鉤虫(カギムシ)という名称の由来は、こうした有爪動物に分類される肉食性の生物が、胴体部分の側面に並んでいる多数の歩脚の先端に鉤爪のような構造をもっているためにこうした呼び名がついたと考えられるのに対して、
後者の鉤虫(コウチュウ)という名称の由来は、こうした線形動物に分類される寄生虫の体全体の構造が頭部の部分が屈曲した鉤やフックのような形状をしているためにこうした呼び名がついたと考えられるというように、
両者の名称の内に「鉤」という言葉が用いられるようになった大本の由来となる意味合い自体が互いに大きく異なっているといった点に、
こうした鉤虫(カギムシ)と鉤虫(コウチュウ)と呼ばれる二つの生物の種族における具体的な特徴の違いを見いだしていくことができると考えられることになるのです。
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次回記事:環形動物と線形動物の具体的な特徴の違いとは?「環形」と「線形」という名前の由来と両者に分類される代表的な生物の種類
前回記事:フィラリアとフィロウイルスの共通点とは?同じラテン語の語源をもつ寄生虫とウイルスという二つの異なる病原体の種族
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