条虫による寄生虫感染症の原因となる代表的な12の条虫の種類とは?①有鉤条虫と無鉤条虫の具体的な特徴と主要な症状
前回の記事で書いたように、寄生虫感染症の原因となる代表的な寄生虫の種族としては、これまでに取り上げてきた原虫や吸虫といった寄生虫の種族のほかに、
条虫(じょうちゅう)と呼ばれる多数の体節が連なった長いひも状の体を形成する多細胞性の寄生虫の種族の存在も挙げられることになるのですが、
そうした条虫によって引き起こされることになる寄生虫感染症の原因となる代表的な条虫の種類としては、
有鉤条虫、無鉤条虫、広節裂頭条虫、マンソン裂頭条虫、日本海裂頭条虫、エキノコックス属に分類される単包条虫と多包条虫、瓜実条虫、小型条虫(ナナ条虫)、縮小条虫、有線条虫、芽殖孤虫
といった全部で12種類の条虫の種類が挙げられることになると考えられることになります。
有鉤条虫
まず、はじめに挙げた有鉤条虫(ゆうこうじょうちゅう)とは、別名ではカギサナダとも呼ばれることのある成虫になると体長2~3メートルほどの大きさにまで成長する条虫の種族であり、
頭節の部分に、宿主となる動物の体内に取り付くための四個の吸盤と共に、26~28個の鉤(フック)のような構造を持つため、こうした有鉤条虫あるいはカギサナダといった名称が付けられることになったと考えられることになります。
そして、
こうした有鉤条虫と呼ばれる寄生虫は、主に、中間宿主となる豚の体内において嚢虫 (のうちゅう)と呼ばれる卵型の形状をした幼虫の状態で生息していて、
そうした有鉤条虫の嚢虫が寄生している豚肉を生の状態で食べることなどによって、人体に対する感染を引き起こしてしまうことになると考えられることになります。
また、
こうした有鉤条虫の寄生によって引き起こされる有鉤条虫症においては、通常の場合、体内へと侵入した有鉤条虫が人間の小腸に寄生したうえで、3か月ほどの時間をかけて成虫へと成長していくことによって、
腹痛や下痢、体重減少といった消化器系を中心とする症状が引き起こされていくことになると考えられることになるのですが、
むしろ、こうした有鉤条虫症においては、
人間の体内において孵化した条虫の幼虫にあたる嚢虫が、腸内で成虫へと成長していく前の段階で、腸壁を乗り越えて血管内へと侵入していってしまう場合に、より重篤な症状を引き起こしてしまうことになると考えられ、
こうした有鉤条虫の幼虫にあたる有鉤嚢虫によって引き起こされる有鉤嚢虫症においては、血管を介して全身へと運ばれていった嚢虫が、皮膚や筋肉、さらには、脊髄や脳や眼球といった体内の様々な器官に寄生していくことによって、
筋肉や皮下組織において結節や腫瘤などを形成していくことになるほか、痙攣(けいれん)や癲癇(てんかん)といった症状を引き起こす神経嚢虫症を引き起こしてしまうケースや、網膜炎などを引き起こすことによって失明へと至ってしまうケースなどもあると考えられることになるのです。
無鉤条虫
そして、もう一方の無鉤条虫(むこうじょうちゅう)と呼ばれる条虫の種族は、別名ではカギナシサナダとも呼ばれることのある条虫の種族であり、
こうした無鉤条虫の頭節の部分には、大きな四個の吸盤があるだけで、有鉤条虫のような鉤状の器官は存在しないものの、
成虫の大きさは体長3~10メートルといった有鉤条虫を大きく超える大きさにまで成長していくことになると考えられることになります。
そして、
こうした無鉤条虫と呼ばれる寄生虫は、主に、中間宿主となる牛の体内において牛嚢虫 (ぎゅうのうちゅう)とも呼ばれる幼虫の状態で寄生していて、
そうした無鉤条虫の嚢虫が寄生している牛肉を加熱が不十分な状態で食べることなどによって、人体に対する感染を引き起こしてしまうことになると考えられることになります。
ちなみに、
こうした無鉤条虫と呼ばれる寄生虫は、56度くらいの温度ですぐに死滅してしまうことになるので、通常の焼肉やステーキなどの牛肉料理において、生焼きに近いレアの状態で牛肉を食べたとしても、こうした無鉤条虫による寄生虫感染のリスクはほとんどないと考えられることになるのですが、
ユッケ料理などのように牛肉をほぼ生肉の状態でそのまま食べてしまった場合などには、感染してしまうケースもあると考えられることになります。
そして、
人間の体内へと侵入した無鉤条虫は、人間の小腸に寄生したうえで、通常の場合、宿主となる人間との間に片利的な共生関係を営むことによって、ほとんど無症状のまま成長していく場合が多いと考えられることになるのですが、
腸内において無鉤条虫の体があまりに大きく成長していってしまう場合などには、比較的軽度の下痢や便秘、あるいは、体重減少や栄養障害といった消化器系を中心とする症状が現れるケースがあるほか、
寄生虫の体から脱落した片節が腸管から排出される際などに、腹部不快感などの症状が現れるケースもあると考えられることになるのです。
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次回記事:条虫による寄生虫感染症の原因となる代表的な12の条虫の種類とは?②広節裂頭条虫、マンソン裂頭条虫、日本海裂頭条虫
前回記事:条虫とは何か?口も肛門も存在しない長いひも状の形をした奇妙な生物のことを意味する条虫という言葉の意味と実際の体の長さ
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