単節条虫と真正条虫(多節条虫)の具体的な特徴の違いとは?アンフィリナとギロコチレと呼ばれる二種類の単節条虫の種族
前回までの一連の記事で考察してきたように、人間に対して様々な寄生虫感染症を引き起こす原因ともなる多数の体節が連なった長いひも状の体を形成することが多い寄生虫の種族としては、
日本語においては、条虫あるいはサナダムシ(真田虫)とも呼ばれる寄生虫の種族の名が挙げられることになるのですが、
生物学的な分類においては、こうした条虫と呼ばれる寄生虫の種族は、さらに、単節条虫と真正条虫と呼ばれる二つの生物のグループへと区分されることになると考えられることになります。
単節条虫に分類されるアンフィリナとギロコチレと呼ばれる二種類の寄生虫の種族の具体的な特徴
まず、
こうした条虫と呼ばれる寄生虫の種族に分類される二つの生物のグループのうちの前者である単節条虫(たんせつじょうちゅう)とは、
条虫に分類される生物のなかでも、頭部と体が一体となった一つの体節のみによって体が構成されていて、体表面に存在する鉤(かぎ)のような構造によって宿主となる生物の体内に寄生する寄生虫の種族のことを意味する言葉であり、
こうした単節条虫と呼ばれる寄生虫のグループには、アンフィリナとギロコチレというラテン語の学名で知られるただ二つの寄生虫の種族のみが分類されることになります。
そして、
このうちの前者のアンフィリナ(Amphilina)は、日本語においては葉片条虫とも呼ばれる木の葉型あるいは帯状の形状をした微小な条虫の種族であり、
主に、チョウザメやウミガメ、一部の淡水魚などに寄生していて、体の後部に存在する漏斗状の器官によって宿主となる生物の腸内に固着していると考えられているのに対して、
後者のギロコチレ(Gyrocotyle)は、日本語においては円杯条虫とも呼ばれる楕円形の形状をした微小な条虫の種族であり、
主に、ギンザメなどの一部の魚介類の腸内に寄生していて、体の前部に存在する穿孔器と呼ばれる器官を用いることによって宿主となる生物の体内に潜り込んでいると考えられることになります。
このように、
こうした単節条虫に分類される寄生虫の種族は、アンフィリナ(葉片条虫)とギロコチレ(円杯条虫)のどちらの場合においても、
両方とも、基本的には、チョウザメやギンザメなどの魚介類に対してのみ寄生することができる条虫の種族であると考えられ、
こうした単節条虫と呼ばれる条虫の種族が人間に対して寄生虫感染症の症状を引き起こすことはほとんどないと考えられることになるのです。
真正条虫の具体的な特徴と、単節条虫と真正条虫の両者がどちらも同じ条虫と呼ばれる一つの寄生虫のグループに分類される理由
そして、それに対して、
後者の真正条虫(しんせいじょうちゅう)には、別名では多節条虫(たせつじょうちゅう)とも呼ばれているように、一つの頭節に対して片節と呼ばれる多数の体節が連なっていく形で体が構成されていて、
頭節に存在する鉤(かぎ)や吸盤といった構造によって宿主となる生物の体内に寄生する寄生虫の種族が分類されることになり、
これまでの記事で取り上げてきた
有鉤条虫、無鉤条虫、広節裂頭条虫、マンソン裂頭条虫、日本海裂頭条虫、エキノコックス属に分類される単包条虫と多包条虫、さらには、瓜実条虫、小型条虫(ナナ条虫)、縮小条虫、有線条虫、芽殖孤虫といった
人間に対して寄生虫感染症を引き起こす代表的な条虫の種族は、すべて単節条虫ではなく、こうした真正条虫あるいは多節条虫と呼ばれる寄生虫の種族に分類されることになると考えられることになります。
つまり、そういった意味では、
冒頭で述べた多数の体節が連なった長いひも状の体を形成するという条虫と呼ばれる生物の具体的な特徴は、正確には、条虫のなかでも、こうした真正条虫と呼ばれる条虫の種族についてのみあてはまる特徴であると考えられることになります。
その一方で、
前述した単節条虫と呼ばれる生物についても、消化器官を持たずに、体表面から栄養分を直接吸収することによって自らの生命を維持する雌雄同体の寄生虫の種族であるといったそのほかの特徴については、こうした多節条虫と呼ばれる寄生虫の種族との共通点も比較的多く見られると考えられることになるため、
こうした単節条虫と真正条虫と呼ばれる二つの生物の種族は、どちらも同じ条虫と呼ばれる一つの寄生虫のグループに分類されることになると考えられることになるのです。
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以上のように、
単節条虫と真正条虫(多節条虫)と呼ばれる二つの寄生虫の種族の具体的な特徴の違いとしては、
前者の単節条虫は、頭部と体が一体となった一つの体節のみによって体が構成されていて、チョウザメやギンザメといった魚介類に対してのみ寄生することができる寄生虫の種族であるのに対して、
後者の真正条虫(多節条虫)は、一つの頭節に連なる多数の体節によって体が構成されていて、人間に対しても寄生することができる寄生虫の種類が数多く分類されているといった点が、
両者の間に存在する具体的な特徴の相違点として挙げられることになると考えられることになります。
そして、その一方で、
こうした単節条虫と真正条虫と呼ばれる二つの生物の種族の両者は、どちらも、口や肛門といった消化管を一切持たずに、宿主となる生物の体内において栄養物を体表面から直接吸収することによって自らの生命を維持する雌雄同体の寄生虫の種族に分類されるといった点においては、
同じ条虫と呼ばれる生物のグループに分類される互いに多くの共通点をもった寄生虫の種族としても位置づけられることになると考えられることになるのです。
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次回記事:有鉤条虫と無鉤条虫の違いとは?カギサナダとカギナシサナダの具体的な特徴と英語とラテン語における別名
前回記事:サナダムシの英語とギリシア語とラテン語における呼び名とは?美の女神ヴィーナスの帯ひもとテープワーム
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