広東住血線虫や東洋毛様線虫といったその他の代表的な線虫の具体的な特徴と症状、線虫に分類される代表的な寄生虫の種類⑤
このシリーズの初回から前回までの一連の記事では、線虫と呼ばれる生物の種族に分類されることになる回虫・蟯虫・鞭虫・鉤虫・糸状虫という全部で五つの代表的な寄生虫の種族について順番に取り上げてきましたが、
こうした五つの線虫の種族のうちのいずれの種族にも分類されないものの、人間に対する寄生虫感染症の原因となるそのほかの代表的な線虫の種類としては、
さらに、広東住血線虫と東洋毛様線虫、有棘顎口虫、糞線虫といった寄生性の線虫の名が挙げられることになると考えられることになります。
広東住血線虫と東洋毛様線虫の具体的な特徴と症状
このうち、はじめに挙げた
広東住血線虫(かんとんじゅうけつせんちゅう)とは、成虫の大きさが体長2~3センチメートルくらいに成長する東南アジアやオーストラリア、アフリカ、インド、北米などにも広く生息する線虫の一種であり、
中間宿主であるナメクジやカタツムリなどの軟体動物を非加熱の状態で食べた場合などに経口感染する場合があると考えられることになります。
そして、
人体の内部へと侵入した広東住血線虫の幼虫は、人間の体内では成虫へと成長していくことができないものの、
幼虫のままの状態で腸壁から血管内へと侵入し、血流を介して中枢神経へと移動していくことによって、寄生虫性の髄膜炎や脳炎といった有効な治療手段のない重篤な症状を引き起こしてしまうケースがあると考えられることになります。
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そして、その次に挙げた
東洋毛様線虫(とうようもうようせんちゅう)は、成虫の大きさが体長4~7センチメートルくらいに成長する日本や韓国や中国などに分布する線虫の一種であり、
感染者のの消化管に寄生していた線虫の卵が、排泄物などを介して経口感染する場合があると考えられ、
人体の内部へと侵入した広東住血線虫は、小腸の上部に寄生することによって、特に多数の個体が同時に寄生しているケースなどにおいては、腹痛や下痢といった消化器系の症状や、全身的な倦怠感などが引き起こされることになると考えられることになるのです。
有棘顎口虫と糞線虫の具体的な特徴と寄生虫感染症の具体的な症状
そして、その次に挙げた
有棘顎口虫(ゆうきょくがっこうちゅう)は、成虫の大きさが体長3~4センチメートルくらいに成長する線虫の一種であり、
中間宿主であるドジョウやナマズ、ライギョやソウギョといった淡水魚を非加熱の状態で食べた場合などに経口感染する場合があると考えられることになります。
そして、
人体の内部へと侵入した有棘顎口虫の幼虫は、前述した広東住血線虫などの場合と同様に、幼虫のままの状態で人間の体内を移動し続けていくことによって、
幼虫の移動に伴って皮下に形成される移動性の浮腫などの症状を引き起こされることになるほか、腸管出血や腸閉塞、さらには、心筋梗塞や脳障害、失明といった重篤な症状が引き起こされてしまうケースもあると考えられることになります。
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また、その次に挙げた
糞線虫(ふんせんちゅう)は、成虫の大きさでも体長2~3ミリメートル程度までにしか成長しない日本の九州南部なども含む熱帯地方に広く分布などに小型の線虫の一種であり、
土壌中に生息していた糞線虫の幼虫が、農作業などの際に皮膚に付着することによって経皮感染する場合があると考えられ、
皮膚から血管内へと侵入した糞線虫の幼虫は、血流を介して気管から食道を経て小腸の上部に寄生して成虫へと成長していくことによって、
多数の個体が寄生している場合などには、腹痛や下痢さらには粘血便といった消化器系を中心とする症状が引き起こされることになると考えられることになるのです。
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次回記事:植物に寄生する線虫と豚肺虫や牛肺虫や腎虫などの人間以外の動物に寄生する線虫、線虫に分類される代表的な寄生虫の種類⑥
前回記事:糸状虫あるいはフィラリアに分類される五つの線虫の種類の具体的な特徴と症状、線虫に分類される代表的な寄生虫の種類④
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