条虫とは何か?口も肛門も存在しない長いひも状の形をした奇妙な生物のことを意味する条虫という言葉の意味と実際の体の長さ
これまでの一連の記事のなかでは、原虫と呼ばれる単細胞性の原始的な構造をした寄生虫の種族や、
吸虫(吸虫とは何か?)と呼ばれる多細胞性の扁形動物に分類される口の部分と腹部に吸盤をもった寄生虫の種族などについて取り上げてきましたが、
こうした扁形動物に分類される寄生虫の種族としては、そのほかにも、条虫と呼ばれる寄生虫の種族の名が挙げられることになります。
口も肛門も存在しない長いひも状の形をした奇妙な生物
条虫(じょうちゅう)とは、多細胞性の動物の中でも、平たい形をした非常に単純な構造をした生物の種族のことを意味する扁形動物に分類される寄生虫の種族のなかでも、
多数の体節が連なって長いひも状の体を形成する、主に、人間や動物などの脊椎動物の腸に寄生する寄生虫の種族のことを意味する言葉であると考えられることになります。
そして、
こうした条虫と呼ばれる生物の具体的な特徴としては、
自らの生存を支えるための栄養分のすべてを宿主となる動物の体内を通過する栄養素を体表面から直接吸収することによって取り入れているため、
一般的な動物において存在するような口や肛門といった消化管にあたるような器官がすべて退化してしまっていて一切存在しない一方で、
宿主となる生物の体内において自分の身体を固定するための吸盤などの組織や、雌雄同体の生殖器官などだけが発達した非常に奇妙な構造をしているといった点が挙げられることになります。
また、
宿主となる動物の消化管の内部において、自分の身体を胃液や腸液といった消化液などによる消化作用から保護するために、
こうした条虫と呼ばれる生物の体表面は、すべて、クチクラ(Cuticula)と呼ばれるタンパク質や多糖類の一種であるキチン質などを主成分とする丈夫な膜構造によって覆われているのですが、
こうしたクチクラと呼ばれる膜構造は、英語ではキューティクル(Cuticle)とも呼ばれることになり、それは人間の髪の毛の表面を保護している層構造と同様の性質をもった構造であると考えられることになるのです。
条虫という言葉自体の意味と分類される寄生虫の実際の体の長さ
そして、そもそも、
条虫という言葉に含まれている「条」(じょう)という漢字自体が、木や枝などにおいて見られるの「長い筋」のことを意味する漢字であるように、
こうした条虫と呼ばれる言葉は、一言でいうと、長いひも状の形状をした人間や動物などの脊椎動物の腸に寄生する寄生虫の種族のことを意味する言葉として定義することができると考えられることになるのですが、
こうした条虫に含まれる具体的な寄生虫の種類としては、
体長2~3メートルに成長する有鉤条虫(ゆうこうじょうちゅう)や、
体長3~10メートルに達することもある無鉤条虫(むこうじょうちゅう)、
体長2~10メートルにおよぶ広節裂頭条虫(こうせつれっとうじょうちゅう)
などが挙げられることになるほか、
クジラの腸に寄生する条虫の種族として知られるテトラゴノポラス(Tetragonoporus)と呼ばれる世界最大の条虫の場合には、体長が30メートルを超えるケースも報告されています。
しかし、その一方で、
こうした条虫と呼ばれる寄生虫の種族のなかには、
瓜実条虫(うりざねじょうちゅう)などのように、体長15~50センチメートルくらいの種族や、エキノコックスのように体長1~7ミリメートルにしかならない小型の条虫の種族も存在するというように、
実際には、
こうした条虫と呼ばれる寄生虫の種族のうちには、その体の長さが、数ミリメートルくらいの短いものから10メートル以上に達する長大ものまで、多様な長さをした条虫の種類が存在すると考えられることになるのです。
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次回記事:条虫による寄生虫感染症の原因となる代表的な12の条虫の種類とは?①有鉤条虫と無鉤条虫の具体的な特徴と主要な症状
前回記事:吸虫による寄生虫感染症の原因となる代表的な12種類の吸虫の種類とは?④ウェステルマンなどの肺吸虫とその他の腸管吸虫
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