有鉤条虫と無鉤条虫の違いとは?カギサナダとカギナシサナダの具体的な特徴と英語とラテン語における別名
「条虫による寄生虫感染症の原因となる代表的な12の条虫の種類」のシリーズのなかで考察してきたように、
人間に対して寄生虫感染症を引き起こす原因となる代表的な条虫の種類としては、まずは、有鉤条虫、無鉤条虫、広節裂頭条虫といった寄生虫の種族の名が挙げられることになるのですが、
こうした代表的な条虫の種類のなかでも、
有鉤条虫(ゆうこうじょうちゅう)と無鉤条虫(むこうじょうちゅう)という対称的な名称で呼ばれている二つの寄生虫の種類の間には、以下のような具体的な特徴の違いを見いだしていくことができると考えられることになります。
有鉤条虫の具体的な特徴と英語における「豚肉サナダムシ」という別名
まず、
前者の有鉤条虫(Taenia solium、タエニア・ソリウム)と呼ばれる成虫になると体長2~3メートルほどの大きさにまで成長する条虫の種族は、日本語における別名ではカギサナダとも呼ばれているその名の通り、
頭節の部分に、鉤(かぎ)、すなわち、物をひっかけるのに使うフックのような構造を持っていて、
そうした頭節の通常生物ならば口にあたるような先端の位置に円形に並んでいる 26~28個にもおよぶ鉤のような構造と、その外側を囲むように並んでいる四つの吸盤を使って、宿主となる生物の小腸の内部に取り付くことによって寄生生活を営んでいると考えられることになります。
そして、
こうした有鉤条虫と呼ばれる条虫の種族は、英語における別名では、pork tapeworm、すなわち、豚肉サナダムシとも呼ばれているように、
有鉤条虫は、主に、この条虫の中間宿主にあたるブタを介して、すなわち、豚肉を生の状態で食べることなどによって人間に対して寄生虫感染症を引き起こすことになると考えられることになるのです。
無鉤条虫の具体的な特徴と「太ったひも状の虫」のことを意味するラテン語に基づく学名
そして、それに対して、
後者の無鉤条虫(Taenia saginata、タエニア・サギナタ)と呼ばれる条虫の種族は、日本語における別名ではカギナシサナダとも呼ばれている通り、
前述した有鉤条虫の頭節において見られるような鉤状の構造は一切存在せず、頭節の先端部分に円形状に並んだ有鉤条虫の場合よりも一回り大きめの四つの吸盤のみを用いて宿主となる生物の小腸の内部に取り付くことによって寄生生活を営んでいると考えられることになります。
そして、
こうした無鉤条虫と呼ばれる条虫の種族のTaenia saginata(タエニア・サギナタ)という生物学における正式な学名のうちに含まれているsaginata(サギナタ)という単語は、
ラテン語において「太った」「肥育した」といった意味を表す単語であるように、
こうした無鉤条虫と呼ばれる条虫の種族は、成虫の全長が最大で3~10メートルにまで達することもある条虫のなかでも最大の部類に属する条虫の種族として位置づけられることになるのです。
また、
前述した有鉤条虫が英語における別名では豚肉サナダムシと呼ばれていたのと同様に、無鉤条虫の方は、英語における別名では、beef tapeworm、すなわち、牛肉サナダムシとも呼ばれていて、
無鉤条虫は、主に、この条虫の中間宿主にあたるウシを介して、すなわち、牛肉を生の状態で食べることなどによって人間に対して寄生虫感染症を引き起こすことになると考えられることになるのです。
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以上のように、
こうした有鉤条虫と無鉤条虫と呼ばれる二つの寄生虫の種族の具体的な特徴の違いについて、一言でまとめると、
前者の有鉤条虫あるいはカギサナダは、成虫の大きさが2~3メートルほどの大きさにまで成長する頭節に鉤状の構造を持った条虫の種族であり、主に豚肉の生食などを介して人間に寄生するのに対して、
後者の無鉤条虫あるいはカギナシサナダは、成虫の大きさが有鉤条虫よりもさらに大きい3~10メートルほどの大きさにまで成長する最大の部類に属する条虫の種族であり、
有鉤条虫の場合において見られるような鉤状の構造は一切存在せず、頭節に存在する四つの吸盤のみを用いて宿主となる生物の腸内に寄生する、主に牛肉の生食などを介して人間に寄生する寄生虫の種族であるといった点に、
両者の間に存在する具体的な特徴の違いを見いだしていくことができると考えられることになるのです。
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次回記事:エキノコックスにおける単包条虫と多包条虫の具体的な特徴の違いとは?ラテン語の学名の由来と単包と多包という名称の由来
前回記事:単節条虫と真正条虫(多節条虫)の具体的な特徴の違いとは?アンフィリナとギロコチレと呼ばれる二種類の単節条虫の種族
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