糸状虫あるいはフィラリアに分類される五つの線虫の種類の具体的な特徴と症状、線虫に分類される代表的な寄生虫の種類④
このシリーズの初回から前回までの一連の記事では、回虫・蟯虫・鞭虫・鉤虫といった線虫に分類される代表的な寄生虫の種族について取り上げてきましたが、
こうした線虫に分類される代表的な種族としては、そのほかにも、もう一つ、糸状虫と呼ばれる寄生虫の種族の名が挙げられることになります。
そして、
こうした糸状虫に分類される代表的な寄生虫の種類としては、犬糸状虫やバンクロフト糸状虫、マレー糸状虫、回旋糸状虫、ロア糸状虫といった全部で五種類の寄生性線虫の名が挙げられることになるのですが、
今回の記事では、
こうした糸状虫と呼ばれる線虫に分類される寄生虫の具体的な特徴と、上述した、四つの糸条虫によって引き起こされる寄生虫感染症の具体的な症状について詳しく考察していきたいと思います。
糸状虫の具体的な特徴と主要な感染経路と寄生部位
まず、
こうした糸状虫(しじょうちゅう)と呼ばれる寄生虫の種族は、英語ではフィラリア(filaria)と呼ばれる成虫の大きさが体長数センチメートルから数十センチメートルに成長することもある細長い糸状の形状をした線虫の種族であり、
主に、蚊やハエの一種であるアブやブユといった吸血性の昆虫が中間宿主となって媒介することによって、犬や人間あるいは馬や牛といった脊椎動物に寄生していくことになります。
そして、
こうした糸状虫あるいはフィラリアと呼ばれる寄生虫の種族は、皮膚から血管内へと侵入したのち、リンパ管やリンパ節、血管や皮下組織、さらには、心臓や眼球といった体内の様々な部位に寄生していくことによって、様々な症状を引き起こしていくことになると考えられることになるのです。
犬のフィラリアあるいはイヌ糸状虫の特徴と具体的な症状
そして、
こうした寄生虫感染症の原因となる最も代表的な糸状虫の種類としては、まずは、犬のフィラリアとしても有名なイヌ糸状虫の存在が挙げられることになり、
こうしたイヌ糸状虫と呼ばれる寄生虫は、成虫の大きさが体長12~30センチメートルくらいに成長する線虫の一種であり、
ヤブカ(藪蚊)やイエカ(家蚊)といった蚊を媒介として、主にイヌの心臓に寄生していくことになります。
そして、
こうしたイヌ糸状虫あるいは犬のフィラリアとして知られている寄生虫は、中間宿主である蚊の吸血行為を介して宿主となる動物の血管内へと侵入したのち、
皮下組織や筋膜などの部位においてある程度発育してから、静脈を経由して心臓の右心室の部位へともぐり込んで成虫へと成長していくことになり、
そうした成虫となったフィラリアが心臓を圧迫することなどにより血液循環を阻害していくことによって、発作性の咳や胸痛、呼吸困難といった症状が引き起こされることになるほか、
さらには、そうした血流障害に起因する内臓機能の低下によって、肝臓の肥大や腹水、肺動脈の塞栓や喀血(かっけつ)といった症状が引きこされていくケースもあると考えられることになるのです。
そして、
こうしたイヌ糸状虫と呼ばれる寄生虫は、犬に対してだけではなく、猫やキツネといった他の動物や、比較的まれなケースではあるものの人間に対して寄生してしまうケースもあり、
人間に対して寄生する場合に、犬の場合と同様に、フィラリアが心臓を中心とする部位へと寄生していくことによって、咳や胸痛、あるいは、血痰や呼吸困難といった症状が引き起こされるケースがあると考えられることになるのです。
マレー糸状虫とバンクロフト糸状虫の具体的な特徴と象皮病
そして、その次に挙げた
バンクロフト糸状虫とは、成虫の大きさが体長4~10センチメートルくらいに成長する線虫の一種であり、
主にアカイエカ(赤家蚊)など介して、人間に対して寄生虫感染症を引き起こしていくことになると考えられることになります。
そして、
皮膚から血管内へと侵入したバンクロフト糸状虫の幼虫は、人間のリンパ管やリンパ節を中心とする部位に寄生することよって、リンパ管の閉塞や破壊を引き起こしていくことになり、
それによって、
人体の末梢部分にあたる下肢などの部位においてリンパ液の滞留が生じることにより、そうした下肢を中心とする体の末端部分において皮膚や皮下組織が厚くなってゴワゴワとしたゾウの皮膚のようになる象皮病(ぞうひびょう)と呼ばれる症状が引き起こされることになると考えられることになります。
・・・
そして、それに対して、その次に挙げた
マレー糸状虫とは、成虫の大きさが体長2~5センチメートルくらいに成長する比較的小型の線虫の一種で、主にヌマカ(沼蚊)に属する蚊を媒介として、人間に対して寄生虫感染症を引き起こしていくことになると考えられ、
皮膚から血管内へと侵入したマレー糸状虫の幼虫は、前述したバンクロフト糸状虫と同様に、人体のリンパ管やリンパ節を中心とする部位に寄生することよって、
ひざから下の足の部分や、ひじから先の腕の部分などにおいて、皮膚や皮下組織が厚くなる象皮病と呼ばれる症状が引き起こされることになると考えられることになるのです。
、回旋糸状虫とロア糸状虫の具体的な特徴とオンコセルカ症
また、そのほかにも、寄生虫感染症の原因となる代表的な糸状虫の種類としては、回旋糸状虫やロア糸状虫といった寄生性線虫の名も挙げられることになり、
このうち回旋糸状虫(オンコセルカ)は、メスの成虫の大きさが体長30~50センチメートルくらいまでに成長する主にアフリカや中南米において生息している線虫の一種であり、
主に吸血性のハエの一種であるブユ(蚋)を介して、人間に対して寄生虫感染症を引き起こしていくことになると考えられることになります。
そして、
皮膚から血管内へと侵入した回旋糸状虫(オンコセルカ)は、皮下組織において長い体がとぐろを巻いていくような形で成長していくことによって、皮下腫瘤を形成していくことになるほか、
幼虫が血管を介して眼球へと到達することによって、視神経が圧迫されていくことによって最終的には失明してしまうケースもあるオンコセルカ症と呼ばれる症状が引き起こされることになると考えられることになります。
・・・
また、最後に挙げた
ロア糸状虫は、成虫の大きさが体長3~7センチメートルくらいに成長する主にアフリカの熱帯雨林に生息している線虫の一種で、主に吸血性のハエの一種であるアブ(虻)を介して、人間に対して寄生虫感染症を引き起こしていくことになり、
皮膚から血管内へと侵入したロア糸状虫の幼虫は、手足を中心とする人体の様々な部位に寄生することよって、血管性浮腫や腫脹を引き起こしていくことになるほか、
前述した回旋糸状虫の場合と同様に、眼球へと移動していくケースもあるのですが、ロア糸状虫は比較的小型の線虫でもあるため、こうした糸状虫の寄生によって失明といった目に対する重篤な障害が生じるケースは極めてまれであると考えられることになるのです。
・・・
次回記事:広東住血線虫や東洋毛様線虫といったその他の代表的な線虫の具体的な特徴と症状、線虫に分類される代表的な寄生虫の種類⑤
前回記事:鉤虫の名前の由来とズビニ鉤虫とアメリカ鉤虫の具体的な特徴、線虫に分類される代表的な寄生虫の種類③
「生物学」のカテゴリーへ
「医学」のカテゴリーへ